音楽業界の動向や課題、今後の見通しは?

音楽を聴く人や歌う人たち

音楽業界の業界地図や現状と動向、課題や今後の見通しなどをご紹介します。音楽業界の現状や課題、将来の見通しなど全体を一通り学べるようにまとめてあります。就職やマーケティングなどの参考にご活用下さい。

音楽業界の現状や動向

いくつかのデータやボタンを押す指の画像

音楽業界の現状や動向について解説していきます。

業界地図:音楽配信が成長市場 海外勢の参入過多

音楽業界では、主な販売チャネルにCDなどの音楽ソフトの販売、ダウンロード、配信型のストリーミングがあります。現在、音楽市場の売上の約7割は「音楽ソフト」が占めますが、ここ数年は「配信型」が成長市場となっています。

音楽業界の業界地図

上の図は音楽業界の業界地図です。音楽業界は主に、「レコード会社」、「音楽配信」、「物販」、「著作権管理」の市場に分けられます。なかでも、「音楽配信」市場は海外企業が多く参入している分野でもあります。

動向1. CDは縮小傾向も、大型ライブが回復傾向へ

部屋でくつろいでライブ配信を視聴する男性

2022-2023年の音楽業界の動向を分析します。日本レコード協会によると、2022年の音楽市場規模は前年比9%増の3,072億円となりました。また、コロナ前である2019年の2,997億円を上回りました。

2022年-2023年の音楽業界は、コロナ禍による行動制限が緩和したことで、延期や中止が相次いだライブが再開、なかでも大型ライブが復活したことで動員数や売上高も伸長しました。一方、CDなどの音楽ソフトは減少しています。

近年はDLやストリーミングなど、音楽を聴く環境が変化・多様化した影響で、CDの需要は縮小傾向にあります。コロナ禍ではリリースの延期などもあり、残念ながら新型コロナは縮小するCD市場に追い打ちをかける形となってしまいました。

一方、コロナをきっかけに需要が急拡大した「オンラインライブ」は、行動制限が緩和されたことでライブの公演数が増加し減少に転じました。

動向2. ストリーミングは音楽市場の3割へ サブスク利用も増加

最近の音楽配信の動向を見ますと、ストリーミング配信が市場をけん引しています。2018年にストリーミングがダウンロードを上回って以降、右肩上がりで増加しており、2022年には音楽市場全体の約3割を占めるまでに成長しました。

ストリーミングは通信料はかかりますが、消費者は聴きたい曲のみを手持ちの端末で気軽に聴けるため、利用者が増加しています。さらに、コロナ禍では巣ごもりによって「ながし聴き」をする消費者が増えたため、コロナをきっかけに拡大しています。2022年は前年から2割の増加、ストリーミング需要はコロナ前の19年から99%も増加しています。

こうしたストリーミングの需要拡大に伴い、定額制音楽配信サービス『サブスク』の需要も伸びています。定額で数多くの曲が聴き放題のため、利用者は増加傾向です。さらに、コロナ禍では、国内の人気アーティストが続々とストリーミング配信を解禁したことも追い風となり、ストリーミングの再生回数とサブスクの利用が大きく伸びました。

音楽業界の課題と問題点

グラフやレポートを分析する人たち

変革期にある音楽業界ですが、課題や問題点も多くあります。ここでは近年、音楽業界が抱える課題や問題点の中から特に重要なポイントをピックアップします。

課題1. 国内のストリーミング市場は世界に出遅れ

国内のストリーミング市場は大きな成長を見せていますが、日本の市場は世界に比べ出遅れています。2020年の世界のストリーミング売上は134億ドルにも達しており、音楽市場全体の約6割以上を占めます。一方、国内ではCDやDVDなどの音楽ソフトの売上が7割りを占め、世界と剥離している状況です。

課題2. オンラインライブのデメリット

コロナをきっかけに、「オンラインライブ」の需要が伸びた一方で、デメリットもいくつか挙げられます。2020年は「オンラインライブ」の利用者は増えましたが、無料コンテンツで十分と感じる消費者も多く、チケット相場もリアルライブと比較すると半分以下の水準でした。グッツ販売の低下やライブ開催直前までチケットが売れないなども課題です。また、臨場感はオンラインでは感じにくく、リアルライブの再開が進んだ2022年の需要は、減少に転じています。

音楽業界の今後の見通しについて

パソコンやデータのイラスト

音楽業界は今後、どうなる?

音楽業界は今後、CDなどの音楽ソフトは縮小する一方、『サブスク』を利用したストリーミング配信はさらに拡大するなど、2極化が進む可能性があります。

一方、会場でのリアルライブにおいては、2021年末頃には人数制限などを行いつつ、有観客でのリアルライブも行われました。2022年はライブや音楽フェスなど大型ライブの開催が増加し回復傾向にあります。

今後の音楽ライブにおいては、リアルとオンラインの同時開催や、生配信や収録上映を行うライブビューイングが増えることが予想されます。2022年のオンラインライブ需要は減少しましたが、リアルライブに参加できない消費者の需要を取り込めるため、こうしたライブの普及はさらに進む可能性があります。

また、最近ではNFTが音楽業界で注目されています。実際、エイベックスでは2021年4月にNFT事業に本格参入しており、所属アーティストのアイテム販売を開始、今後もライヴ配信やファンミーティングなどのイベント開催を見込んでいます。さらに、音楽制作のためにAIの活用も進むと思われます。実際、ワーナーミュージックは音楽生成AI企業と提携、YouTubeとユニバーサル・ミュージックもAI活用で提携を発表しています。

音楽業界は一部の市場で縮小が見られる一方で、デジタル面では今後も発展の余地はあります。音楽業界のデジタル化が進むにつれ、新たなサービスが登場することが予想されます。