百貨店業界の動向や現状、ランキングなど

百貨店の店内の様子

百貨店業界の動向や現状、ランキングなどを研究しています。データは2021-2022年。百貨店業界の過去の市場規模の推移をはじめ、百貨店の売上高の推移、ランキング、商品別売上高の推移、2021年から2023年までの月次、各社の取り組みなどを詳しく解説しています。

百貨店業界(2021-2022年)

百貨店業界の推移と基本情報

業界規模

2.9兆円

成長率

-17.5

利益率

1.1

平均年収

596万円

  • 16年
  • 17年
  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年

百貨店業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2019年までは横ばいで推移していましたが、2019年から2021年は大幅な減少傾向にあります。

百貨店業界の動向と現状(2021-2022年)

2022年の売上高は5.5兆円 前年比2ケタ増で需要は回復傾向

経済産業省の商業動態統計(2023年2月15日)によると、2022年の百貨店業界の年間売上高は、前年比12.3%増の5兆5,070億円となりました。

百貨店の売上高の推移

百貨店の売上高の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフは百貨店の売上高の推移をあらわしたものです。19年までは6兆円台をキープしていましたが、2020年は4兆円半ばまで急落、2021年も増加に転じたものの4兆円台に留まりました。一方、2022年は5.5兆円まで回復しており、最悪期は脱したとみられます。

近年の百貨店の動向を見ますと、2020年-2021年は新型コロナによる影響を大きく受けたことで、百貨店の需要は急激に落込みました。2021年の年末にかけては一時的に来店客数と売上は順調に推移しましたが、年始から初秋にかけての業績低迷が響き、全体では低水準で推移しました。

2022年の百貨店業界においては、完全な回復には至りませんが、最悪期は脱しています。行動制限の緩和によって外出の機会が増え、購買客数、売上ともに増加、2022年10月以降は海外からの水際対策の緩和と円安の影響も加わり、インバウンド需要も増加傾向にあります。

百貨店の売上高は2015年をピークに減少傾向にあります。ここ数年は、富裕層やインバウンド需要に支え得られてきた百貨店業界ですが、その恩恵を受けているのは、都市部や首都圏の店舗です。地方や郊外店は恒常的な赤字で閉店が相次いでおり、百貨店業界は縮小傾向にあります。

そして、2022年11月には、セブン&アイ・HDが「そごう・西武」の売却を発表(2023年3月に売却延期表明)、2023年1月末には、再開発が進む渋谷の東急百貨店本店が閉店するなど、都市部で展開する百貨店も状況が変わりつつあります。

下のグラフは2021年1月から2024年2月までの主な百貨店の月次売上高の推移です。

主な百貨店の月次売上高の推移

主な百貨店の月次売上高の推移(出所:各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)

2021年4月と2022年5月は前年の数値が低かったこともあり、大きく跳ね上がっていますが、全体的には100を上回る水準で推移しています。2021年後半から2024年2月までの百貨店売上高は順調であることが分かります。

続いて、百貨店業界の売上高ランキングを見ていきます。

百貨店業界 売上トップ5(2021-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 高島屋 7,611
2 セブン&アイ・HD 4,469
3 三越伊勢丹HD 4,183
4 J.フロントリテイリング 3,314
5 丸井グループ 2,093

※は百貨店関連の部門売上高。2021年の百貨店業界売上高ランキングは、首位が高島屋、2位がセブン&アイ・HD、3位が三越伊勢丹HDでした。売上高で一歩リードする高島屋は、国内15店舗、海外5店舗を展開、ほか金融業や不動産業も行います。

2021年の主な百貨店5社の業績は、高島屋が前年比11.8%増、セブン&アイ・HDが同48.7%減、三越伊勢丹HDが3.9%増、J.フロントリテイリングと丸井GPが各1.6%増でした。

2022年は回復傾向へ 行動制限解除、インバウンドも解禁に

下落の矢印と転落している人

2020年以降、猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、百貨店業界に多大な影響を及ぼしてきました。そして、2022年3月以降は感染対策である行動制限が緩和されてことで、状況は変わりつつあります。

まずは、2022年までの百貨店の商品別の売上高の推移をグラフで見てみます。すべてのカテゴリーで前年比増となり、なかでも富裕層による高額商品の購入が好調でした。全体では急落前の2019年の業績から約9割近い回復が見られています。

百貨店の商品別の売上高の推移

百貨店 商品別の売上高の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

2022年の3月にはまん延防止策が終了し、百貨店業界はコロナ流行以降、初の行動制限のないゴールデンウィークや夏休みを迎えました。入店客数、売上ともに大幅な回復となり、夏物衣料品やお中元のほか、帰省需要により菓子類が好調でした。また、富裕層を中心に高級ブランドや宝飾品の売れ行きが引き続き高伸しています。

また、2022年10月には水際対策の大幅緩和によって、訪日外国人の需要が戻りつつあります。円安効果も加わり台湾や韓国、中国の他、マレーシアやシンガポール、タイなどの東南アジアからの来店客が多く見られます。都市部の百貨店はインバウンド需要に支えられていた側面もあり、今後の訪日外国人需要に期待がもたれています。

2020年から2021年の百貨店業界は、新型コロナウイルス感染症の影響をもっとも強く受けた業種の一つです。一方、2022年3月から2023年4月現在の動向を見ますと、高額商材の需要が引き続き好調なことや、インバウンド需要の急回復など、着実に回復してることが分かります。

2022-23年の百貨店業界のニュース

2022-2023年の百貨店業界の主なニュースを厳選してピックアップしました。最近の百貨店業界の動向や現状を把握するのにご参考下さい。

百貨店業界ニュース 一覧

デジタル化を加速 ネットとリアル店舗の往来を促進

パソコンとオンラインショッピング

近年、百貨店各社は今後の動向を見据え、新しいビジネスモデルに着手してきました。場所貸しをメインにして安定的な収入を得る『脱百貨店型』や百貨店側が商品企画や品ぞろえを決め、従来の売り場をより強化する『売り場拡充型』などの戦略です。

ところが、新型コロナによって、百貨店を取り巻く環境は一転しました。コロナ禍により、リアル店舗への集客が困難となり、各社は戦略の練り直しを迫られています。

高島屋 meetzstore

ギフトに最適な商品を紹介するメディア型オンラインECサイト「Meetz STORE(ミーツストア)」

そんな中、各社がそろって注力しているのが『デジタル事業』です。近年、EC(ネット通販)の台頭で、消費者の購買行動が変化しています。百貨店はこの変化に十分な対応ができず、ECで後れを取っていましたが、コロナをきっかけにデジタル化を加速させています。

さらに、近年の百貨店はD2Cブランドとの協業を拡大し「売らない店」とも呼ばれる、ショーミングストア事業も進めています。店頭には商品の見本のみを置き、ECで購入してもらうスタイルです。

高島屋ではネット事業を成長分野と位置づけ、EC独自商品の開拓や販売チャネルの多様化でEC事業を拡大、2023年には売上500億円を目指しています。同社でも「売らない店舗」として、2022年4月に新宿高島屋内にショールーミングストア「Meetz STORE(ミーツストア)」をオープンさせたほか、化粧品を皮切りにネット専用倉庫を設けています。

三越伊勢丹HDは2020年6月、三越と伊勢丹のECを統合し利便性を向上させました。同年11月には『三越伊勢丹リモートショッピングアプリ』をリリース。オンライン上でチャットや接客、商品の購入から決済までを可能にした、新たなサービスを提供しています。

同百貨店は、20年4月に世界最大級のバーチャルイベントに参加しました。新たなショッピングの場として、バーチャルプラットフォーム『REV WORLDS(レヴワールズ)』を2021年3月に立ち上げています

一方、エイチ・ツー・オー・リテイリングは、投資計画を見直しデジタル事業の強化で人材育成を急いでいます。店頭の商品を来店せずに購入(決済)できる独自のリモートショッピングサービス「Remo Order(リモオーダー)」ではビジネスモデル特許を取得、2023年には250億円の売上を目指しています。

百貨店各社は、高品質な商品と品ぞろえの多さなど、百貨店の強みをいかしたECを展開しています。ネットと実店舗の往来を促す「デジタルとリアルの融合」を掲げ、積極的なデジタル化を進めています。

百貨店業界 ランキング&シェア

百貨店業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで百貨店市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

百貨店業界 売上高&シェアランキング(2021年-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 高島屋 7,611
2 セブン&アイ・HD 4,469
3 三越伊勢丹HD 4,183
4 J.フロントリテイリング 3,314
5 丸井グループ 2,093
6 エイチ・ツー・オーリテ… 1,314
7 近鉄百貨店 981
8 天満屋 863
9 東急 792
10 松屋 650

※セブン&アイ・HDはそごう・西武事業、エイチ・ツー・オーは百貨店事業、東急は東急百貨店事業の売上高です。シェアとは百貨店業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで百貨店市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ百貨店業界の詳細ランキングページにジャンプします。

その他のランキング

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百貨店業界 対象企業一覧

三越伊勢丹HD、高島屋、セブン&アイ・HD、エイチ・ツー・オーリテ…、J.フロントリテイリング、丸井グループ、近鉄百貨店、東急、東武鉄道、パルコ、小田急電鉄、天満屋、京王電鉄、松屋、井筒屋、名古屋鉄道、JR西日本、京阪HD、大和、さいか屋、ながの東急百貨店、遠州鉄道の計21社

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