食品業界の動向や現状、今後について分析しています。データは2022-2023年。食品業界の業界規模の推移をはじめ、食品製造業の売上高と利益率の推移グラフ、2021年-2022年の物価上昇などのトレンドと業界の今後の動向について解説しています。
業界規模
23.3兆円
成長率
2.6%
利益率
2.6%
平均年収
633万円
食品業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年、2021年と減少傾向にありましたが、2022年には増加に転じています。
財務省の法人企業統計調査(2023年9月公表)によると、2022年度の食品製造業の売上高は、前年比9.1%増の45兆4,120億円、営業利益率は前年から9ポイントマイナスの2.0%でした。
食料品製造の売上高と利益率の推移(出所:財務省、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフによると、食品製造の売上高は18年度から2022年度にかけて概ね横ばい傾向にあります。一方で、利益率は2121年度に反発したものの、2022年度に入り再び減少に転じています。
2022-2023年の食品業界は、経済再開の動きにより業務用食品の需要が回復傾向にあります。その一方で、国内の家庭向けにおいては需要が鈍化、調味料や冷凍食品のうち調理用などが前年からマイナスとなっています。
一方で、原材料価格の高騰の影響により、食品価格の値上げが相次いで実施されました。小麦や製油、畜肉、乳製品、卵で価格の高騰がみられます。
値上げは、食品業界の長年の課題であった利益率の向上につながりますが、消費者の節約志向が強い現在において、どの程度受け入れられるのかが一つの焦点となります。
食品業界は売上高数千億~1兆円規模の企業がひしめき合う巨大市場です。業界に属する企業は、上場企業だけでも120社を超えます。食品首位の味の素は調味料首位で、調味料や冷凍食品などを展開しています。海外売上高比率が6割弱と高いのが特徴です。2位の日本ハムは食肉の最大手で、食肉をはじめ、ハムやソーセージなどを中心に展開しています。
3位の山崎製パンはパン首位で、国内を中心に食パンや菓子パンを展開、4位の明治HDは、明治製菓と明治乳業が統合して発足した持ち株会社で、乳業と菓子を中心に展開しています。2022-2023年はランキング上位5社中3社が増加、2社が横ばいでした。業界全体としては、昨年に比べて10%の増加を記録しています。
食品業界が抱える主な課題は上記のとおりです。
近年では、共働き世帯や単身世帯の増加により、家で調理をする機会が減り、食品需要が低下しています。また、販売価格を安く抑えていることで、利益率が低い傾向にあります。利益率の低下は成長を阻害する要因となるため、食品業界にとっては大きな課題となります。さらに直近では、原材料費の高騰などの問題もあります。
食品業界の課題につきましては、「食品業界の課題と問題点を徹底解説!」にて詳しく解説しています。こちらもぜひ、ご参照下さい。
食品業界の今後を占ううえで、最大の要因は人口です。一般的に、食品の総消費量は人口と比例する傾向にあります。日本の人口は長期的に減少傾向にあるため、今後、食品市場の縮小が予想されます。さらに、日本では高齢化も進んでおり、一人当たりの消費量も減少傾向にあります。
一方で、世界の人口は今後も増加傾向にあり、世界の食品市場は拡大が見込まれています。農林水産政策研究所 によると、世界の飲食料市場規模は、2030年に約1.5倍の1,360兆円(2015年比)に成長するとの見通しです。地域別ではアジアが1.9倍、南米・オセアニアが1.4倍、欧州が1.1倍となっています。
さらに、Panorama Data Insightsによると、世界の「調理済み食品」の市場規模は2030年までに、約2倍の3,710億ドル(2021年比)に達すると予測しています。世界の食品市場のなかでも、「調理済み食品」の市場が急速に伸びることが想定されます。
今後、企業の持続的な成長を見据えた際に、海外展開は大きなアドバンテージとなるでしょう。以下のグラフは日本の主な食品メーカーの海外売上高比率を示したものですが、海外進出の状況は企業によってバラつきがあります。
日本の食品メーカーの海外売上高比率(出所:各社決算資料より、グラフは業界動向サーチが作成)
今後、長期的にみて、これら海外展開が進んでいる企業とそうでない企業との業績差がじわじわと開くことが想定されます。
今後、人口減少や高齢化が進む国内市場において、売上や利益を出し続けることはなかなか難しいでしょう。生き残り策の一つとして、「高付加価値商品」の開発が挙げられますが、毎年、売れ筋の商品を生み出すのは難しいものです。国内市場の縮小を補完する本命はやはり、海外市場の開拓と言わざるを得ません。
今後、海外進出で出遅れた企業はそれを挽回する動きに出る可能性が考えられます。近い将来、日本の食品メーカーによる海外企業の買収が加速するかもしれません。
食品業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで食品市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 味の素 | 13,591 | ||
2 | 日本ハム | 12,597 | ||
3 | 山崎製パン | 10,770 | ||
4 | 明治HD | 10,621 | ||
5 | マルハニチロ | 10,204 | ||
6 | 伊藤ハム米久HD | 9,226 | ||
7 | 日清製粉グループ本社 | 7,986 | ||
8 | ニッスイ | 7,681 | ||
9 | 日清食品HD | 6,692 | ||
10 | ニチレイ | 6,622 |
※シェアとは食品業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで食品市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ食品業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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味の素、日本ハム、山崎製パン、明治HD、マルハニチロ、伊藤ハム米久HD、日清製粉グループ本社、ニッスイ、日清食品HD、ニチレイ、キッコーマン、雪印メグミルク、不二製油グループ本社、日清オイリオグループ、森永乳業、ヤクルト本社、大塚HD、東洋水産、プリマハム、キユーピー、スターゼン、エスフーズ、ニップン、昭和産業、江崎グリコ、フジパングループ本社、カルビー、ハウス食品グループ本社、極洋、ミツカングループなどの計122社
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