鉄道車両製造業界の動向や現状、ランキング、シェアなどを解説しています。データは2021-2022年。鉄道車両業界の過去の市場規模の推移をはじめ、鉄道車両と同部品の出荷額の推移グラフ、2021年のコロナの影響と世界ランキング、再編の動向などを解説しています。
業界規模
1.1兆円
成長率
-1.0%
利益率
5.6%
平均年収
662万円
鉄道車両業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年までは緩やかな減少傾向にありましたが、2021年には増加に転じています。
経済産業省の工業統計調査(2021年8月31日公表)によると、2019年の鉄道車両の出荷額は、前年比8.5%増の3,848億円、鉄道車両部品は9.7%減の3,518億円、鉄道車両+鉄道車両部品の合計は前年比1.1%減の7,366億円でした。
鉄道車両と部品の出荷額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
鉄道車両および鉄道車両部品の出荷額は、年によって大きく変動しており、過去5年の動向は全体的には横ばいで推移しています。
2021-2022年の鉄道車両業界の動向を見ますと、国内市場では、新型コロナによる感染拡大で鉄道利用者の減少から、鉄道事業者の減便や設備投資の見直しを受け、国内の車両受注は減少しました。一方、海外市場においては、市況の回復や脱炭素へ向けた動きにより鉄道車両の受注は堅調に推移、円安も功を奏しました。
鉄道車両業界は、鉄道車両メーカーと鉄道部品メーカーに分けられます。鉄道車両メーカーは日立製作所と川崎重工業のシェアが高く、事実上の2強となっています。部品メーカーは駆動装置、制御機器、パンタグラフ、信号、車輪など各分野ですみ分けがされています。
鉄道車両は鉄道業界の動向の影響を色濃く受け、鉄道各社の業績いかんで鉄道車両業界の動向は変わります。
直近の動向では、2020年以降は新型コロナの影響により、鉄道を利用する人が減少。鉄道会社の業績は一気に低迷しました。2022年に入り鉄道需要は徐々に回復が見られていますが、鉄道車両は受注から売上まで時間を要し、受注残高も高いことから、今後、コロナによる鉄道需要の低迷が長引けば、業績悪化は免れません。コロナの影響は限定的と見られていますが、依然として注意を要する状況が続きます。
※は鉄道車両関連の部門売上高。首位が日立製作所、2位が川崎重工、3位が日本車両製造と続きます。売上高では日立製作所が2位以下を大きく引き離しており、業界をけん引する形です。
2021-2022年の鉄道車両業界の業績を見ますと、5社中2社が増加し2社が減少、横ばいは1社でした。特に日立製作所は14.7%増、総合車両製作所は29.0%増と、前年から一転して大幅増収となりました。
UNIFE(欧州鉄道産業連盟)によると、世界の鉄道産業の市場規模は2025年から2027年までの平均で2,110億ユーロにのぼり、中東やアフリカを筆頭に全世界で年率3.0%の成長が続くとの見通しを立てました。
コロナの影響により、実際の成長が鈍化する可能性はありますが、新興国や、欧米や日本などの更新需要の増加により、中長期的には世界の鉄道車両市場は成長していきます。
2020年の世界の鉄道車両業界の売上高ランキングを見ますと、首位が中国の「中国中車」、2位がドイツの「シーメンス」、3位がフランスの「アルストム」でした。ランキング上位3社は国内首位の日立製作所と比べても、売上高がはるかに大きいことが分かります。
ランキングで注目すべきは世界首位の「中国中車」です。中国中車は2015年に中国南車と中国北車が合併して誕生しました。売上高で他社を圧倒しており、アフリカやアジアで大型受注を増加。今後も価格競争力を武器に、本格的に世界を席巻する恐れがあります。
こうした現状に危惧を抱いたのは、ドイツのシーメンスとフランスのアルストムです。両社は2017年に経営統合を発表したものの、欧州委員会の反対で破談となりました。しかしながら一方で、2020年2月に今度はアルストムがボンバルディアを買収することを発表。2021年には世界2位の鉄道車両メーカーが誕生します。
世界の鉄道車両業界は今後、拡大していくことが予想されます。再編もさらに活発化するでしょう。一方で、日本のメーカーはこうした動きに乗り遅れた感があり、巻き返しをはかる必要があります。
国内ではバブル期に導入した車両が更新時期を迎えるため一定の需要がありますが、その後の成長戦略を描くことはできません。信頼と技術力を武器に、今こそ積極的に世界へ進出してゆきたいところです。
鉄道車両業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで鉄道車両市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 日立製作所 ※ | 6,283 | ||
2 | 川崎重工業 ※ | 1,266 | ||
3 | 日本車輌製造 | 940 | ||
4 | 総合車両製作所 | 641 | ||
5 | 日本信号 ※ | 488 | ||
6 | 京三製作所 ※ | 425 | ||
7 | 近畿車輛 | 393 | ||
8 | ナブテスコ ※ | 257 | ||
9 | 大同信号 | 221 | ||
10 | 新潟トランシス | 202 |
※日立製作所は鉄道ビジネスユニット、川崎重工業は車両事業、日本信号は交通運輸インフラ事業、京三製作所は信号システム事業、ナブテスコは鉄道車両用機器事業の売上高です。シェアとは鉄道車両業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで鉄道車両市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ鉄道車両業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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