エレベーター業界の動向や課題、今後の見通しは?

エレベーターを乗り降りする男性たち

エレベーター業界の現状と動向、課題や今後の見通しなどをご紹介します。エレベーター業界の構造から現状や課題、将来の見通しなど全体を一通り学べるように解説しています。

エレベーター業界の現状や動向

虫眼鏡で見るいくつかのデータ

エレベーター業界の現状や動向について解説していきます。

動向1. 2020年は生産台数・生産金額ともに大幅減

エレベーター業界の動向を分析します。下のグラフは、エレベーターの生産数量と生産金額の推移を示したものです。経済産業省の機械統計編(2021年5月28日公表)によると、2020年のエレベーターの生産数量は前年比8.3%減の29,046式、生産金額は同12.6%減の2,003億円でした。

エレベーターの生産数量と生産金額の推移

エレベーターの生産数量と生産金額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見ますと、生産数量は2014年まで増加し2019年までは横ばい、2020年は減少に転じています。一方、生産金額は2012年に上昇して以降18年まで横ばいで推移し、19年に増加、2020年は減少に転じました。

とくに2020年は生産数量、金額ともに、10年間で最も大きい減少幅を記録しました。こうした状況から、2020年のエレベーター業界は厳しい状況であったことが分かります。

2020年は新型コロナの感染拡大の影響を受け、マンションやホテル、ビルなどを中心に新設工事の受注が減少しました。一方、エレベーターの保守・点検や設備更新などの業務においては、契約台数が堅調に推移しました。

動向2. 非接触で目的階へ、コロナでタッチレスの適用拡大

新型コロナの感染拡大をきっかけに、利用者の衛生意識が高まっています。エレベーターは密になりやすく、さらにパネルのボタンは多くの人が触れるため、業界ではボタンに触れずに目的階へ行けるエレベーターの開発が進んでいます。

大手エレベーターでは、直接ボタンを押さずに呼び出しや目的階の指定が可能なエレベーターの導入を始めています。ボタンに手をかざすだけでセンサーが反応するため、タッチレスでの操作が可能です。その他、呼び出しから目的階を指定できる専用アプリも開発されました。

タッチレス操作ボタンは、オフィスやマンション、商業施設のみならず、病院や福祉施設など適用範囲を拡大しています。新設エレベーターへの導入を拡大しているほか、今後は既設のエレベーターへの導入も目指しており、需要の拡大を見込んでいます。

エレベーター業界の課題と問題点

グラフやレポートを分析する人たち

エレベーター業界にも、当然、課題や問題点があります。ここでは近年、エレベーター業界が抱える課題や問題点の中から特に重要なポイントをピックアップします。

課題1. 保守・点検事業の競争激化

国内ではコストの削減によって、エレベーターの保守・点検の費用を抑える傾向が強まりつつあります。エレベーター事業は製造や新設のみならず、保守・点検、部分的なリニューアルなども担うストックビジネスでもあります。一方、近年は保守・点検などのサービス価格が熾烈化しており、大手メーカー系と独立系での間では、保守事業の受注獲得の競争が激しくなっています。

課題2. 人材の確保・育成が急務

エレベーター業界では、人材の確保と育成も課題の一つです。エレベーターの設置や保守・点検作業には技術が必要ですが、技術力を身に着けるには時間がかかります。また、業界ではエレベーターの設備更新が急増する『2020年問題』の時期も迎えています。急増するニーズに対応するため、人材の育成を急いでいます。

エレベーター業界の今後の見通しについて

いくつかのデーターと4人の男女

エレベーター業界は今後、どうなる?

2020年のエレベーター業界の市場規模は縮小しましたが、今後しばらくは堅調に推移する可能が高いと言えます。

国内では、1990年代に設置したエレベーターの更新時期を一斉に迎える『2020年問題』をはじめ、メーカー各社が相次いで旧部品の供給終了を発表しています。こうした状況からエレベーターの新設や一部リニューアルの需要が高まるでしょう。

特にエレベーターの保守事業は、今後もニーズが増えると予想されます。実際、三菱電機ではエレベータ事業を子会社に集約し保守メニューの拡充を図っています。さらに、保守事業が主力のジャパンエレベーターはこの2年間で10数社を買収するなど、市場拡大を見越した動きが見られています。

また、エレベーターのIT化も進むとみられます。Report Oceanによると、スマートエレベーターの市場規模は2019年には186億ドルでしたが、2030年には482億ドルに達すると予測しています。『スマートエレベーター』とは、セキュリティーの強化や待機時間の短縮などを、IoT技術の活用で自動化したエレベーターです。

各社は独自開発のIoTプラットフォームの活用で、持ち時間の短縮や混雑を緩和し、セキュリティ面ではエレベーターとビル内設備を連携させるなどIT化を進めています。こうした技術は文化が異なる海外市場でも進めていることから、今後、より新たな製品やサービスが登場することが予想されます。