菓子業界が抱えている課題や問題点についてお話します。この記事では、今後、菓子業界に大きな影響を与える課題や問題点はどのようなもがあるのか、3つを取り上げてご紹介していきます。
2021年現在、菓子業界が抱えている課題は以下のとおりです。
菓子業界が抱えている課題の1つが、『原材料費、物流費、人権費』などのコストの高騰です。原材料費や人件費、海外からの輸送費や国内の物流費といったコストの高騰が利益を圧迫しています。
近年、ジャガイモや小麦、植物油などの原材料高が続く中、農作物の不作も重なり、世界的な需要増で価格が高騰しています。また、食品包装材フィルムや容器、段ボールといった梱包材価格も上がっています。
加えて、工場では働き手やドライバー不足による賃金の上昇、燃料費増加に伴う輸送費の高騰などで物流費も足かせとなっており、厳しい環境に置かれています。
こうした影響を受けて、2019年には大手メーカーが揃って2.9~8.7%の値上げをしました。さらに、新型コロナの影響により原産国の労働者が不足したことで、2021年には再び値上げが実施されました。
菓子メーカー各社は、生産効率向上を目指し工場での省人化や再編、コストの削減を行ってきました。一方、いも類などの食材は、使用時期によって状態が異なり大半が手作業になるため、自動化には限界があります。
今後も物価の上昇は続き、将来的にも製造コストが下がるとは考えにくい状況です。一方、増税や新型コロナの影響で消費者の節約志向は高まっています。「値段が高くても購買意欲が高まる商品をいかに提供するか」、こうした点が今後の菓子業界の大きな課題となっています。
菓子業界が抱えている課題の2つ目が、『PB商品』の台頭による競争激化です。近年、スーパーやコンビニの商品棚にはPB商品が多く並ぶようになりました。PB商品の占有率は上昇傾向で、大手メーカーのロングセラー商品が終売した例もあります。
菓子業界は古くから同業他社との競争が激しい業界で、新商品の開発や価格競争を繰り広げてきました。一方、近年は、スーパーやコンビニ、ドラッグストアにおいて、PB(プライベートブランド)商品の取り扱いが増えており、菓子市場は競争が激化しています。
PB商品は、大手菓子メーカーのロングセラーである定番商品を主体に開発・販売しています。味は大手商品とほぼ変わらない一方で、容量は多く低価格のため、消費者から選ばれやすい傾向にあります。
こうした市況から、菓子メーカーはPB商品や他社の商品との差別化を図っています。ジャガイモの厚みを倍にしたポテトチップスやノンフライ製法、トリュフなどの高級食材使用のスナック菓子、乳酸菌入りチョコレートなど、プレミアム商品への強化に取り組んでいます。
一方、近年は小売業のPB商品でも独自路線の商品が販売されており、競争は激しさを増しています。最近は節約志向が高まる反面、『プチ贅沢』として、休日に単価の高いお菓子を購入する傾向が高まっています。菓子メーカーは、ナショナルブランドならではの強みを活かし、時代やニーズをとらえた商品開発が重要です。
菓子業界の3つ目の課題が、『少子高齢化・人口減少』に伴う国内市場の縮小です。
国内では少子高齢化が進み、人口は減少傾向にあります。少子高齢化と人口減少下では、食事をする消費者が減るため、胃袋の数とサイズは縮小します。結果的に菓子需要は低迷するため、『少子高齢化・人口減少』は菓子業界おにいて大きな問題です。
2020年以降のコロナ禍では『巣ごもり需要』による家庭用菓子の需要が増加し、大容量のファミリーパックが好調でした。一方、高単価なお土産用菓子の需要は減少しています。
高齢化の進展により健康志向が高まるなど、菓子業界を取り巻く環境は変化しています。大手菓子メーカーは、乳酸菌入りや高カカオのチョコレート、鉄分やコラーゲン配合ウェハースなど大人向けや健康を意識した商品を相次いで販売しています。
このように、菓子業界では消費者ニーズを掘り起こし、新規商品の開発を常に行っています。一方で、国内の生産年齢人口は減少に転じ、高齢者人口も2040年にはピークを迎えます。すでに菓子業界の規模も頭打ちであるため、将来的に国内の菓子市場の縮小が懸念されています。
「長期的な人口減少を高付加価値・単価アップでいかにカバーするか」、また、「現在の消費者ニーズに見合った商品をいかに開発するか」が、今後の人口減少時代を乗り切る重要な視点となります。