特殊鋼業界の動向や現状、ランキング&シェアなど

特殊鋼の製造工程

特殊鋼業界の動向や現状、ランキング・シェアなどを研究しています。データは2022-2023年。特殊鋼業界の過去の業界規模の推移をはじめ、特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量の推移グラフと売上高ランキング、各社の新素材への取り組みなどを解説しています。

特殊鋼業界(2022-2023年)

特殊鋼業界の推移と基本情報

業界規模

1.7兆円

成長率

9.9

利益率

3.1

平均年収

679万円

  • 12年
  • 13年
  • 14年
  • 15年
  • 16年
  • 17年
  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年
  • 22年

特殊鋼業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年に大きく落ち込みましたが、2022年には増加傾向になっています。

特殊鋼業界の動向と現状(2022-2023年)

2022年の特殊鋼は9%減 コスト増で相次ぐ値上げへ

下のグラフは、特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量の推移を示しています。経済産業省の生産動態統計年報(2023年6月公表)によると、2022年の特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量は、前年比9%減の1,688万トンでした。

特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量の推移

特殊鋼熱間圧延鋼材の生産量の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見ますと、2020年の大幅下落から、2021年には反発して増加に転じています。一方、2022年は再び下落に転じており、4年連続で2千万トンを割り込んでいます。

2022年の特殊鋼業界は、昨年好調であった自動車向けは、部品や半導体不足による自動車減産の影響を受けましたが、一部企業においては自動車鋳造やEV関連の需要が前年比プラスとなりました。また、在庫調整により半導体や電子関連、建設や産業機器向けが縮小しています。

2022年の販売数量は縮小しましたが、材料費や電力価格などのコスト上昇分を価格に反映したことが業績に寄与し、多くの企業が増収増益を記録しました。

特殊鋼とは、様々な特性を有する合成金属です。鉄に添加する元素の種類や量、タイミングに応じて性質が決まります。ニッケルやクロム、モリブデン、銅などの元素の添加により、熱や錆び、摩擦や摩耗への強さ、硬さや強靭さ、加工がしやすいなどの性質を持ちます。

特殊鋼はおもに3つに大別されます。「構造用鋼」は、強さを保持する目的で使用され、土木や建築、車両などに利用されます。「工具鋼」は切削工具、金属やプラスチックを成形する金型に、「その他の特殊用途鋼」は幅広い分野で使用されており、種類もステンレス鋼、耐熱鋼、バネ鋼などさらに細かく分類されます。

特殊鋼は、輸送機器や産業、建設、工作機械、IT、宇宙開発、プラントなど幅広く利用されています。そのため、自動車業界や航空機、造船業界などの動向に影響を受けやすい傾向があります。

特殊鋼業界 売上トップ5(2022-2023年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 大同特殊鋼 5,785
2 山陽特殊製鋼 3,938
3 プロテリアル 2,879
4 愛知製鋼 2,851
5 三菱製鋼 1,705

※は特殊鋼製品事業の売上高。特殊鋼業界の2022-2023年の売上高ランキングを見ますと、首位が大同特殊鋼、2位が山陽特殊鋼、3位がプロテリアル(日立金属)、愛知製鋼、三菱製鋼と続きます。トップの大同特殊鋼は、自動車を中心に航空機や造船、産業機械などに特殊鋼材を供給している世界最大級の特殊鋼専業メーカーです。

2021-2022年の主な特殊鋼メーカーの業績は、上位5社中5社が増収となりました。

成長分野に投資へ 各社「新素材や高機能材」の開発に注力

研究開発の様子

特殊鋼業界では、鉄スクラップや合金鉄、燃料費の価格上昇に加え、海外勢や他素材との競争激化など厳しい状況に置かれています。また、自動車のEV化やカーボンニュートラルなど、特殊鋼業界を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。

こうした環境の変化に伴いニーズの多様化や高機能化の要求は高まっており、新素材の開発スピードは年々加速しています。特殊鋼業界では中長期的に大きな成長が見込める分野への投資や、高機能材の開発に注力しています。

世界最大級の特殊鋼メーカーである大同特殊鋼は、2018年発表の中期経営計画で「構造材料から機能材料へ」というスローガンを掲げました。自動車や建機に用いる構造用鋼から、成長性のある「機能材料・磁性材料」事業にシフトを進めており、2020年には同事業で売上トップとなりました。

大同特殊鋼の「機能材料・磁性材料」事業

大同特殊鋼の「機能材料・磁性材料」事業

また、近年はEVのモーターに組み込む『EV用特殊磁石』の需要が増え、高性能磁石の開発競争が激化しています。同社では、2020年5月に中津川先進磁性材料開発センターを開設し、磁石の研究開発体制の強化で成長分野へのビジネス拡大を図っています。

高級工具鋼や磁性材で世界トップクラスの日立金属では「注力事業の市況回復取り込みとモノづくりの再強化」を掲げ、特殊鋼製品の「工具鋼・産機材」の強化や高付加価値製品へのシフトを図っています。また、パワーエレクトロニクス事業も成長事業としており、SiN基盤やSiC基盤など、EVの効率化に貢献する機能部材の研究開発を進め、EV時代の成長柱へとしていきます。

軸受鋼の生産高で国内首位の山陽特殊製鋼は、技術先進性の更なる拡大を掲げ、世界的な成長が見込まれる「EV、風力発電、鉄道、水素社会」などの分野で、高機能商品の開発に注力しています。また、人口減少や高齢化に伴う内需の減少を見据え、海外市場での収益力強化を図ります。

2021年の特殊鋼業界は、コロナによる減少から一転して大幅増となりました。幅広い分野で売上数量が回復しています。現在、特殊鋼各社は今後の成長分野への投資を行っています。直近では、原材料価格など不透明な要因もありますが、コロナ後の世界的な需要の反発と、今後の新分野の成長に期待したいところです。

特殊鋼業界 ランキング&シェア

特殊鋼業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで特殊鋼市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

特殊鋼業界 売上高&シェアランキング(2022年-2023年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 大同特殊鋼 5,785
2 山陽特殊製鋼 3,938
3 プロテリアル 2,879
4 愛知製鋼 2,851
5 三菱製鋼 1,705
6 日本高周波鋼業 445
7 東北特殊鋼 215
8 不二越 164

※プロテリアルは特殊鋼製品事業、不二越はその他事業の売上高です。シェアとは特殊鋼業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで特殊鋼市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ特殊鋼業界の詳細ランキングページにジャンプします。

その他のランキング

関連リンク

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特殊鋼業界 対象企業一覧

大同特殊鋼、山陽特殊製鋼、プロテリアル、愛知製鋼、三菱製鋼、日本高周波鋼業、東北特殊鋼、不二越の計8社

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