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目次
グラフは化粧品業界の業界規模(対象企業の19計)の推移をグラフで表したものです。
化粧品業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の化粧品業界の業界規模(主要対象企業19社の売上高の合計)は2兆0,858億円となっています。
化粧品業界の過去7年間の業界規模の推移
経済産業省生産動態統計によると、2020年の化粧品出荷額は前年比16.3%減の1兆4,749億円となりました。前年の過去最高額の更新から一転、2020年は9年ぶりのマイナスとなりました。
化粧品市場は2012年から19年までは、右肩上がりで推移してきました。19年には初の1兆7千億円台を突破したのも束の間、2020年は2,862億円が減少することとなりました。
化粧品出荷額の推移(出所:生産動態統計年報、グラフは業界動向サーチが作成)
品目別出荷額の構成比を見ますと、化粧水や乳液等の「スキンケア用品」が52.3%と、全体の半分以上を占めています。シャンプーやリンス等の「頭髪用化粧品」は25.0%、ファンデーションなどの「仕上げ用化粧品」は16.5%、残りは日焼け止めや香水などになります。
2020年は新型コロナウイルスの影響によって、化粧品メーカーは大きな打撃を受けました。渡航制限によって、旺盛な訪日外国人需要は消滅しています。さらに百貨店の営業自粛、テレワークや外出自粛を受け、メイク用品を中心とした化粧品の消費が減少しています。
化粧品は販売チャネル数が多く、なかでも百貨店が化粧品業界の売上を牽引しています。ですが、2020年は中国人を中心とした訪日外国人が大幅に減少したため、百貨店の化粧品売上も大幅な下落となりました。
国内の化粧品メーカー売上高のランキングでは、1位は資生堂、2位がコーセー、3位が花王となります。
ランキングでは資生堂が首位を独走し、コーセーと花王が2位争いをしています。ただ、2020年は各社ともに、新型コロナによる大きな影響を受けています。売上高を大きく減少させるメーカーも多く、今後はランキングに変化が見られる可能性もあります。
2020年の大手化粧品メーカー3社の業績を見ますと、資生堂は前年比18.6%減の9,208億円、コーセーは同14.8%減の2,793億円、花王(化粧品事業)は22.4%減の2,340億円でした。
ここ数年、国内の化粧品市場は、旺盛な訪日外国人の需要を取り込めたことで、拡大傾向にありました。
なかでも、中国人観光客の消費は突出しており、国内の化粧品市場を下支えする存在でした。観光庁によると、2019年の化粧品購入単価は5万2千円と、他国に比べ断トツの消費力を見せていました。ところが、2020年に入り新型コロナウイルスの感染拡大により、状況は一変しています。
大手化粧品メーカー4社の第2四半期の売上高の比較(各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)
上のグラフは、大手化粧品メーカー4社の2021年決算の中間業績の様子です。最新の動向を把握するために、中間決算を比較してみました。資生堂は前期比26.0%減、コーセーは同23.7%減、花王は21.5%減、ポーラ・オルビスHDが24.0%減と、4社ともに20%越えの大幅な減少を記録しています。
世界的な感染拡大により渡航制限が行われたことで訪日客は急減し、期待のインバウンド需要は激減しました。加えて、商業施設の休業やテレワークの普及が影響し、各社は大打撃を受けています。
緊急事態宣言の解除後も、時短営業や消費者の外出自粛により、各店舗の来店客数は減少しています。また、マスクの定着化が進んだことで、メイクアップ商材を中心に販売数が伸び悩み、苦戦を強いられています。
国内の化粧品市場の回復は、各社の想定以上に遅れています。一方で、中国の化粧品市場は早い回復を見せたことで、各社の化粧品需要は好調に推移しています。ただ、依然として新型コロナの収束は世界的にメドが立っておらず、楽観視はできない状況です。
新型コロナによる影響で各化粧品メーカーは、対面やリアル店舗での販売という強みが活かせなくなったため、デジタルシフトを加速させています。
資生堂は、デジタルマーケティングとECの拡大に注力し、2023年までにECの売上比率を13%から25%(19年比)に拡大することを掲げています。2020年7月には、三越伊勢丹HDのECサイト「meeco」で、初の国内ライブコマースをスタートさせました。
資生堂は「Webカウンセリング」を全国のデパートカウンターへ拡大
2020年資生堂は、店頭での専門家によるカウンセリングをオンライン上で体験することができる「webカウンセリング」を開始。2021年3月には、部分的に行われていたカウンセリングを全国のデパートカウンターへ拡大しています。同月には全国の資生堂取り扱い店と連携した、ECプラットフォーム「omise+」も立ち上げています。
コーセーでは、プラットフォームの確立とEC事業を加速させています。2020年3月には、オンラインサイト「Maison KOSÉ」でメイク画像や商品紹介を配信し、ECとの連携を高めています。また、2019年に銀座にオープンした体験型ストアでは、デジタル技術を活用した「デジタルカウンセリング」を提供するなど、オフラインとオンライン双方での顧客体験を追及しています
花王では、新型コロナによる影響で、消費者がオンライン購買へシフトすることを見込み、EC事業を強化しています。その結果、2020年の国内のEC売上比率は前年比20%越えと、大幅増を記録しました。
ポーラ・オルビスHDも同様にEC事業の強化を図っています。2023年にはEC売上比率を”国内では2%を5~10%”に、海外では”9%を10~25%”に高めることを計画しています(19年比)。
化粧品メーカー各社は、デジタル面の強化のみならず、時勢を捉えた「商品開発」にも注力しています。マスク着用の状態化が続く中、マスクにメイクがつきにくい商品や、マスクによる肌荒れを防ぐスキンケア商品など、コロナ禍に適応した新製品の開発を迅速に行っています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 資生堂 | 9,208 | 44.1 | |
2 | コーセー | 2,793 | 13.4 | |
3 | 花王 ※ | 2,340 | 11.2 | |
4 | ポーラ・オルビスHD | 1,763 | 8.5 | |
5 | DHC | 972 | 4.7 | |
6 | ファンケル ※ | 651 | 3.1 | |
7 | マンダム | 633 | 3.0 | |
8 | ノエビアHD | 518 | 2.5 | |
9 | 日本コルマー | 472 | 2.3 | |
10 | 日本メナード化粧品 | 441 | 2.1 |