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目次
グラフは海運業界の業界規模(対象企業の17計)の推移をグラフで表したものです。
海運業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の海運業界の業界規模(主要対象企業17社の売上高の合計)は3兆7,351億円となっています。
海運業界の過去6年間の業界規模の推移
海運業界の過去の推移を見ますと、2017年から2020年にかけて減少傾向にあります。
下のグラフは海運業界の主な企業3社の売上高の推移を示しています。
海運大手3社の売上高の推移(各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフを見ますと、海運大手3社は売上の差はあるものの、ほぼ同様の動きをしています。ここ数年の売上高は減少が続き、厳しい状況を迎えています。海運業界の21年3月期の大手3社の売上高は、日本郵船が前年比3.6%減、商船三井は14.2%減、川崎汽船は14.9%減の減収となっています。
2020年の海運業界は、新型コロナによる世界的な感染拡大により、大手5社そろって減収となりました。前半に落ち込んだ自動車輸送は夏以降に回復したものの、一時的な荷動きの急減が売上に響きました。一方、運賃の下落は見られなかったことから、大手5社中4社は増益を記録しています。
海上輸送を行う海運業界は「内航海運(国内)」と「外航海軍(海外)」に分かれます。輸送品の種類に応じて様々な輸送船が存在し、コンテナ輸送の「コンテナ船」、穀物や鉱石などを梱包せずにそのまま輸送する「バラ積み船」、液体輸送の「タンカー」、自動車に特化した「自動車船」、化学薬品用の「ケミカルタンカー」などがあります。
海運会社は「内航、外航、船の種類」によって得意不得意があり、各社棲み分けがなされています。とくに国内の大手海運会社の収益源は、不定期船(バラ積み船、自動車船、LNG千、油送船)です。また、一部の海運会社は一般消費者向けに、フェリーなど旅客船を扱っています。
2020年海運業界の売上高ランキングを見ますと、首位が日本郵船、2位が商船三井、3位が川崎汽船でした。上位3社はコンテナ事業を統合し「ONE」を設立、2018年4月に事業をスタートさせています。3社統合によるシェア拡大で、コンテナ船事業の収益確保を図っています。
売上高トップの日本郵船は、鉄鉱石や石炭、原油やLNG、自動車の輸送の不定期船事業の他、陸運や空運事業も強化しています。商船三井は不定期船に強く、ドライバルク船、LNG船などを主にしています。川崎汽船は、電力炭船や自動車船に強みがあります。
新型コロナの影響によって、海運業界では深刻なコンテナ不足が発生し、さらに海上輸送にかかる運賃も高騰しています。
新型コロナによる感染拡大の影響で、各国で巣ごもり需要が高まっています。これを受け、家電や家具などを輸送するために、国際海運の需要も急増しています。
一方、コロナ禍による労働者不足によって港での荷役作業が滞り、港湾機能が低下しています。そのため、多くのコンテナ船が停滞している状況で、企業のスケジュールが乱れています。コンテナは世界中で使い回す仕組みのため、荷物の輸送には空のコンテナが必要になりますが、荷役作業が滞ることでコンテナ不足が発生しています。
現在の運賃の上昇は荷動きの急増もありますが、そこにコンテナ不足が拍車をかかけ、さらに運賃が高騰する状況です。
海運大手3社では、2022年3月期業績予想を上方修正するなど、運賃高騰の恩恵を受けています。世界的なコンテナ不足の解消の見通しは依然として立っておらず、今後もしばらくは運賃の高止まりが続くと見られています。
コンテナ船市場のシェア争いが世界的に激化したことを受け、国内の海運大手3社はコンテナ事業の統合で新会社「ONE社」を設立し、シェア拡大によるコンテナ船事業の収益確保に努めています。さらに、各社はそれぞれに市況の変動に左右されにくい事業に注力し始めています。
業界トップの日本郵船は、ボラティリティへの体制強化と収益力の向上を図ります。運賃安定型事業として物流事業を強化し、海上や航空ともに取扱量を拡大しています。また、DXではブロックチェーンによるラットフォームの構築で、貿易情報を一元化し手続きの利便性向上を図ります。
日本郵船は「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶」の社会実装に向けた実証事業を開始
さらに同社は、曳船事業において国内最大級の強みを活かし「アンモニア燃料タグボート」の建造や「洋上風力関連事業」にも注力しています。特に日本郵船含む5社共同の「アンモニア燃料タグボート」では国産エンジンを搭載し、2024年には内航船を造船、外航船は2026年度をメドに就航を目指します。
商船三井では、海洋資源開発や、再エネを含む洋上でのエネルギー生産の分野を積極的に展開していきます。主に特定の場所に浮かべて活用する「浮体式LNG貯蔵再ガス化設備」や「洋上風力」を強化します。また、地域戦略では液体輸送の日本コンセプトと新会社を設立し、化学品需要を見込めるインドや中国での営業活動を行います。
川崎汽船は「ドライバルク、自動車船、エネルギー資源、物流」の4事業を強化します。収益の向上を見据え、2020年8月には非コア事業の「米ターミナル子会社」を売却、さらに新たな事業領域として「洋上風力支援船」や「新エネルギー輸送需要(アンモニア、水素、CO2等)」にも注力しています。
2020年の海運大手5社はそろって減収となりました。一方、運賃の高騰により、大手3社は2022年3月期業績予想を上方修正し、純利益が過去最高を更新する見通しです。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は懸念材料となっており、世界貿易に依存する海運業界にとっては予断を許さない状況です。各社いずれも変化の厳しい海運市場に対処すべく、様々な事業を模索しています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 日本郵船 | 16,084 | 43.1 | |
2 | 商船三井 | 9,914 | 26.5 | |
3 | 川崎汽船 | 6,254 | 16.7 | |
4 | NSユナイテッド海運 | 1,384 | 3.7 | |
5 | 飯野海運 | 889 | 2.4 | |
6 | ENEOSオーシャン | 527 | 1.4 | |
7 | 栗林商船 | 414 | 1.1 | |
8 | 明治海運 | 401 | 1.1 | |
9 | 新日本海フェリー | 401 | 1.1 | |
10 | 川崎近海汽船 | 370 | 1.0 |