百貨店業界の動向や現状、ランキングなど

百貨店の店内の様子

百貨店業界の動向や現状、ランキングなどを研究しています。データは2022-2023年。百貨店業界の過去の市場規模の推移をはじめ、百貨店の売上高の推移、ランキング、商品別売上高の推移や各社の取り組みなどを詳しく解説しています。

百貨店業界(2022-2023年)

百貨店業界の推移と基本情報

業界規模

2.1兆円

成長率

-22.0

利益率

4.7

平均年収

617万円

  • 16年
  • 17年
  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年
  • 22年

百貨店業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2019年から2022年にかけて大きな減少傾向にあります。

百貨店業界の動向と現状(2022-2023年)

2023年の売上高は5.9兆円 インバウンド需要も回復傾向

経済産業省の商業動態統計(2024年4月15日)によると、2023年の百貨店業界の年間売上高は、前年比8.1%増の5兆9,557億円となりました。

百貨店の売上高の推移

百貨店の売上高の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフは百貨店の売上高の推移をあらわしたものです。19年までは6兆円台をキープしていましたが、20年には4兆円半ばまで急落、翌年の21年は増加に転じたものの4兆円台に留まりました。一方、2022年には最悪期を脱し、2023年は5.9兆円と6兆円まであと一歩と回復を見せています

近年の百貨店の状況を振り返りますと、2020年-2021年は新型コロナによる影響を大きく受けたことで、百貨店の需要は急激に落込みました。2021年は年始から初秋にかけての業績低迷が響き低水準で推移しました。

2022年-2023年の百貨店業界の動向をみますと、完全な回復には至りませんが、最悪期は脱しました。行動制限の緩和によって外出の機会が増え、国内の客数、売上ともに増加しました。2022年10月以降は水際対策の緩和と円安の影響も加わり、インバウンド需要も昨年から増加傾向となりました。また、2023年に入り中国人観光客はコロナ前を下回るものの、アジア地域からの購買客数が増加し、免税品の売上も伸長しています。

百貨店の売上高は2015年をピークに減少傾向にあります。ここ数年は、富裕層やインバウンド需要に支え得られてきた百貨店業界ですが、その恩恵を受けているのは、都市部や首都圏の店舗です。地方や郊外店は恒常的な赤字で閉店が相次いでおり、百貨店業界は縮小傾向にあります。

そして、2022年10月には小田急百貨店新宿店本館が閉店、2023年1月末には、再開発が進む渋谷の東急百貨店本店も閉店、2023年9月にはセブン&アイ・HDが「そごう・西武」を売却するなど、都市部で展開する百貨店も状況が変わりつつあります。

下のグラフは2021年1月から2024年5月までの主な百貨店の月次売上高の推移です。

主な百貨店の月次売上高の推移

主な百貨店の月次売上高の推移(出所:各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)

2021年4月と2022年5月は前年の数値が低かったこともあり、大きく跳ね上がっていますが、全体的には100を上回る水準で推移しています。2021年後半から2024年5月までの百貨店売上高は順調であることが分かります。

続いて、百貨店業界の売上高ランキングを見ていきます。

百貨店業界 売上トップ5(2022-2023年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 三越伊勢丹HD 4,874
2 高島屋 3,688
3 J.フロントリテイリング 3,596
4 丸井グループ 2,178
5 エイチ・ツー・オーリテ… 1,570

※は百貨店関連の部門売上高。2021年の百貨店業界売上高ランキングは、首位が三越伊勢丹HD、2位が高島屋、3位がJ.フロントリテイリングでした。売上高で一歩リードする三菱伊勢丹は、国内20店舗、海外25店舗を展開、ほか金融業や不動産業も行います。

2022年の主な百貨店5社の業績は、三越伊勢丹HDが前年比16.5%増、高島屋が同47.0%減、J.フロントリテイリングが8.5%増、丸井GPが4.1各%、エイチ・ツー・オーリテイリングが19.5%増でした。

2022年-2023年は回復傾向へ 行動制限解除、インバウンドも解禁に

下落の矢印と転落している人

新型コロナによって多大な影響を受けた百貨店業界ですが、2022年3月以降は国内の行動制限が緩和、同年10月には海外からの水際対策が緩和され状況は一変しています。

まずは、2023年までの百貨店の商品別の売上高の推移をグラフで見てみます。すべてのカテゴリーで前年比増となり、なかでも富裕層による高額商品の購入が好調でした。全体では急落前の2019年の業績から約9割近い回復が見られています。

百貨店の商品別の売上高の推移

百貨店 商品別の売上高の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

2022年の百貨店業界は、コロナ流行から初の行動制限のないゴールデンウィークや夏休みを迎えました。入店客数、売上ともに大幅な回復となり、夏物衣料品やお中元のほか、帰省需要により菓子類が好調でした。また、富裕層を中心に高級ブランドや宝飾品の売れ行きが引き続き高伸しています。

2022年10月以降、訪日外客数は円安効果も加わり増加傾向です。百貨店の売上を牽引してきた中国人観光客は少ないものの、台湾や韓国、中国の他、マレーシアやシンガポール、タイなどの東南アジアからの来店客が多く見られます。都市部の百貨店はインバウンド需要に支えられていた側面もあり、今後も訪日外国人需要に期待がもたれています。

百貨店業界は、新型コロナウイルス感染症の影響をもっとも強く受けた業種の一つでした。一方、2022年3月以降の動向を見ますと、高額商材の需要が引き続き好調なことや、インバウンド需要の急回復など、着実に回復してることが分かります。

デジタル化を加速 非百貨店事業の育成に取り組む

パソコンとオンラインショッピング

近年、百貨店各社は今後の動向を見据え、新しいビジネスモデルに着手してきました。場所貸しをメインにして安定的な収入を得る『脱百貨店型』や、百貨店側が商品企画や品ぞろえを決め、従来の売り場をより強化する『売り場拡充型』などの戦略です。

ところが、新型コロナによって、百貨店を取り巻く環境は一転しました。コロナ禍により、リアル店舗への集客が困難となり、各社は戦略の練り直しを迫られました。

高島屋 meetzstore

ショーミングサイト「Meetz STORE(ミーツストア)」

こうした状況で、各社がそろって注力したのが『デジタル事業』です。近年、EC(ネット通販)の台頭で、消費者の購買行動が変化しています。百貨店はこの変化に十分な対応ができずECでは後れを取っていましたが、コロナをきっかけにデジタル化が加速していきます。

さらに、近年の百貨店はD2Cブランドとの協業を拡大、「売らない店」とも呼ばれる、ショーミングストア事業も進めています。店頭には商品の見本のみを置き、ECで購入してもらうスタイルです。

高島屋ではネット事業を成長分野と位置づけ、EC独自商品の開拓や販売チャネルの多様化でEC事業を拡大しています。同社でも「売らない店舗」として、2022年4月に新宿高島屋内にショールーミングストア「Meetz STORE(ミーツストア)」をオープンさせました。また、 商業施設の開発の他、金融事業の基盤つくりなど、収益力強化と事業拡大へを注力しています。

三越伊勢丹HDは2020年6月、三越と伊勢丹のECを統合し利便性を向上させました。同年11月には『三越伊勢丹リモートショッピングアプリ』をリリース。オンライン上でチャットや接客、商品の購入から決済までを可能にした新たなサービスや訪日外国人向けのアプリも開発中です。同社は百貨店事業を強化しつつ金融や不動産事業を強化。今後は百貨店以外の事業の利益が半分以上を占めることを目指しています

一方、エイチ・ツー・オー・リテイリングは、投資計画を見直しデジタル事業の強化で人材育成を急いでいます。店頭の商品を来店せずに購入(決済)できる独自のリモートショッピングサービス「Remo Order(リモオーダー)」ではビジネスモデル特許を取得しています。

百貨店各社は、高品質な商品と品ぞろえの多さなど、百貨店の強みをいかしたECを展開しています。ネットと実店舗の往来を促す「デジタルとリアルの融合」を掲げ、積極的なデジタル化を進めています。さらに、百貨店各社は今後を見据え、金融や不動産事業を強化しています。今後は百貨店以外の事業の利益を大幅に伸ばすことを目指しています

百貨店業界 ランキング&シェア

百貨店業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで百貨店市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

百貨店業界 売上高&シェアランキング(2022年-2023年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 三越伊勢丹HD 4,874
2 高島屋 3,688
3 J.フロントリテイリング 3,596
4 丸井グループ 2,178
5 エイチ・ツー・オーリテ… 1,570
6 近鉄百貨店 1,078
7 天満屋 851
8 東急 827
9 パルコ 617
10 東武鉄道 505

※シェアとは百貨店業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで百貨店市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ百貨店業界の詳細ランキングページにジャンプします。

その他のランキング

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百貨店業界 対象企業一覧

三越伊勢丹HD、高島屋、J.フロントリテイリング、丸井グループ、エイチ・ツー・オーリテ…、近鉄百貨店、天満屋、東急、パルコ、東武鉄道、松屋、京王電鉄、小田急電鉄、JR西日本、井筒屋、京阪HD、名古屋鉄道、大和、遠州鉄道、さいか屋の計20社

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