不動産業界が抱えている課題と問題点を解説します。課題を分析し、解決策を考えることは、今後の不動産業界の成長につながります。この記事では、今後の不動産業界に大きな影響を与える重要な課題を3つと、課題解決のための一例をご紹介します。
2021年現在、不動産業界が抱えている課題は以下のとおりです。
不動産業界が抱えている課題の一つが、少子高齢化、人口減少問題です。不動産はその国の人口動態に大きな影響を受けます。日本の人口は年々、減少傾向にあり、いわゆる「住宅購入世代」とされている30代の人口も減少傾向にあります。
住宅購入世代の減少により今後、不動産が今までのように売れなくなったり、借りられなくなる恐れがあります。さらに、高齢化を伴うことから「空き家」や「建物の老朽化」なども懸念されます。
2022年問題とは、「生産緑地」の優遇期間の終了に伴う、土地下落リスクのことです。
都市部にある農地は「生産緑地」と「宅地化農地」に分けられますが、生産農地は固定資産税が一般農地並みになる優遇を受けられます。ただし、生産農地には終身営農が条件となっており、宅地転用は指定日から30年経過または土地所有者の死亡が条件となります。
生産緑地の指定は1991年から開始されたため、30年経過した2022年には宅地と同水準の固定資産税がかけられるようになります。2022年には生産緑地の約8割が期限切れになることから、土地や不動産価格の下落が懸念されています。
コロナ禍の影響により、「テレワーク」や「在宅勤務」など私たちの働き方も様変わりしました。一部のIT企業では解約の動きが出るなど、それまで好調だったオフィス賃貸に変化が見られています。「オフィス賃貸」は不動産業界において、重要な収益基盤です。この事業が崩れることは今後、不動産業界にとって大きなリスクになります。
東京ビジネス地区 オフィス平均賃料と空室率の推移(出所:三鬼商事、グラフは業界動向サーチが作成)
上のグラフは2020年から2022年の東京ビジネス区(千代田、中央、港、新宿、渋谷区)のオフィスの平均賃料と空室率を示したものです。2020年半ばから賃料が下落、空室率が急上昇しています。直近の2023年1月には、空室率が高止まりしており、賃料は減少傾向にあります。
オフィスは通常、6か月前の解約通告が慣例となっているため、今後、さらに空室率が増加する可能性があります。当初、「コロナの影響は限定的」との見方が大半でしたが、2021年2月には空室率が5%を、6月には6%を超えました。直近の動向をみると、警戒すべき状況に入っています。
不動産業界が抱える課題を見てきましたが、ここではこれら課題を解決するために、不動産各社が取り組んでいる解決事例をご紹介します。
不動産大手各社は、国内の人口減少の動向を受け、海外市場の開拓を進めています。業界首位の三井不動産はロンドンやニューヨークでビル事業を展開。三菱商事はアジアや欧米を中心に投資を拡大、東急不動産は米国で賃貸やオフィスの展開を進めています。不動産各社は今後も海外事業を成長戦略の一つに掲げており、さらなる市場開拓が予想されます。
高齢者向け住宅の開発も少しづつですが、始まっています。三井不動産や野村不動産、東急不動産は「シニアレジデンス」や「シニア住宅」を展開しています。
三井不動産が展開するシニアレジデンス「パークウェルステイト」
「高齢者向け住宅」は通常の介護施設と異なり、高齢者が独立した生活をサポートする住まいを提唱しています。通常のマンションに加え、コンシェルジュや医療・介護提携、レストラン、送迎など、高齢者が快適に暮らせるサービスが附帯します。まだまだ費用が高いという欠点がありますが、今後、高齢化時代の一つの住宅のあり方になるかもしれません。