イベント業界の動向や課題、今後の見通しは?

屋外で飲食をする男女たち

イベント業界の業界地図や現状と動向、課題や今後の見通しなどをご紹介します。イベント業界の構造から現状や課題、将来の見通しなど一通り学べるように解説しています。

イベント業界の業界地図と現状や動向

いくつかのデータやグラフのイラスト

イベント業界の業界地図と最近の現状や動向について解説していきます。

業界地図:細分化された業界、多種多様な企業が参入

イベント業界は、主催者である国や自治体、団体や企業などが実施するイベントの企画や進行、警備や清掃などを請け負います。イベントの種類は幅広く、スポーツや音楽フェア、伝統的催事、展示会やセミナーなどがあり、ビジネス系のイベントでは商談や販促、PRなどを目的としています。そのため、元受けに広告代理店やその子会社が多いのが特徴です。

イベント業界の業界地図

上の図はイベント業界の業界地図です。イベント業界は主に「元受け」、「イベントプロデュース」、「企画・進行」、「演出・制作」、「イベント運営」、「内装・会場設営」、「会場制作」、「警備・誘導・整理」の市場に分けられます。各分野で細分化されており、多種多様な企業が参入しています。

動向1. コロナ禍で需要は大幅減、延期や中止が相次ぐ

巨大なスクリーンがある会場

2020-2021年のイベント業界の動向を分析します。日本イベント産業振興協会の公表によると、2020年のイベント市場規模は前年比50.4%減の8兆6,649億円でした。2020年は前年から約半減と大幅な落ち込みを見せており、調査開始の2012年以降、初の減少でした。

2020年は新型コロナの感染拡大の影響により、多くのイベントが延期または中止となりました。2020年は東京五輪をはじめ、ビッグイベントが多く予定されており、期待値の高い一年でしたが、その多くが延期または中止に追い込まれてしまいました。

2021年7月には東京五輪は開催されましたが、大幅に規模を縮小したことで期待されていたオリンピック需要は大きく低迷しました。東京以外で行われる各開催地域においても、オリンピックに伴うイベントを予定していましたが、中止や規模をすることとなりました。

一方、2021年末ごろになると感染対策や人数制限を行いつつ、有観客でのイベントの開催が見られるようになりました。コロナによる最悪期は脱しつつあり、スポーツやお祭り、音楽フェスなどが徐々に行われています。

また、2022年7月に公表した日本イベント産業振興協会によると、2021年のイベント市場規模は、前年比29.4%の11兆2,165億円1と前年を大幅に上回りました。一方、コロナ前である2019年の水準と比較すると約6割となっており、依然として低い水準です。

動向2. オンラインイベントの開催が増加傾向

最近では、オンラインイベントの開催が増加傾向にあります。2020年初の「緊急事態宣言」の発令をきっかけに、リアルなイベントからオンラインへシフトするケースが増えています

新型コロナの感染拡大により、人が多く集まる会場や施設へと出向く人々は減少しましたが、その一方で、オンラインイベントを開催する企業、またそれを活用する消費者が増えています。

オンラインイベントでは、今まで遠隔地で参加できなかった人々が気軽に参加できることや、交通費や宿泊費などが節約できるなど、メリットを感じた人も多く、コロナ終息後もこうしたイベントの開催を希望する声が上がっています。

イベント業界の課題と問題点

グラフやレポートを分析する男女

ここではイベント業界が抱える課題や問題点を探っていきます。なかでも、直近で特に重要なポイントをピックアップしました。

課題1. チケットの不正転売

イベント業界では、チケットの不正転売が課題に挙げられます。以前のチケットは不正転売がしやすい「紙」が主流で、転売目的による買い占めが横行するなど、様々な問題がありました。

近年では対策として電子チケットが普及しており、2019年には「チケット不正転転売禁止法」も施行されています。こうしたことから不正転売は減少傾向にありますが、スマートフォンを転売相手に貸すなど、いまだ転売はなくなっていないのが現状です。

課題2. オンライン化に伴うデメリット

新型コロナを機にイベントのオンライン化が進みましたが、いくつかデメリットも挙げられています。一つは、商品や展示物に直接触れられないこと、加えて参加者とのコミュニケーションの取りずさや、配信中に離脱者が出やすいなどがあります。さらに、映像や音声の遅延といった、通信環境や機材トラブルなども挙げられます。

イベント業界の今後の見通しについて

虫眼鏡とデータを見る人たち

イベント業界は今後、どうなる?

今後のイベント業界は、しばらくは新型コロナウイルスの感染状況に左右される可能性が高いと言えます。

感染拡大によって人々の生活様式は変わり、とくに人が集まる場所では行動が制限されることとなりました。今後、ふたたび感染拡大が起こった場合は、会場でのイベントは中止や延期になる確率は高いでしょう。

一方、感染状況が落ち付けば、音楽フェスやスポーツイベントなどの臨場感のあるリアルなイベントは回復が早いことが予想されます。さらに、2025年開催予定の大阪万博では、訪日外国人需要も見込んでおり、大きな経済効果が期待されています。その一方で、セミナーや会議、商談などは、オンラインでも十分なことが周知されたため、コロナ前の水準に戻るのは厳しいと言えます。

イベントは広告効果が高く新聞やテレビCMなどの広告に比べ、市場規模が大きい産業です。イベント会場内での消費に加え、会場周辺での宿泊やお土産、交通費といった会場外での消費額も大きいため、リアルなオフラインイベントの開催は重要です。

このようなことから、イベント業界ではオフラインとオンラインのイベントを同時に開催する「ハイブリット型イベント」が増えることが予想されます。実際に、オフラインとオンラインの同時開催に対応するための、プラットフォームの改良など様々なサービスが始まっています。コロナという危機を迎え、イベント業界そのもののあり方が見直されました。今後も新たなサービスが続々と登場してくることが予想されます。