冷凍食品業界が抱えている課題や問題点についてお話します。この記事では、今後の冷凍食品業界に大きな影響を与える課題や問題点はどのようなものなのか、重要な3つをご紹介していきます。
2021年現在、冷凍食品業界が抱えている課題は以下のとおりです。
冷凍食品業界が抱えている課題の1つが、人件費や物流費、製造費の高騰です。冷凍食品業界は近年、人件費や物流費、原材料や包装資材の価格が上昇しており、厳しいコスト環境に置かれています。
このようなことから、2019年には冷凍食品メーカ各社は揃って値上げに踏み切りました。大半は業務用で2~10%、家庭用においては一部商品で2~5%の値上でした。
冷凍食品業界では、工場の働き手やドライバー不足に伴い賃金が上昇し、燃料費や保管費も足枷になっています。原材料費は肉類や油脂類、小麦粉の値上をはじめ、農作物の不作、水産物の不漁や世界的な需要増が影響しています。加えて外装フィルムや容器、段ボールといった包装資材費も上がっています。
冷凍食品メーカ各社は事業の効率化や工場の省人化、原材料の見直しなどを図り、コストの削減に努めてきました。一方で、冷凍食品の製造には人手を要する工程が多く、自動化には限界があります。
今後もコストの上昇は続き、将来的にも製造コストが下がるとは考えにくい状況です。一方、増税や新型コロナの影響で消費者の節約志向は高まっています。消費者ニーズを満たした低価格をいかに提供するか、冷凍食品業界の大きな課題となっています。
冷凍食品業界が抱えている課題の2つ目が、冷凍食品の価値訴求です。いまや冷凍食品のイメージは「手抜き」から一変し、「簡単かつおいしい」が当たり前の時代となりました。
一方で、スーパーやドラッグストアの低価格販売の影響から「安い」印象も根強く、依然として商品の価値や魅力に気が付いていない消費者が多いのも現状です。
冷凍食品業界では、時代やニーズをとらえた商品開発を常に行ってきました。自然解凍で食べられるおかず、油と水が要らない焼き餃子、トレー付きのパスタやラーメン、袋がお皿にになる炒飯など、多忙な時代のニーズにマッチした商品を送り出しています。
新商品や付加価値のある商品を生み出すには、新しい技術を用いるため、企業の成長や開発費が不可欠となります。簡単かつおいしい商品をいかに作るか、冷凍食品の魅力に気づいていない消費者にどう伝えるかが今後の課題となります。
冷凍食品業界の3つ目の課題が、『少子高齢化、人口減少』に伴う内需の縮小です。
国内では少子高齢化の進行で人口が減少しています。人口減少下では胃袋の数とサイズは縮小し需要が低下するため、少子高齢化は冷凍食品業界にとって大きな問題です。
一方、近年の冷凍食品業界においては、共働き世帯や高齢世帯、単身者の増加を背景に、冷凍食品の需要が伸びています。『時短や簡便』ニーズの高まりで、夕食のメインやおつまみに冷凍食品を利用する消費者が増えています。
こうした需要は今後も高まるとして、各社は家庭用冷凍食品の開発に注力しています。特に、電子レンジで温めるだけで食べられる冷凍食品は、高齢化が進む国内では需要が高いとし、高齢者や介護に向けた商品開発を進めています。
ただ、国内の生産年齢人口は減少に転じており、すでにお弁当用の需要は頭打ちです。高齢者人口も2040年にはピークを迎えるため、将来的に冷凍食品市場の縮小が懸念されています
「長期的な人口減少を簡単・時短ニーズでいかにカバーするか」、また、「現在の消費者のニーズに見合った商品をいかに開発するか」が今後、人口減少時代を乗り切る大きなポイントとなります。