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目次
グラフは百貨店業界の業界規模(対象企業の22計)の推移をグラフで表したものです。
百貨店業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の百貨店業界の業界規模(主要対象企業22社の売上高の合計)は3兆9,343億円となっています。
百貨店業界の過去11年間の業界規模の推移
百貨店業界の過去の推移を見ますと、2014年をピークに減少傾向にあり、2020年には大幅に減少しています。
経済産業省の商業動態統計によると、2020年の百貨店業界の年間売上高は、前年比25.5%減の4兆6,937億円となりました。
百貨店の売上高の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフは百貨店の売上高の推移をあらわしたものです。2020年は前年から1兆6千億円が減少し、6兆円から4兆円前半へと急落しています。売上高は4年連続でマイナスとなりました。
ここ数年、富裕層やインバウンド需要に支え得られてきた百貨店業界ですが、その恩恵を受けているのは、都市部や首都圏の店舗です。地方や郊外店は恒常的な赤字で閉店が相次いでおり、百貨店業界は縮小傾向にあります。
2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、百貨店の需要は急激に落込みました。下のグラフは2020年4月から2022年4月までの主な百貨店の月次売上高の推移ですが、2020年4月から5月は低い水準にあることが分かります。
主な百貨店の月次売上高の推移(出所:各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)
2020年はコロナウイルスの感染拡大により、臨時休業や時短営業を余儀なくされました。日本人の客足が鈍る中、好調だったインバウンド需要も蒸発してしまいました。一方、2020年半ばから2022年にかけては回復傾向が見られます。
続いて、百貨店業界の売上高ランキングを見ていきます。
2020年の百貨店業界売上高ランキングは、首位が三越伊勢丹HD、2位が高島屋、3位がセブン&アイ・HDでした。首位の三越伊勢丹HDと高島屋が売上高では一歩リードしています。
2020年の売上高の状況を見ますと、百貨店上位5社中5社が減収を記録しました。新型コロナウイルスの悪影響がランキングからも読み取れます。
2020年から猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、百貨店業界に多大な影響を及ぼしています。
2020年の百貨店の商品別の売上高は、全商品が前年割れを記録しました。とくに、百貨店全体の売上高の約3割を占める衣料品の落ち込みが激しく、昨年から8千億円の減少となりました。
百貨店 商品別の売上高の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
衣料品の内訳は「婦人服・子供服(31.7%減)」、「紳士服(30.9%減)」、「靴・バッグ類(27.4%減)」となり、婦人服や子供服が大きく縮小しています。
2020年の百貨店業界は、新型コロナウイルス感染症の影響を、もっとも強く受けた業種の一つです。感染予防の一環として、多くの百貨店は臨時休業や、時短営業を余儀なくされました。テレワーク等の移動制限に伴い、外出を控える消費者が増加したことで、衣料品や化粧品の購買数は大幅にダウンしています。
また、世界的な感染拡大により、頼みのインバウンド需要が消滅しました。化粧品や宝飾品などの高額品や免税品の売れ行きは、大きく減少しています。都市部の百貨店はインバウンド需要に支えられていた側面もあり、厳しい状況に置かれています。
近年、百貨店各社は今後の動向を見据え、新しいビジネスモデルに着手してきました。場所貸しをメインにして安定的な収入を得る『脱百貨店型』や百貨店側が商品企画や品ぞろえを決め、従来の売り場をより強化する『売り場拡充型』などの戦略です。
ところが、新型コロナによって、百貨店を取り巻く環境は一転しました。コロナ禍により、リアル店舗への集客が困難となった今、各社は戦略の練り直しを迫られています。
1つのアプリ内で会話から動画接客、決済が可能な三越伊勢丹のアプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」
そんな中、各社がそろって注力しているのが『デジタル事業』です。近年、EC(ネット通販)の台頭で、消費者の購買行動が変化しています。百貨店はこの変化に十分な対応ができず、ECで後れを取っていましたが、コロナをきっかけにデジタル化を加速させています。
三越伊勢丹HDは2020年6月、三越と伊勢丹のECを統合し利便性を向上させました。同年11月には『三越伊勢丹リモートショッピングアプリ』をリリース。オンライン上でチャットや接客、商品の購入から決済までを可能にした、新たなサービスを提供しています。
同百貨店は、20年4月に世界最大級のバーチャルイベントに参加しています。今後、新たなショッピングの場として、バーチャルプラットフォーム『仮想・伊勢丹 新宿本店』の立ち上げを進めています。
一方、高島屋では、ネットビジネスを”第3のまち”と位置づけ、EC事業を拡大。2023年には売上500億円を目指しています。エイチ・ツー・オー・リテイリングは、投資計画を見直しデジタル事業を強化しています。DXによるマーケティング強化を図り、ECの拡大やZoomを使用したライブコマースを展開しています。
百貨店各社は、高品質な商品と品ぞろえの多さなど、百貨店の強みをいかしたECを展開しています。ネットと実店舗の往来を促す「デジタルとリアルの融合」を掲げ、積極的なデジタル化を進めています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 三越伊勢丹HD | 8,160 | 20.7 | |
2 | 高島屋 | 6,808 | 17.3 | |
3 | セブン&アイ・HD ※ | 4,191 | 10.7 | |
4 | エイチ・ツー・オーリテ… ※ | 3,477 | 8.8 | |
5 | J.フロントリテイリング | 3,190 | 8.1 | |
6 | 丸井グループ | 2,208 | 5.6 | |
7 | 近鉄百貨店 | 2,183 | 5.5 | |
8 | 東急 ※ | 1,527 | 3.9 | |
9 | 東武鉄道 ※ | 1,192 | 3.0 | |
10 | パルコ | 1,122 | 2.9 |