GENERAL TRADING COMPANY
目次
グラフは総合商社業界の業界規模(対象企業の8計)の推移をグラフで表したものです。
総合商社業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の総合商社業界の業界規模(主要対象企業8社の売上高の合計)は50兆7,955億円となっています。
総合商社業界の過去4年間の業界規模の推移
総合商社とは、「トレーディング」や「事業投資」を主に行う会社です。総合商社の仕事内容は分かりにくいものですが、その変遷をたどっていくことできちんと理解できるようになります。
「トレーディング」とは、原産者とメーカーの結びつきを行う仕事です。トレーディングは従来からある商社の仕事で、原産者とメーカーの仲介のような役割を果たします。
メーカーは商品や製品を製造するのに様々な原料が必要になります。しかしながら、それを直接買い付けるネットワークやノウハウを持ち合わせていません。そこで膨大なネットワークを持った総合商社が中に入り、原産者とメーカーを結びつけます。
一方で、1990年代のインターネットの普及に伴い、メーカーが独自に生産者を探して買い付けるいわゆる「商社外し」が発生し、「商社不要論」が叫ばれるようになりました。これに危機感を持った総合商社は、原産者、メーカー、小売(いわゆる川上から川下まで)に直接出資をしてバリューチェーンそのものを押さえる動きが生まれました。これが、「事業投資」の始まりです。
2000年代に入ると総合商社は、従来の「トレーディング」から「事業投資」へと本格的にシフトし始めます。こうした変遷の結果、現在の総合商社は「事業投資」が収益の柱となっています。総合商社は、様々な分野で持分法適用会社や連結子会社を所有しており(例:三菱商事は約1,700社の連結会社)、「持分利益」や「配当」などの形で利益を得るモデルが定着しています
ちなみに、総合商社はセグメントの中で「資源」の影響を受けやすい点が特徴です。したがって、総合商社の業績は資源価格に左右される場合が多く、資源価格が下落しているときは業績が悪化し、資源価格が上昇しているときは業績が良い傾向にあります。
下のグラフは、主な総合商社業界の過去10年間の純利益の推移を示したものです。
主な総合商社の純利益の推移(出所:各社決算資料、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフによると、直近の2018年から2020年までは減少傾向にあり、2021年は増加に転じる見通しであることが分かります。
2020年は記録的な原油安に加え、石炭や天然ガス、鉄鉱石など資源価格も軒並み下落し、資源価格の影響を受けやすい総合商社業界にとっては厳しい一年となりました。新型コロナに伴う各国の出入国の制限により世界中のサプライチェーンが分断し、非資源分野でも減収を余儀なくされました。一方で、2015年の資源バブルの崩壊による反省から、非資源分野の強化を行ってきた甲斐もあり、減益幅は最小に抑えられた印象も受けます。
2021年の総合商社業界は一転して、世界的な金融緩和や渡航制限による労働者不足、経済再開期待などを背景に資源価格が上昇しました。とくに、2021年後半から2022年にかけては原油をはじめ、銅やLNGなどの資源価格が高騰。世界的なサプライチェーンも回復傾向にあり、2021年の総合商社は増収増益が期待されています。
2020年の総合商社業界の純利益ランキングによると、首位が伊藤忠商事で2位が三井物産、3位が丸紅でした。(総合商社は慣習的に純利益ベースで比較されることが多いので、純利益ランキングを掲載しています)
2020年は三菱商事と住友商事が大きく利益を減らしました。三菱商事は原料炭やLNGや原油などの資源価格の低迷と三菱自動車の多額減損が響きました。住友商事はマダガスカルのニッケル事業やEPC工事遅延に伴う損失など巨額の一過性損失を計上したため、赤字に転落しました。
2020年には全体的に減益となった企業が多かったですが、2021年は資源価格の高騰を背景に、増益を記録する企業が増える見込みです。
近年の総合商社は、過去の資源バブル崩壊などの経験から『非資源分野』を強化しています。2020年は資源価格の下落により、再び業績が悪化しましたが、過去のような大きな打撃は受けませんでした。近年の「非資源分野」強化の成果が出ていると見られます。
非資源分野の取り組みとしては、各社強みを生かした事業再編を行っていますが、全社的に取り組んでいるテーマはDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
三菱商事は、DXによる食品流通の最適化を模索しています。
三菱商事が目指すDX
三菱商事は、AIによる食品需要の予測をメーカー、食品卸、小売りが共有する仕組みを考えました。AIによる需要予測をバリューチェーンで共有することで、在庫の最適化を図り、作り過ぎによる食品ロスの減少を目指します。
伊藤忠商事は、バリューチェーンの最適化に加え、消費者接点の高度化を意識したDXを推進していきます。ファミリーマートにおけるサイネージ広告の設置や「ファミペイ」アプリの拡大、小売分野ではAIカメラを活用した顧客行動分析などを行います。
人口が減少する日本において、「生産性の向上」や「新しいビジネスの構築」は待ったなしの課題です。今後、あらゆる産業でDX化は進んでいくでしょう。バリューチェーン全体を押さえている総合商社にとって、DX導入のインパクトは非常に大きいものです。総合商社のこうした取り組みは、日本の産業全体のDXを加速させる可能性を秘めています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 三菱商事 | 128,845 | 25.4 | |
2 | 伊藤忠商事 | 103,626 | 20.4 | |
3 | 三井物産 | 80,102 | 15.8 | |
4 | 丸紅 | 63,324 | 12.5 | |
5 | 豊田通商 | 63,093 | 12.4 | |
6 | 住友商事 | 46,450 | 9.1 | |
7 | 双日 | 16,024 | 3.2 | |
8 | 兼松 | 6,491 | 1.3 |