CHEMISTRY
目次
グラフは化学業界の業界規模(対象企業の194計)の推移をグラフで表したものです。
化学業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の化学業界の業界規模(主要対象企業194社の売上高の合計)は29兆9,685億円となっています。
化学業界の過去11年間の業界規模の推移
化学業界の過去の推移を見ますと、2010年から2018年はおおむね増加傾向にありましたが、2018年から2020年にかけて減少に転じています。
経済産業省の工業統計調査によると、2019年の化学工業の製造品出荷額は、前年比1.7%減の29.2兆円でした。
化学工業の製造品出荷額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
前年に比べて若干の減少となりましたが、ここ数年の動向は横ばいで推移していると言えます。
今まで化学業界の動向を振り返りますと、2017年から2018年は自動車や半導体を中心とした世界的な経済成長と、化学原料であるナフサ価格の上昇を背景に若干の増加を記録しています。一方、19年は米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの影響が重なったことで、自動車向け需要の低迷が見られました。
化学工業の生産指数の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
続いて、2020年から2022年の最新の化学業界の動向を見ていきましょう。上のグラフは、経済産業省の鉱工業指数の化学工業の生産指数の推移を示したものです。グラフを見ることで、コロナ後の2020年から2022年までの化学業界の動向を把握することができます。最新の2022年4月の化学工業の生産指数は、前年比+5.8%の109.5でした。
グラフによると、新型コロナの感染拡大に伴い2020年1月から6月にかけて大幅に落ち込みましたが、その後増減を繰り返しながら若干の増加基調を見せています。2021年は自動車や半導体向けの需要回復が追い風となり、コロナ前に近い水準まで回復しています。
化学業界は一般的に、石油や天然ガスを原材料に、樹脂やゴム、合成繊維などを作り出します。一般に石油化学とも呼ばれ、化学業界は原料となる石油の値段が業績に大きく影響します。
2011年から13年は世界的な原油価格の上昇の影響により、化学メーカーの収益性が悪化。リーマンショック後の景気拡大局面にもかかわらず、業界全体での業績は足踏み状態でした。14年ごろから原油価格が下落局面に。原材料の下落に加え、円安基調もプラスに働き、業績も若干の増加に転じています。
原油価格の下落に伴い、近年、増加傾向にある化学業界ですが、今後の見通しはさほど明るくありません。各社とも危機感を持っており、国内外で様々な動きが見られます。
2009年には業界3位の三井化学が東セロを完全子会社化。また、同年2月には東レが新日本石油、三菱重工業など民間6社でバイオエタノール革新技術研究組合を設立。翌10年には三菱ケミカルHDが三菱レイヨンを連結子会社化しました。
また、三菱ケミカルHDの子会社の三菱化学は2014年に鹿島事業所のプラント2基のうち1基を停止。住友化学も15年までに千葉工場のプラントを停止する予定。
さらに2016年には旭化成と三菱ケミカルが共同で岡山県の水島工場の再編に動き出します。化学メーカー各社は、設備過剰となっているエチレンプラントの停止や再編を行うことで収益の改善を試みます。
近年の化学業界は、低価格した汎用品分野からの撤退、プラントの停止など収益性の向上を図る取組みを積極的に行っています。
また、近年、乱高下する原油価格の影響を少なくするため、石油化学への依存度を下げる取り組みも見られます。近年は増加に転じた化学業界ですが、いまだ先行き不透明な状況が続き、さらなる経営体質の改善が進むものと見られます。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 三菱ケミカルHD | 32,575 | 10.9 | |
2 | 住友化学 | 22,869 | 7.6 | |
3 | 信越化学工業 | 14,969 | 5.0 | |
4 | 三井化学 | 12,117 | 4.0 | |
5 | 旭化成 ※ | 9,912 | 3.3 | |
6 | 日本酸素HD | 8,182 | 2.7 | |
7 | エア・ウォーター | 8,066 | 2.7 | |
8 | 日本ペイントHD | 7,811 | 2.6 | |
9 | 日東電工 | 7,613 | 2.5 | |
10 | 東ソー | 7,328 | 2.4 |