医療機器業界が抱えている課題についてお話します。この記事では、今後の医療機器業界に大きな影響を与える重要な課題を3つご紹介してきます。
2021年現在、医療機器業界が抱えている課題は以下のとおりです。
医療機器の輸出入金額の推移(出所:厚生労働省、グラフは業界動向サーチが作成)
医療機器業界が抱えている課題の1つが、医療機器の輸入超過が恒常化していることです。国内の医療機器業界の状況は、輸入額が輸出額を大幅に上回っており、輸入超過が問題になっています。
国内の医療機器の強みは「診断機器」です。なかでも、消化器内視鏡においてはオリンパスが、世界シェアの7割を占めています。その一方で「治療機器」は、海外メーカーが優勢で、輸入額全体の約6割を「治療機器」が占めています。
日本メーカーの得意分野である「診断機器」は、海外でも普及が進み、長らく横ばいで推移しています。2019年は『薬事工業生産動態統計調査』の調査方法が変更したことで、輸出入の金額は大幅に増加しましたが、輸入超過の状況に変わりはなく、医療機器の輸入依存度が高いことが伺えます。
医療機器業界が抱えている課題の2つ目が、多額の研究、開発費が必要になることです。医療機器の研究開発には、高度な技術開発に加え、機器の有効性や安全性の確認など、実用化するまでに、多くの時間と費用が必要になります。
資本力の大きい海外の医療機器メーカーと、国内メーカーの研究開発費の差は広がる一方にあります。さらに、海外の大手メーカーは資本力を活かし、M&Aで商品のラインナップを拡充し販路の拡大も行っています。
これに対し、国内の医療機器メーカーは、大手から資本力の小さい中小企業が混在し、多様な製品が存在しています。世界でもトップシェアを誇る分野がある一方で、日本企業が未だに参入できていない分野も存在しています。
医療機器業界の3つ目の課題が、優秀な人材の確保です。医療機器市場の拡大には、医療現場のニーズに訴求する製品開発が重要で、それを具現化できる優秀な人材が欠かせません。
医療機器の開発には、医療と工学の両方の知識と技術を持った人材が必要です。そのため、医療機器メーカーは医工連携が不可欠です。近年は、医療に関わる機器の開発や技術を身に着ける、医療工学の研究人材が不足してる傾向にあります。
また、近年の医療機器業界では、AIやIoTなどのデジタル技術の活用が盛んです。最先端の技術やシステム開発を推進する中、デジタルに強みをもつ人材も不足しています。
世界規模での高齢化の進展や医療需要の拡大を見据え、政府は日本の医療技術の国際展開を推進しています。医療機器の研究開発の後押しのみならず、人材育成の強化も喫緊に取り組む課題と言えるでしょう。