ROLLING STOCK
目次
グラフは鉄道車両業界の業界規模(対象企業の12計)の推移をグラフで表したものです。
鉄道車両業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の鉄道車両業界の業界規模(主要対象企業12社の売上高の合計)は11025億円となっています。
鉄道車両業界の過去5年間の業界規模の推移
鉄道車両業界の過去の推移によると、2016年から2018年までは増加傾向にありましたが、2018年から2020年にかけては減少が見られます。
経済産業省の工業統計調査によると、2019年の鉄道車両の出荷額は、前年比8.5%増の3,848億円、鉄道車両部品は9.7%減の3,518億円、鉄道車両+鉄道車両部品の合計は前年比1.1%減の7,366億円でした。
鉄道車両と部品の出荷額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
鉄道車両および鉄道車両部品の出荷額は、年によって大きく変動しており、過去5年の動向は全体的には横ばいで推移しています。
鉄道車両業界は、鉄道車両メーカーと鉄道部品メーカーに分けられます。鉄道車両メーカーは日立製作所と川崎重工業のシェアが高く、事実上の2強となっています。部品メーカーは駆動装置、制御機器、パンタグラフ、信号、車輪など各分野ですみ分けがされています。
鉄道車両は鉄道業界の動向の影響を色濃く受け、鉄道各社の業績いかんで鉄道車両業界の動向は変わります。
直近の動向では、2020年は新型コロナの影響により、鉄道を利用する人が減少。鉄道会社の業績は一気に低迷しました。鉄道車両は受注から売上まで時間を要し、受注残高も高いことから、コロナの影響は限定的と見られていますが、今後、コロナによる鉄道需要の低迷が長引けば、業績悪化は免れません。依然として注意を要する状況が続きます。
UNIFE(欧州鉄道産業連盟)によると、世界の鉄道産業の市場規模は2021年から23年までの平均で1,920億ユーロ(約25兆円)にのぼり、中東やアフリカを筆頭に全世界で年率2.7%の成長が続くとの見通しを立てました。
コロナの影響により、実際の成長が鈍化する可能性はありますが、新興国や、欧米や日本などの更新需要の増加により、中長期的には世界の鉄道車両市場は成長していきます。
2020年の世界の鉄道車両業界の売上高ランキングを見ますと、首位が中国の「中国中車」、2位がドイツの「シーメンス」、3位がフランスの「アルストム」でした。ランキング上位3社は国内首位の日立製作所と比べても、売上高がはるかに大きいことが分かります。
ランキングで注目すべきは世界首位の「中国中車」です。中国中車は2015年に中国南車と中国北車が合併して誕生しました。売上高で他社を圧倒しており、アフリカやアジアで大型受注を増加。今後も価格競争力を武器に、本格的に世界を席巻する恐れがあります。
こうした現状に危惧を抱いたのは、ドイツのシーメンスとフランスのアルストムです。両社は2017年に経営統合を発表したものの、欧州委員会の反対で破談となりました。しかしながら一方で、2020年2月に今度はアルストムがボンバルディアを買収することを発表。2021年には世界2位の鉄道車両メーカーが誕生します。
世界の鉄道車両業界は今後、拡大していくことが予想されます。再編もさらに活発化するでしょう。一方で、日本のメーカーはこうした動きに乗り遅れた感があり、巻き返しをはかる必要があります。
国内ではバブル期に導入した車両が更新時期を迎えるため一定の需要がありますが、その後の成長戦略を描くことはできません。信頼と技術力を武器に、今こそ積極的に世界へ進出してゆきたいところです。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 日立製作所 ※ | 5,477 | 49.7 | |
2 | 川崎重工業 ※ | 1,332 | 12.1 | |
3 | 日本車輌製造 | 994 | 9.0 | |
4 | 総合車両製作所 ※ | 673 | 6.1 | |
5 | 日本信号 ※ | 511 | 4.6 | |
6 | 近畿車輛 | 494 | 4.5 | |
7 | 京三製作所 ※ | 475 | 4.3 | |
8 | ナブテスコ ※ | 294 | 2.7 | |
9 | 新潟トランシス ※ | 236 | 2.1 | |
10 | 大同信号 | 229 | 2.1 |