鉄鋼業界の業界レポート。データは2022-2023年。決算データを基に、鉄鋼業界の動向や現状をランキングやシェアとともに詳しく分析しています。世界の粗鋼生産量の推移やランキング、海外の大型再編の動き、中国やインドのトレンド、米中貿易摩擦の鉄鋼業界への影響などもあわせて確認して下さい。
業界規模
21.9兆円
成長率
12.5%
利益率
4.9%
平均年収
661万円
鉄鋼業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年までは下落傾向にありましたが、2021年から2022年にかけて大きく上昇しています。
世界の粗鋼生産量の推移(出所:worldsteel、グラフは業界動向サーチが作成)
2022年の世界の粗鋼生産量は、前年比4.2%減の18.7億トンでした。前年から0.9億トン減少し、過去最高の更新がストップしました。中国は前年割れとなったものの世界シェア5割強を占める一方で、日本は2018年にインドに抜かれ3位に低下しています。近年インドでは建築用鋼材の需要が伸びており、世界的な鉄鋼業界ではアジアがけん引役になっています。
日本の鉄鋼業界は中国とインドに越されてしまいましたが、日本勢が得意とするのが機能性の高い高級鋼材のハイテンです。ハイテンは軽量で強度が高いうえに加工がしやすい鋼板で、軽量化と高強度化が進む自動車への需要が高まっています。近年は韓国や中国企業も追い上げていますが、日本企業は最新鋭の超ハイテンの製造技術で差をつけています。
国内では今後も都市再開発や大阪万博、インフラの老朽化対策、災害による復興といった建設や設備関連の需要を見込んでおり、各企業は五輪後の需要を取り込もうと積極的な動きを見せています。
鉄鋼大手3社による2023年3月期の業績は、日本製鉄が前期比17.1%増、JFE HDが20.7%増、神戸製鋼が18.7%増と、3社そろって大幅増収を記録しました。エネルギーや原料価格の高騰により、鉄鋼メーカでは鋼材価格の引き上げに動いています。
2022-2023年の鉄鋼業界売上高ランキングを見ますと、首位は日本製鉄、2位にJEFHD、3位が神戸製鋼所、プロテリアル、大同特殊鋼と続きます。
鉄鋼業界でトップの日本製鉄は、粗鋼生産量では世界4位の企業です。鉄鋼事業は全売上高の9割を占め、海外事業比率は全体の約41%に上ります。
2023-2024年の鉄鋼業界の主なニュースを厳選してまとめました。最近の鉄鋼業界の動向や現状を把握するのにお役立て下さい。
鉄鋼業界では、国境を越えたM&Aが活発化しています。なかでも注目なのが中国企業同士の大型再編です。2019年6月に鉄鋼世界2位の宝武鋼鉄集団と16位の馬鉄集団が経営統合し、宝武鋼鉄集団を設立、2020年にはアルセロール・ミタルを抜き首位に浮上しました。2021年には7位の鞍山鋼鉄と19位の本渓鋼鉄が合併、世界粗鋼量ランキングで3位の企業が誕生しています。
さらに日本製鉄とアルセロール・ミタルは共同でインドのエッサールを買収し、成長著しいインド市場での事業拡大を目指します。一方で、インドのタタ・スティールとドイツのティッセン・クルップの鉄鋼事業の統合計画は白紙になるなど、鉄鋼業界は世界で激しい再編を繰り広げています。
世界の鉄鋼市場では、世界トップ10に中国企業が6社も入るなど中国勢が台頭しています。日本製鉄は国内の鉄鋼業界では断トツのトップ企業ですが、グローバル市場のランクは4位、首位の宝武鋼鉄集団の生産量に比べると生産量で2倍以上の差があります。
中国企業が勢いづくなかで各企業は生き残りをかけた動きを見せています。事業拡大で新たな高炉建設には巨額の資金や時間がかかるため、今後もグローバルな企業買収や事業提携が展開されることが予想されます。
世界鉄鋼協会(WSA)によると、2023年の世界鋼材需要は前年比2.3%増の18億2,230万トンと予測しています。また、2024年は1.7%増の18億5,400億トンに達すると見ています。製造業の回復が需要を牽引する一方で、世界的なインフレや高金利が鉄鋼需要の重しになるとの見通しを立てています。
世界の経済状況を見ますと、中国では経済活動再開する一方で、不動産市況が低迷しています。また、2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻、米国ではインフレ抑制による住宅ローンの金利上昇、新興国では資源やエネルギー高、欧州においてもインフレ率が10%を超えるなど、世界経済の低迷による影響で、世界的な鋼材需要の先行きに不透明感が高まっています。
さらに今後、中国経済が悪化すると中国国内での鉄鋼需要が下火になり、中国企業は安価な鉄鋼を海外へ輸出する可能性があります。そうなると世界的に鉄鋼価格が低下するため、市場の悪化が懸念されます。また、日本のメインの輸出先に中国製品が普及すれば、日本企業は大きな影響を受ける可能性があります。
国内の大手鉄鋼メーカーは、すでに海外事業比率35~40%を占める海外事業を今後、さらに拡充することを掲げています。国内市場は都市部での再開発などの需要はありますが、人口減少などの影響で内需は縮小する見込みです。長期的にはインドなどのアジア地域が成長するとして、高級鋼材やEV向け無方向性電磁鋼板などの輸出拡大、現地での生産体制の強化に動いています。
鉄鋼業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで鉄鋼市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 日本製鉄 | 79,755 | ||
2 | JFEHD | 52,687 | ||
3 | 神戸製鋼所 | 24,725 | ||
4 | プロテリアル | 11,189 | ||
5 | 大同特殊鋼 | 5,785 | ||
6 | 山陽特殊製鋼 | 3,938 | ||
7 | 東京製鐵 | 3,612 | ||
8 | 共英製鋼 | 3,557 | ||
9 | トピー工業 | 3,344 | ||
10 | 愛知製鋼 | 2,851 |
※シェアとは鉄鋼業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで鉄鋼市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ鉄鋼業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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日本製鉄、JFEHD、神戸製鋼所、プロテリアル、大同特殊鋼、山陽特殊製鋼、東京製鐵、共英製鋼、トピー工業、愛知製鋼、丸一鋼管、日本製鋼所、合同製鐵、淀川製鋼所、日本冶金工業、中山製鋼所、大和工業、三菱製鋼、栗本鐵工所、大阪製鐵、新日本電工、東京鐵鋼、中部鋼鈑、日本金属、エンビプロ・HD、日本精線、モリ工業、新家工業、日本高周波鋼業、メタルアートなどの計45社
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