鉄道業界のレポート。データは2022-2023年。売上高ランキングや各社シェア、動向や現状を詳しくレポートしています。鉄道業界の市場規模の推移やJR、私鉄の旅客数の推移、私鉄6社の非鉄道事業の割合や人口減少社会を見据えた新たな取り組みなど最新の情報を提供しています。
業界規模
14.5兆円
成長率
0.1%
利益率
1.6%
平均年収
571万円
鉄道業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年に大幅に減少となりました。2021年は若干の反発、2022年は大幅増で推移しています。
2022年の鉄道業界はJR、私鉄ともに2年連続で増加しました。国土交通省の「鉄道輸送統計年報(2023年7月公表)」によると、2022年度の鉄道旅客数は前年比12.0%増の210.5億人でした。
2022年度のJRの旅客数は前年比11.0%増の78.4億人、私鉄の旅客数は前年比12.1%増の131.6億人でした。鉄道全体の旅客数は2022年時点で、コロナ前の83%の水準にまで回復しています。
JRと私鉄の旅客数の推移(出所:国土交通省、グラフは業界動向サーチが作成)
上のグラフはJRと私鉄の旅客数量の推移を示したものです。2011年度から2019年度まで緩やかな増加傾向にありましたが、2020年度はコロナの影響により大幅減となりました。2021年度から2022年度は経済再開の動きから、増加に転じるなど回復に向かっています。
鉄道業界のトップ3を占めるのがJR東日本、JR東海、JR西日本である「JR本州3社」です。鉄道各社は、不動産や沿線開発など様々な事業で収益を上げていますが、JR本州3社と東京メトロは鉄道事業の売上割合が高く、コロナ後の業績回復は私鉄よりも苦戦しています。
一方、JR東海は1兆円規模売上高で、JRグループの中では新幹線の売上高が突出しています。JR西日本も1兆円規模の売上高で、近畿、北陸、中国、山陰とエリアが広域なうえに、北陸新幹線の需要が伸びたことも大きなアドバンテージとなっています。
私鉄トップは東急、2位が近鉄グループで双方ともに1兆円弱の売上高です。一方で、私鉄各社の鉄道事業の売上高は8~23%と低く、「非鉄道事業」をメインとして稼いでいます。
近年の鉄道業界の動向を見ますと、2019年までは堅調でしたが、2020年以降はコロナの影響で状況は一転しました。渡航禁止や外出自粛、テレワークの普及から鉄道の利用率が激減しました。一方、2021年以降は経済再開の動きもあり、各社業績は回復傾向にあります。
直近の鉄道輸送統計の月次をみますと、2022年半ばから2023年5月にかけてJR、私鉄ともに旅客数量は一段と増加傾向です。2022年10月より水際対策が緩和、2023年5月には新型コロナの位置づけが「5類感染症」に移行したことで、訪日外外国人や国内での人の往来も増加し、鉄道需要が回復しています。一方、ビジネス利用や定期券の戻りは遅いのが現状です。
2022-2023年の鉄道業界の売上高ランキングを見ますと、首位はJR東日本、近鉄グループ、JR東海、JR西日本と続きます。2022年は私鉄の近鉄グループHDが、近鉄エクスプレスを連結子会社化したことにより大幅増収となり2位に浮上しています。
2022-2023年は、大手鉄道5社ともに増収です。鉄道会社46社中38社が増加、8社が横ばいと業界全体では増加となりました。
2023-2024年の鉄道業界の主なニュースを厳選してまとめました。直近の鉄道業界の動向を把握するのにご参考下さい。
近年の鉄道各社は「非鉄道事業」に力を入れており、特に、私鉄の非鉄道事業の強化はJRに比べて著しいと言えます。主に不動産、流通、運輸、レジャーやリゾートなどの事業を強化しており、「非鉄道事業」の売上比率は高くなっています。
私鉄6社の非鉄道事業の売上高割合(各社有価証券報告書より業界動向サーチが作成)
私鉄各社は起点駅ではオフィスビルや百貨店、ショッピングセンター、駅ナカ、駅周辺にはマンションを展開しています。沿線上には戸建てやマンション、スーパー、終点駅にはホテルやレジャー施設を展開しています。その他にもバスの運行や旅行業、クレジットカードや交通系ICカードなど様々な事業が展開されています。
これら非鉄道事業は鉄道事業の売上にも貢献しています。開発で沿線の価値を高めて人を集めることで、鉄道の利用者が増えます。さらに鉄道の利便性を高めるため、他社の鉄道と相互直通や相互乗り入れなども増えています。
渋谷駅再開発の一つである東急スクランブルスクエアの商業施設は東急電鉄、JR東日本、東京メトロが共同で開発するなど、ライバル企業と組んだ地域開発も行われています。
鉄道各社は新しい取り組みも増えており、民泊の参入や農業の第6次産業の支援なども手掛けています。さらに2020年3月からは、東急電鉄が電車やバスの交通と映画、食事を合わせたサブスクリプション型サービス「サブスクパス」を開始、2021年4月には定額で全国110以上の施設に止まり放題の「tsugitsugi」も展開しています。
今後、国内では少子高齢化による人口減少が見込まれているため、鉄道事業の収益減少が懸念されています。
国内の人口減少を見据え、大手鉄道会社では海外展開を進めており、マンション建設など不動産事業にも着手しています。JR東海では米国でリニア新幹線を展開中で、JR東日本はインドで鉄道事業を展開しています。なかでも経済成長著しい東南アジアでは交通渋滞が問題となっているため、今後東南アジアでの鉄道需要は高くなると予想されます。
国内では今後も拠点駅の開発や新幹線の開業が予定さています。注目の「高輪ゲートウェイ駅」は2020年3月に、同年6月には東京駅に駅ナカ最大規模の「グランスタ東京」が開業しました。鉄道では2022年9月に武雄温泉-長崎間を結ぶ「西九州新幹線」が開通しました。今後は、2023年度に北陸新幹線、2030年度には北海道新幹線が開通を予定しています。一方、リニア中央新幹線の2027年開業予定は延期となっています。
国内では沿線の活性化を目的に、モビリティーサービス(MaaS)の参入が増えつつあります。MaaSとは利用者の目的に合わせた複数の移動手段を組み合わせるサービスで、検索から予約、決済までのすべてが行えます。さらに高齢者の多い地域では移動の困難解消へ向けた郊外型サービスの提供を始めています。
鉄道業界の多角化は沿線の価値を改善し、鉄道の利便性や利用率を高めてくれます。人口減少による業績の悪化が懸念される現在では、同業のみならずあらゆる業種との連携が今後も増えていくとみられます。
鉄道業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで鉄道市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | JR東日本 | 24,055 | ||
2 | 近鉄グループHD | 15,610 | ||
3 | JR東海 | 14,002 | ||
4 | JR西日本 | 13,955 | ||
5 | 阪急阪神HD | 9,683 | ||
6 | 東急 | 9,312 | ||
7 | 東武鉄道 | 6,147 | ||
8 | 名古屋鉄道 | 5,515 | ||
9 | 西日本鉄道 | 4,946 | ||
10 | 西武HD | 4,284 |
※シェアとは鉄道業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで鉄道市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ鉄道業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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