海運業界が抱えている課題についてお話します。この記事では、今後の海運業界に大きな影響を与える重要な課題を3つご紹介してきます。
2021年現在、海運業界が抱えている課題は以下のとおりです。
海運業界が抱えている課題の1つが、環境問題、脱炭素化です。船舶の燃料は長年、重油や石油由来を使用しています。そのため、地球温暖化や大気汚染の原因とされる物質が排出されており、環境負担への配慮が義務づけられています。
2020年1月からは、燃料に含まれる硫黄分濃度の低減規制が実施されています。さらに、国際海事機関(IMO)では、2030年時点で運航にかかる温室効果ガスの排出量を40%削減(08年比)、50年には50%以上を削減(同比)することを目標に掲げています。
海運業界が抱えている課題の2つ目が、船員不足と高齢化問題です。なかでも若手の船員が不足し、現役船員の高齢化が指摘されています。
一般的な職業に比べ平均年収は高めですが、特殊な業種であることから離職率が高いと言われています。船員が不足することで労働者への負担増加、さらに安全性の低下や物流の停滞など様々な影響を及ぼす可能性があるため、海運業界では船員の不足に危機感を募らせています。
海運業界の3つ目の課題が、低い利益率とマイナス成長率です。近年の海運業界では、船腹(貨物積載スペース)の供給過剰が運賃上昇の足枷となっており、低い利益水準から抜け出せずにいます。
また、環境問題対策もコストを増大させる要因の一つです。排ガス洗浄装置は装置代が負担となるだけでなく、同装置を置くことで積載スペースが狭くなるため、貨物量が減少します。そして規制適合油は従来の燃料に比べ割高になるなど、大幅なコストの増加が避けられない状況です。
主な船舶のコストには、燃料費や運河通行料、湾港料などの「航海費」、メンテンナンス費用や人件費などの「船舶運営費」が挙げられます。