ガス業界の動向、現状、ランキング、売上高シェアなどを研究しています。データは2022-2023年。過去のガス業界の市場規模の推移をはじめ、家庭用、工業用などのガス販売量の推移、季節要因の影響やガスの自由化、エネファームの動向、各社の取り組みと今後の行方などを解説しています。
業界規模
7.8兆円
成長率
18.5%
利益率
3.7%
平均年収
608万円
ガス業界の業界規模の推移を見ますと、2022年は大幅に増加しています。
エネルギー庁の最新の調査データ(2023年2月公表)によると、2022年の都市ガスの販売量は前年比2.0%増の1兆7,327億メガジュール(MJ)でした。増加幅は小さいものの2年連続の増加となり、水準もコロナ前まで戻しています。ガス種別では、家庭用は同1.8%減の4,046億MJ、商業用は6.5%増の1,616億MJ、工業用が2.6%増の10,313億MJ、その他は4.2%増の1,351億MJとなっています。
製品ガス販売量の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
都市ガスの主な需要は工業用が大きなシェアを占めており、全体の約60%にのぼります。また、 6年ぶりに減少に転じた家庭用ガスは全体の23%、5年ぶりに増加した商業用は9%ほどになります。
2022年-2023年のガス業界の動向を見ますと、原料費調整制度による都市ガスの売上単価上昇やLNG販売価格の高騰などが、収益を押し上げました。一方で、家庭用や工業用(発電専用)は高気温の影響から、需要は昨年から縮小しています。また、海外事業においてはLNG価格の高騰および円安の恩恵を受け、米国や豪州での事業で収益が増加しました。
近年のガス業界の状況においては、2020年は新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し工業用や商業用の需要が減少、一方で家庭用の需要が伸長しました。2021年は一転して、行動制限の緩和に伴い工業用ガスの需要が増加。2022年は商業用が伸びており、3年間で状況が変わってきているのが分かります。
近年では天然ガスの輸入量が増加するなか価格が急騰するなど、ガス業界にとって一長一短となっています。加えて、2022年2月以降のロシア・ウクライナ情勢による影響も不安材料となっています。
ガス業界の売上高ランキングを見ますと、首位が東京ガス、2位が大阪ガス、東邦ガス、西部ガスHD、日本瓦斯と続きます。東京ガスと大阪ガスの売上高は、3位以下を大きく引き離しており、ガス業界のけん引役となっています。なかでも、東京ガスの売上高はダントツのトップとなります。
都市ガス大手である東京ガスのガス事業は、都市ガスやLNGの販売、調達のほか、首都圏での発電所や海外のガス油田開発など、エネルギー関連事業を幅広く手掛けます。一方、関西圏地盤の大阪ガスは国内のみならず海外事業も展開、全売上高のうち国内エネルギー事業が約86%を占めます。
2022-2023年の国内のガス業界は、大手5社中5社が2桁を超える大幅増を記録しました。なかでも、東京ガスは前年比53.4%増と大幅な伸びを見せました。
2023年8月現在、都市ガスの全面自由化がスタートして約6年が立ちました。これにより電力、ガス業界は本格的な競争の時代に突入しています。
都市ガスの全面自由化とは、一般消費者が自由にガス会社を選ぶことができる仕組みです。従来は、各地域で大手ガス会社が独占供給していましたが、自由化により消費者がガス会社を選択できるようになりました。
電力業界に比べガス業界は保安業務を担うため参入障壁が高い業界です。当初は参入企業が少なく低調な滑り出しでしたが、徐々に拡大しつつあります。そして、2023年7月時点でのスイッチング申込件数(切換え手続き件数)は489万7千件となり、開始した年の5万7千件から8倍以上も増加しています。
都市ガスやLPガスは電力自由化をきっかけに、電力業界への参入を進めました。ところが、ガス自由化に伴い、今度は大手電力がガス業界に参入し、大手ガス会社のシェアを奪う形になっています。
電力とガスが自由化したことで、様々な業界からの参入が見られます。大手電力会社に加え、鉄道や旅行会社、携帯電話や石油元売り会社など、異業種からの参入は業界内での競争を激化させています。
2020年4月には電力の送配電分離が開始、2022年4月にはガスの小売り事業とガス導管事業が分社化されるなど、ガス小売市場の公平な競争が促されます。近年ではこうした制度上の動きが活発化するなかで、ガス・電気料金が値上げされており、今後の動向に注目が集まります。
ガス業界の業績を大きく左右する要因の一つに「暖冬」が挙げられます。
一般家庭へのガスの主な供給は、給湯や暖房であるため暖冬の影響を受けます。商業用においても空調が主な利用になるため、冷夏や暖冬による影響によりガスの販売量は減少、気候の変化はガス業界には大きな痛手となります。
2015年から16年のガス業界の業績は大きく減少していますが、これは主にこの年の冬が暖冬あったことが原因であるとされています。近年は日本の冬の温度は年々上昇傾向にあります。
温暖化対策は世界で進められており、温室効果ガス排出削減に向けた取り組みを進めています。太陽光や風力、洋上風力や水力、地熱やバイオマス発電など再生可能エネルギーを導入する企業が増えており、ガス会社もガスを供給すると共に、再生可能エネルギーの導入を進めています
また、大手ガス会社はガスで電気とお湯を作る家庭用燃料電池「エネファーム」の普及にも注力しています。2021年現在での家庭用燃料電池の普及台数は43.3万台、設置目標は2030年までに300万台を掲げており、政府も普及支援に取り組んでいます。
これまでは戸建てを中心に普及していた「エネファーム」はマンションでも広がりつつあります。今後、集合住宅やスマートシティなどでの普及拡大が期待されています。
ガス業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することでガス市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 東京ガス | 32,896 | ||
2 | 大阪ガス | 22,751 | ||
3 | 東邦ガス | 7,060 | ||
4 | 西部ガスHD | 2,663 | ||
5 | 日本瓦斯 | 2,078 | ||
6 | 静岡ガス | 2,073 | ||
7 | 北海道ガス | 1,748 | ||
8 | 京葉瓦斯 | 1,187 | ||
9 | サーラコーポレーション※ | 1,166 | ||
10 | K&Oエナジーグループ | 1,062 |
※サーラコーポレーションはエネルギー&ソリューションズ事業の売上高です。シェアとはガス業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することでガス市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれガス業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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