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目次
グラフは製粉業界の業界規模(対象企業の6計)の推移をグラフで表したものです。
製粉業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の製粉業界の業界規模(主要対象企業6社の売上高の合計)は1兆3,881億円となっています。
製粉業界の過去11年間の業界規模の推移
製粉業界の過去の推移を見ますと、2008年から15年は増加や減少を繰り返していましたが、近年は横ばいで推移しています。
近年、主食となる米の消費量は減少する一方、パンやうどん、ホットケーキミックスの原料である小麦の消費量は堅調な推移を見せています。
農林水産省の食糧需給によると、2020年度の小麦の消費仕向量(国内で小麦粉に使用される小麦の量)は、前年度比2.4%増の647.3万トンとなりました。前年度から若干の増加を記録しました。
小麦の国内消費仕向量の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)
小麦粉の需要が堅調を維持している背景には、食生活の欧米化に伴う若年層を中心とした米離れ、朝食のパンの浸透が挙げられます。さらに食事に時短・簡便を求める単身世帯や共働き世帯の増加も、小麦粉の消費を上げる要因となっています。
2021年3月期の大手製粉会社の業績は、日清製粉グループ本社が売上高前年度比4.6%減、ニップンが4.4%減、昭和製粉は0.7%の増加となりました。
大手製粉会社では海外事業を成長事業の一つと位置付けており、海外における製粉会社の買収および小麦粉やプレミックスの新工場の建設を進めています。
業界首位の日清製粉グループ本社は、すでに小麦粉の生産能力は海外が60%を占めており、国内の1.5倍の規模に拡大しています。2012年の米国進出をきっかけにニュージーランドの製粉事業やタイの製粉会社を買収。2018年には豪州最大の製粉会社「アライド・ピナクル」の買収で、豪州市場への本格参入を果たしています。
業界2位の日本製粉は、ASEAN地域におけるプレミックス需要の高まりを受け、中国とタイにプレミックス工場を増設、海外での生産能力の増強を図っています。その他、米国やインドネシアにも進出しており、今後も海外事業比率を伸ばす意向です。
同3位の昭和産業も同様にASEAN地域でのプレミックスの製造を強化しており、2018年にはベトナムに新会社を設立。また、2019年11月には台湾の「大成集団」との合弁事業を発表し、事業領域の拡大を進めています。
国内市場は少子高齢化に伴う需要の減少で、今後大きな消費が見込めないことが予想されています。こうした市況により、製粉大手3社は成長著しいASEAN地域や消費の拡大が見込める海外での事業拡大を加速させています。
製粉業界は、原材料である小麦の価格に影響を受けやすい業界です。
日本で消費される小麦は約9割が輸入頼みです。政府が一括で買い入れた小麦を国内の製粉会社が買取る「政府売渡制度」が設けられており、輸入小麦の価格は政府によって決められています
また、小麦の価格は関税や為替、天候不順、輸送コスト、新興国の食生活の変化など様々な要因が反映されており、小麦粉価格は下落や上昇を繰り返すなど不安定な相場が続いています。このような市況は製粉会社の業績に大きな影響を与えています。
国際貿易関係では2018年の「TPP11協定」、2019年の「日EU・EPA協定」や日米貿易協定が発足し、小麦や小麦粉製品の二次加工製品の関税引下げが進んでいます。
そうした中、製粉業界では貿易協定をリスク要因の一つとして認識しています。関税引き下げによる輸入品の二次加工品(パスタやクッキー等)の需要拡大により、国内の小麦粉需要は減退し、製粉業界の規模が縮小する恐れがあります。
今後、世界的な人口の増加、異常気象による穀物の収穫減など世界の穀物相場の高騰と食料争奪のリスクが懸念されます。また、ビジネス環境が大きく変化することで業界内での競争激化、さらなる事業拡大を求め、業界再編や事業提携など大きな動きが起きる可能性もあります。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 日清製粉グループ本社 | 6,794 | 48.9 | |
2 | 日本製粉 | 3,295 | 23.7 | |
3 | 昭和産業 | 2,559 | 18.4 | |
4 | 日東富士製粉 | 565 | 4.1 | |
5 | 日本食品化工 | 450 | 3.2 | |
6 | 鳥越製粉 | 218 | 1.6 |