食品業界が抱える課題や問題点を徹底的に解説していきます。食品業界はどのような課題を抱えており、食品メーカーはどのような解決策を用意しているのか、具体例と一緒にご紹介します。
食品業界が現在抱えている課題と問題点は以下のとおりです。
食品会社が抱える1つ目の課題は、「人口減少による市場の縮小」です。
日本の人口は今後、縮小傾向にあります。単純に人口が減るということは、食品の総消費量が減ることになるため、国内の食品市場は今後、縮小してゆくことが予想されます。さらに、高齢化も進むため、一人当たりの消費量も減少していきます。
食品業界の2つ目の課題は、共働き世帯の増加、単身者の増加です。近年の日本は、共働き世帯や単身世帯の増加により、家で調理をする機会が減っています。
共働き世帯は夫婦がともに外で働いており、じっくりと家で調理をする余裕がありません。高齢世帯や未婚者も増加しており、惣菜を外で買ってきた方が早いと考える人も増えています。
実際に、スーパーの「惣菜」市場は年々、拡大しており、食品のシェアを奪う状況になっています。こうした社会構造の変化は、家庭内調理を前提としている食品業界にとって、大きな課題の一つと言えます。
食品業界の3つ目の課題が、「低い利益率と成長率」です。食品業界は他の業界に比べて利益率、成長率ともに低いのが特徴です。2020年決算の食品業界の利益率は、+1.8%で99位、成長率も+1.8%で104位でした(いずれも146業界中)。
利益率、成長率ともに低いのですが、注目すべきは利益率です。会社は、「利益が出たら再投資」というサイクルの中で成長してゆきます。つまり、利益率が低いということは、再投資の輪が小さくなり、結果として成長しにくいという問題を招きます。
食品業界の4つ目の問題点は、原料費、人件費、物流費の高騰です。利益率の低下とも共通する問題です。近年、食品業界では原材料費や人件費など製造コストの上昇が問題になっています。製造コストの上昇は収益性の低下を招き、成長を妨げる要因となります。
食品の製造コストの増加に伴う「値上げ」は、節約志向が高まる日本の消費者にとって、受け入れにくい状況です。利益率の低下はおろか、売上高の減少も招きかねません。
食品業界が抱える課題や問題点を見てきましたが、ここではこれら課題を解決するために、食品メーカーが取り組んでいる具体例をご紹介します。それぞれの事例を解析することで、課題解決のヒントを探っていきましょう。
人口減少が進む国内において、従来の売上を確保するには、付加価値の高い商品の開発が欠かせません。
6,000種以上から選び抜かれた「R-1乳酸菌」で高い付加価値を持つ
食品大手の明治は、プロバイオティクスを活用した乳製品「R1」や「LG21」を展開。他の食品が伸び悩む中、大幅な増収を記録しています。こうした付加価値の高い商品は通常の商品に比べ、価格を高く設定できますので、利益率の改善にもつながります。
共働き世帯や単身世帯向けの「時短商品の開発」も各社進めています。水産大手のマルハニチロは、レンジでチンしたらそのまま食べられる冷凍食品「WILDish」を発売。近年、増えている単身者や男性のニーズにこたえます。
袋が皿になるという画期的な冷凍食品「WILDish」
日清フーズは「カップでつくるお好み焼き」などをリリース。カップ内ですべて調理可能で、具材を切っていれるだけという簡単調理。今まで準備に面倒だったお好み焼きが、簡単に作れるようになりました。
日本ハムは、2018年12月に「スマート養豚」プロジェクトを開始。NTTデータと協力し、経験者の知見をAIに学習させ、少人数での農場運営を目指します。近年、国内の養豚農家の減少や高齢化は深刻な状況です。AIによる少人数での運営が可能になれば、人口減や高齢化といった課題を解決する「糸口」になるかもしれません。