IoT業界の業界地図や現状と動向、課題や今後の見通しなどをご紹介します。IoT業界の構造から現状や課題、将来の見通しなど全体を一通り学べるように解説しています。
IoT業界の現状や動向について解説していきます。
IoTとは、『Internet of Things(インターネット・オブ・シングス)』の略で、日本語では「モノのインターネット」の意味となります。IoTは従来インターネットに接続されていなかった身の回りのあらゆるモノをインターネットに繋ぐ技術のことを指します。
IoTを構成するには、「デバイス(機器)」、「センサーやカメラ(データの取得)」、「ネットワーク(データ送信の通信手段)」、「クラウド(データの記録と蓄積)」、「アプリケーション(データの可視化)」が必要です。
IoTは、対象物に組み込んだセンサーがデータを収集し、インターネットを通してPCなどのアプリケーションにデータを送信します。集められたデータはビックデータとしてAIによる情報分析が行われるほか、製品や機器の遠隔操作も可能です。
例えば、センサーを組み込んだエアコンや産業機械などから、温度や湿度、モノの位置や動作を把握します。また、人の動きを感知し電気をつけるといった製品同士のデータ送受信や、外出先からエアコンを操作するなど、離れた場所からも機器を制御できます。IoTは「状態や状況の監視、データの送受信、遠隔操作」の機能を組み合わせた活用を進めています。
IoTの目的は主に2つで、業務効率化と新たなサービスや製品の開発です。家電や医療、製造業や自動車、農業や物流などの業界で導入され始めています。
IoTに関わる企業には、東芝や三菱電機、ファナック、NECや日立製作所、日本ユニシスやたソフトバンク、富士通などの大手企業が多く、ITに強みを持つスタートアップ企業などもIoT業界に参入しています。
IoT業界は、家電や機械などの製品をネットにつなぐため、大手電機メーカーや通信、工作機械などの企業が多く参入している市場です。
上の図はIoT業界の業界地図です。IoT業界は主に、「プラットフォーム」、「ITベンチャー」、「海外勢」に分けられます。なかでも、多くの企業が自社開発をしている「プラットフォーム」市場は厚く、様々な業界が参入している分野です。
2020-2021年のIoT業界の動向を分析しますと、新型コロナによる感染拡大を機に、ものづくりの現場を中心にIoTの必要性が注目された年でした。
製造業はIoTの導入でリードしている業界です。IoTの活用で生産性の向上や工場の自動化が行えるためです。
最近は、AIを組み合わせた利用や5Gの普及によって、IoT市場の需要が伸びています。取得したデータをAIで分析し、品質や生産効率の向上、コストの削減、作業ミスの防止や設備の故障時期の予測など、製造現場の課題解決に向けた開発が進んでいます。
さらに、高速通信である5Gが普及したことで、工場の自動化が進んでいます。通信速度が高速化することでリアルタイムでの判断や制御が可能となり、工場では機器の無線制御が行われています。また、自動制御の応用として建設機械や産業機械、工作機械や化学プラント業界においてもIoTが導入されています。
近年のIoT業界では、プラットフォームの開発が激化しています。
IoTプラットフォームは、IoTを活用するために必要な機能を提供する基盤です。そのため、プラットフォームの重要度が増しており、様々な企業がIoTプラットフォーム市場へ参入しています。
IoTプラットフォームを提供する国内企業には、日立製作所や三菱電機、NTTデータや東芝、ファナックやDGM森精機、NECや富士通などがあり、各社独自のプラットフォームを提供しています。また、海外勢ではドイツのシーメンスやボッシュ、米国のアマゾンやマイクロソフトが挙げられます。
様々なプラットホームが投入される中、国内の製造業においては、FA機器(生産工程の自動化を図るシステム)とITシステムの連携強化に動いています。三菱電機や日立製作所、NECなどの6社を幹事会社とする「エッジクロスコンソーシアム」が設立されています。
また、ファナックやDMG森精機、三菱電機、日立製作所の4社が、データ共有で連携を図っています。独自開発によってプラットフォームが乱立する中、企業の枠を超えた動きが見られています。
IoT業界では、当然、課題や問題点もあります。ここでは近年、IoT業界が抱える課題や問題点の中から特に重要なポイントをピックアップします。
国内のIoT業界では、IoTに精通した人材の確保や育成が大きな課題です。IoTの構築などデジタル技術力に加え、収集するデータの内容や分析、活用の仕方など、データを適切に扱う幅広い分野での対応力が必要です。また、収入や労働環境の整備が他国の企業に比べ整っていないことも、IoT人材の不足に繋がっています。
IoT機器はインターネットに接続されているため、ハッキングやサイバー攻撃を受けるリスクが高いことも課題です。実際、インターネット上のサイバー攻撃のなかでも、IoT機器への攻撃は増加しています。今後、IoT関連機器の拡大に伴って、サイバー攻撃も増加すると見られており、セキュリティーリスク対策はこれまで以上に重要になります。
業界が持つ課題やリスクはありますが、今後、IoTの需要は伸びる可能が高いと言えます。
IDCの調査によると、国内IoT市場のユーザー支出額は、2026年には9兆円を超えるとの見通しを立てています。2021年から2026年の年平均成長率は9.1%を見込んでいます。
国内では、少子高齢化による人口減少や人手不足などを背景に、工場の自動化や生産性の効率化がより重要視されます。人手を必要とする製造業や農業、医療などの現場ではIoTの導入が増えるでしょう。また、ローカル5Gの普及に伴い、企業向けのIoTの活用は進むことが予想されます。
一方、消費者向けIoTでは、メーカーごとにデバイスの規格が異なることが、IoT住宅などの普及を妨げるとして「スマートスピーカー」を提供するアマゾン、グーグル、アップルなどが、スマートホームデバイスの共通規格『Matter(マター)』を開発しています。
このように、企業向けIoTでは今後の市場拡大に向けた動きを見せる一方、一般消費者向けのIoTの普及は、当初の見込ほど進展は見られていません。さらに、課題でも述べたように、セキュリティーリスクも大きなネックとなっており、本格的な普及にはまだまだ時間がかかりそうです。