証券業界が抱える課題とは?

証券業界のイメージ

証券業界が抱えている課題や問題点を解説していきます。2021年現在、証券業界はどのような課題を抱えており、各社はどのような解決策を用意しているのか、その一例をご紹介していきます。

証券業界が抱える課題【2021年】

2021年現在、証券業界が抱えている課題は以下のとおりです。

証券業界の課題1. 顧客の高齢化

高齢者たち

証券会社が抱える1つ目の課題は、顧客の高齢化です

対面、ネットともに高齢化が進んでいますが、特に、対面証券で顧客の高齢化が深刻になっています。野村証券や大和証券、みずほ証券など日本の証券会社の多くは、対面証券を基本としてきました。ある大手証券では、70歳以上の顧客の預かり資産が50%を超えたとの話もあります。

日本証券業協会は高齢者に対し、75歳以上の顧客には健康状態や判断力、投資の意向などを確認しなければならないとしています。こうした流れは、売買頻度の低下を招き、やがては収益の悪化を引き起こします。

証券業界の課題2. 日本人の低い投資行動

あとでやるイメージ

証券業界が抱えている2つ目の課題が、「日本人の低い投資行動」です。多くの証券会社がこの問題に40年近く悩まされてきました。1,000兆円ある家庭の預金をどう投資に振り分けてもらえるかが、証券会社が抱える最大の課題となります。

ただし、日本人のほとんどが証券投資に興味がないかと言うと嘘になります。「2,000万円問題」でも明らかになったように、多くの日本人は老後資金に不安を抱えています。実際に、投資に興味を持つ若者は多いのですが、「やり方が分からない」、「損をしたくない」といったことから、実行に踏み切れないケースも見られます。

証券業界の課題3. 手数料競争の激化

手数料をカットしているイメージ

証券会社の3つ目の課題は、手数料競争の激化です。とくに、ネット証券で手数料を大幅にカットする動きが見られます。米ブラックロックや米バンガードに端を発した手数料引き下げの波は、日本の証券会社にも飛び火し、各社一斉引き下げに踏み切りました。

ネット証券首位のSBIは、オンラインによる国内株式の委託手数料をいずれ5%以下(2020年3月現在は17%)に引き下げ、将来的には無料化を構想しています。手数料引き下げの動きは利用者にとっては良いですが、体力のない証券会社にとっては痛手でしかありません。業界内で淘汰が起き、いずれ大手のみが生き残る世界になるかもしれません。

証券会社が取り組んでいる解決事例

これまで証券業界が抱える課題を見てきましたが、ここではこれら課題を解決するために、大手証券会社が取り組んでいる具体例をご紹介します。

高齢者には、従来の証券投資にとどまらず、多様なニーズに応じた提案を各社行っています。高齢者の多くは、資産運用だけでなく、相続や事業継承、保有不動産など幅広い悩みを抱えています。対面販売を中心とする証券会社は、こうした顧客に対して、自社の持つ豊富なノウハウと経験を活かし、包括的な解決策を提案する仕組みを構築しています。

証券業界首位の野村証券は、「ハートフルパートナー」として、高齢者向け営業担当者を各店舗に配置。顧客のみならず、顧客の家族や経営者には従業員へのアドバイスなどきめ細かい提案を行っています。SBIや野村は、地方銀行との提携を強化。顧客基盤のある地方銀行を通して、これまで接点がなかった顧客に商品やサービスの提供を行います。

投資行動の喚起に関しては、スマホ向けアプリの拡充やポイント投資などが挙げられます。楽天証券は「ポイント投資」を推進。通販や銀行、旅行など豊富なサービスを提供する楽天グループの強みを活かして、投資初心者の需要を取り込みます。

楽天証券「ポイント投資」

楽天証券が展開する「ポイント投資」

一方、米国で「ロビンフット」がミレニアム世代に爆発的に普及したように、初心者向けアプリも大きな可能性があります。米国と日本の違いはあるにせよ、投資に興味がある日本の若者は多く、アプリの使い勝手次第では大きな需要喚起につながるかもしれません。