バス業界の動向や課題、今後の見通しは?

運転手が乗車したバスとバス停

バス業界の業界地図や現状と動向、課題や今後の見通しなどをご紹介します。バス業界の構造から現状や課題、将来の見通しなど全体を一通り学べるように解説しています。

2020-2021年 バス業界の現状や動向

複数のデータとパソコンに入力する人

バス業界の最近の現状や動向について解説していきます。

業界地図:大手鉄道がバス事業展開 乗合バスの市場が厚い

バス業界は、民営と公営の事業者があり、9割以上を民営の事業者が占めます。また、国内のバス事業者数は乗合バス(路線バス)が2,321社、貸切バスが4,001社に及びます。一方、市場の規模では乗合バスが圧倒的となっています。

バス業界の業界地図

上の図はバス業界の業界地図です。バス事業者を区分けすると「鉄道系」、「タクシー系」、「バス専業」、「観光バス」、「リムジンバス・高速バス」に分けられます。バス会社を運営する企業は、鉄道やタクシーといった陸運業界が多く参入している領域でもあります。そのため、大手バス会社は「鉄道会社」の子会社であることが多い傾向にあります。

動向1. 新型コロナが逆風、利用者の大幅減少

バス業界の動向を分析します。下のグラフは、バスの輸送人員の推移を示したものです。国土交通省の自動車輸送統計調査(2022年9月公開)によると、2021年度のバスの輸送人員は、前年比6.3%増の33億800万人でした。

バスの輸送人員の推移

バスの輸送人員の推移(出所:国土交通省、グラフは業界動向サーチが作成)

バスの輸送人員は増加傾向にありましたが、2019年度から減少に転じています。2020年度は前年比28.1%減と大幅に落ち込みましたが、2021年度の輸送人員は増加に転じました。一方、行動制限の影響もありコロナ前である2019年度比では23.5%の減少です。そして「乗合バス」は9億5,000万人の減少、「貸切バス」は1億1,700万人が減少したままです。こうした状況から、2021年もバス業界は厳しい事業環境であったことが分かります。

2020年は新型コロナの感染拡大の影響を大きく受けた年でした。外出自粛の要請により、旅行や観光、買物を控える人が増えたこと、学校の休校やテレワークの普及、さらに旺盛だった訪日外国人の需要も消滅しました。人々の移動が制限されたことで、バスの利用者が大幅に減少しています。

一方で「GoToトラベルキャンペーン」期間中は、回復の兆しが見られました。しかしながら、感染の再拡大によって同キャンペーンは中止となり、一時的な需要で終わることとなりました。

2021年に入り、移動制限の緩和によって利用客数が再び回復傾向にあります。また「東京オリンピック・パラリンピック」の開催も、乗客数が増加する要因となりました。しかしながら、定期券の利用や観光路線の本格回復には遅れがみられるなど、コロナ前の水準までには戻っていないのが現状です。

動向2. 『連節バス』の導入や『貨客混載』の運行拡大

近年のバス業界の注目すべき動向は、収益源の確保を目的とした新たなサービスを展開している点です。

バス業界では近年『連節バス』が注目されています。『連節バス』とは、車体を2両以上つなげたバスで、従来の約2倍の人員を乗せられるなど大量輸送を可能にしています。バスを連節することにより輸送力の強化や、車内の混雑緩和、ラッシュ時の渋滞緩和などの効果が期待できます。過疎地域でのバス路線維持などの作用もあるため、近年注目が集まっています。

連節バスに加えて、近年では乗客と荷物を同時に運ぶ『貨客混載』も行われています。以前から一部のバスでは、荷物スペースなどの空きを有効活用した取り組みは行われていましたが、コロナをきっかけに『貨客混載』サービスを本格的に展開する企業が増えています

東急バスでは沿線で製造された食品を輸送するための実証実験を行うなど、新たな収益源の確保に向けた動きが見られています。

バス業界の課題と問題点

グラフやレポートを指でさす人々

近年、バス業界が抱える課題や問題点の特に重要なポイントをピックアップします。

課題1. バス運転者の不足

バス業界の課題の一つに、バス運転者の不足が挙げられます。業界では人員確保に向け、大型2種免許取得の支援や自社での基礎訓練、女性運転手や未経験者を採用するなど対応をしています。一方で、近年では運転手が高齢化しているため、若者のなり手が少ない状況にあります。バス運転者の不足はバス稼働率の低下や路線の縮小、サービスの低下につながってしまいます。

課題2. 人口減少に伴う乗客減少

バス業界では、人口減少による乗客の減少も課題の一つです。国内では少子高齢化によって人口は減少傾向で、人口の多い都市部でも通勤や通学での利用者が減ることが懸念されています。さらに、コロナ禍では自家用車や自転車の利用が増えたことでバスの利用が減り、より厳しい状況です。乗客数が減少することで、業績の悪化や路線の廃止になる可能性があります。

バス業界の今後の見通しについて

タブレットに入力している人とデータ分析

バス業界は今後、どうなる?

今後バス業界は、しばらくは新型コロナの感染状況に左右される可能性が高いと言えます。

新型コロナウイルスの感染拡大では、買物や出張、観光や旅行、イベントを控える人が増加したため、路線バスや貸切バス、高速バスのぞれぞれの利用客が大幅に減少しました。再び感染拡大が起こった場合には、移動を制限する人々が増え、バス利用をする人は減るでしょう。

一方、感染状況が落ち付けば、観光や旅行、イベントなどの市場においては、回復が早いことが予想されています。人の移動の増加に伴い、バス利用客の増加も見込めるでしょう。

今後のバス業界では、IT技術の活用がさらに進むことが予想されます。ビックデータの活用を進めるほか、都市部の一部バス事業者では、Google mapで混雑や遅延情報などをリアルタイムでの確認を可能にしています。利用者の利便性向上によるあらたな需要を見込んでおり、今後もデジタルを活用した新たなサービスが続々と登場するでしょう。

現在、MasSや自動運転の取り組みを行っています。なかでも、バスの自動運転では一部地域で実証実験が行われており、2025年の大阪万博では実用化を目指しています。自動運転は将来的に不採算路線の維持や運転手不足の解消を期待されており、今後も実用化に向けた動きが活発化することが予想されます。