建設業界の2021年版(2020-21年)の業界レポート。現状や動向、ランキング、売上高シェアなどを多数掲載しています。市場規模や建設投資額の推移をはじめ、現在の建設業界の動向や人手不足などの課題をグラフをまじえて分かりやすく解説しています。
建設業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2019年までは増加傾向にありましたが、2020年には減少に転じています。業界規模は大きく、日本経済に大きな影響を与える市場であることが分かります。平均年収が高いのも特徴的です。
国土交通省によると、2020年の建設投資額(見込み)は前年比2.5%減の60兆9,000億円、2021年の建設投資額(見通し)は前年比2.9%増の62兆6,500億円でした。
国内の建設投資額の推移(国土交通省、グラフは業界動向サーチが作成)
2020年の政府投資は前年比5.4%増の23兆9,500億円、民間投資は7.1%減の36兆9,500億円の見込みで、2021年の政府投資は前年比2.4%増の24兆5,300億円、民間投資は3.2%増の38兆1,200億円になる見通しです。
2020年は建設投資額は前年に比べて落ち込む見込みで、民間投資の減少が大きく響きました。2021年の建設投資額は政府投資、民間投資ともに増加する見込みです。
近年の建設業界は東日本大震災の復興需要、国土強靭化計画、東京五輪をはじめとした首都圏の再開発、ホテル需要を背景に好調な推移を見せていました。バブル崩壊、リーマンショックなど長期にわたり低迷していた建設業界にとって、好景気・好循環期といえる状況でした。
2020年は新型コロナウイルスの影響で、建設業界の成長にブレーキがかかりました。好調だった訪日外国人のホテル需要も蒸発し、特需だった東京五輪も終了しました。今後も首都圏を中心とした再開発やインフラ整備など依然として需要は底堅いですが、今までのような強い好況感は感じられません。
2020年-2021年のゼネコン大手の業績を見ますと、鹿島建設の売上高前年比で5.2%減、大林組が同14.8%減、大成建設が15.5%減、清水建設は14.2%減、竹中工務店は8.5%減、長谷工コーポレーションは4.3%の減少でした。2020年-2021年の主要建設会社63社中44社が減収を記録しています。
近年、好調に拡大を続けてきた建設業界ですが、最近では人手不足の問題を抱えています。
建設業界は国や地方自治体、民間から大手ゼネコンが仕事を受注し(元請け)、それを各専門ごとに1次下請け、2次下請けへと割り振ります。実際の工事は下請け企業が行い、大手ゼネコンは予算や品質、工程や安全の管理を行います。
現在の建設業界では、施工管理担当者や現場所長などの管理を行う側の人材と、工事を行う側の人材いずれもが不足している状況となっています。人への依存度が高い建設業界では人手不足は深刻な問題であり、案件を受注しても工事に取り掛かれない「手持ち工事(繰越高)」が増加しています。
建設業の就業者・雇用者の推移(総務省統計局、グラフは業界動向サーチが作成)
上のグラフは直近の建設業の就業者の推移を示したものです。グラフによると、建設業の就業者が2008年から2020年にかけて緩やかに減少しているのが分かります。
日本建設業連合会によると、上記のうち建設現場で働く「技能労働者」は約330万人との試算がありますが、こちらも就業者同様、頭打ちが続いています。さらに、技能労働者の高齢化も問題となっており、若い人の担い手確保が課題となります。
こうした動向を受け、建設業界では若手の技能労働者の確保に向け業界を挙げた取り組みを本格化させています。働き方改革やキャリアアップシステムの構築、省人化、オープンシステムを活用した次世代生産システムの開発など新たな取り組みが始まっています。
建設業界は「東京五輪までは好況」との声が多く聞かれましたが、2021年夏に東京五輪は終了しました。一部では五輪後の落ち込みを懸念する声も聞かれますが、今後の建設業界の行方はどうなるのでしょうか?
結論から申しますと、五輪後もしばらくは堅調な推移を見せるとの見方が大勢です。五輪関連施設の建設が一服しても、首都圏を中心とした再開発、国土強靭化関連の公共投資の増加、大阪万博や統合型リゾート(IR)に伴う近畿圏の再開発、リニア新幹線需要などがあり、当面の需要は底堅いと言えるでしょう。
大手建設5社の手持ち工事(繰越高)の比較(各社有価証券報告書より)
上のグラフは大手ゼネコン5社の手持ち工事(繰越高)の前期と次期を比較をしたものです。手持ち工事(繰越高)とは、契約済みであるが、未着手の工事に相当する金額です。手持ち工事は次期の売上高に直結するため、時期決算の業績を予測する指標となります。2021年は上位5社中2社が増加の見通しなっています。
建設業界はしばらくは堅調な推移を見せるとの見方ですが、直近では各社の受注競争が激しくなっています。受注競争が激しくなると採算性や収益性の悪化を招きます。さらに長期的には、少子高齢化による人口減少の影響を受けることになり、決して楽観できる状況ではありません。
比較的順調な今だからこそ、将来を見据えた新たな投資が必要です。こうした動向を受け、ゼネコン各社は海外事業の強化や再生エネルギー分野への進出、次世代建設生産システムの構築など新たな分野への投資を進めています。
建設業界内における売上高及びシェアのランキングをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収をランキング形式でまとめました。各々のランキングを比較することでリース市場内のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 鹿島建設 | 19,071 | 12.1 | |
2 | 大林組 | 17,668 | 11.3 | |
3 | 大成建設 | 14,801 | 9.4 | |
4 | 清水建設 | 14,564 | 9.3 | |
5 | 竹中工務店 | 12,377 | 7.9 | |
6 | 長谷工コーポレーション | 8,094 | 5.2 | |
7 | 前田建設工業 | 6,780 | 4.3 | |
8 | 戸田建設 | 5,071 | 3.2 | |
9 | 五洋建設 | 4,710 | 3.0 | |
10 | 熊谷組 | 4,502 | 2.9 |
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