パン業界の動向や現状、ランキングや売上高シェアなどを研究・分析しています。データは2022-2023年。過去のパン業界の市場規模の推移をはじめ、パン生産量の推移、日本人の主食の移り変わり、高級食パンのトレンドや今後の動向について解説しています。
業界規模
1.4兆円
成長率
0.3%
利益率
-0.2%
平均年収
480万円
パン業界の過去の業界規模の推移を見ますと、横ばいで推移しています。
近年、日本人の主食は米からパンへと変わり始めています。農林水産省の「食品産業動態調査」によると、2022年のパン生産量(小麦粉ベース)は、前年比4.3%減の118万3,035トン。内訳は学給パンは前年比0.1%増、フランスパンや調理パンを含むその他が同1.8%増、食パンが5.7%減、菓子パンが0.4%減でした。2023年は前年から微減となり、ほぼ横ばいで推移しています。
パン生産量の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)
農林水産省の主食に占める割合の調査では、1983年に57.2%を記録していた米類が、2003年には42.4%に下落。一方、パンは21.2%から31.4%へと大幅に上昇しています。消費学においてもパンは上昇傾向にあります。2023年のパンの消費額は33,874円、一方、米は20,397万円と差は年々拡大しています。
パンの需要が伸びている背景としては、食生活の欧米化や若年層を中心とした米離れ、一般家庭の朝食のパンの浸透や孤食・個食などの影響に加え、増加する共働き世帯による時短・簡便ニーズなどが挙げられます。
なかでも近年は、パンを好むシニア層や夕食用に購入する家庭が増えており、こうした状況も市場を拡大させた要因の一つとなっています。
近年のパン業界の状況を振り返りますと、2020年はコロナ禍の影響により家庭で食事を取る機会が増え、食パンやロールパン等の食事系パンの需要が増加。一方で給食用や業務用の需要は減少しました。2021年はコロナ需要の反動減により、家庭用の食パンやロールパンが減少。一方、総菜パンはスーパーやコンビニで売上が増加、一部の業務用も前年を上回りました。
2022-2023年のパン業界は、行動制限が緩和され人流が回復したことで、惣菜パンや菓子パン、低価格帯の食パンが好調に推移しました。一方で、小麦粉を含む原材料費、エネルギー価格や梱包材、物流費などコストの上昇が大きな負担となっています。値上げが浸透したことで業界全体では増益となりましたが、物価上昇により消費者の節約志向が強まっています。
※は食品事業の売上高。2022-2023年のパン業界の売上高ランキングでは、山崎製パンが独走状態です。2位以下を大きく引き離し、パン業界をけん引しています。
2022-2023年の各社の業績は、山崎パンが前年比2.2%増、フジパングループ本社が同7.1%増、敷島製パンが3.8%減、第一屋製パンが2.1%増、日糧製パンが1.2%増、コモが7.7%増でした。5社中1社が増加、全体では横ばいで推移しています。
新型コロナが5類へ移行し経済活動も活発化するなか、原料や光熱費、輸送費や包材などのコストが高騰しており、パン業界では商品価格の値上を行っています。
一方、物価上昇による消費者の節約意識は強まり、低価格帯のパンへの需要は高まっています。販売競争が激化する一方でコストは増加しており、パン業界は厳しい状況です。
パン業界首位の山崎製パンでは、幅広い価格帯で商品を提供する「2極化・3極化」戦略を推進しています。高価格帯と低価格帯の2極化にくわえ、手に取りやすい値頃感のある製品を強化し、価格帯に隙がないよう幅広い価格での商品を提供しています。
ヤマザキ独自の技術と製法で焼き上げる山崎製パンの「ロイヤルブレッド)」
一方、主力商品である「ロイヤルブレッド」においては、2度の値上げ後も売れ行きは好調です。実際、山崎製パンの2022年12月期決算を見ますと、「ロイヤルブレッド」の売れ行きは、前年同期比で2ケタ増を記録しています。低価格帯の食パンが前年比20%の伸びを見せるなかで、「ロイヤルブレッド」は順調に売上を伸ばしました。
上記の食パンは、山崎製パンがリニューアルや開発に注力している商品で、発売以降の売上は右肩上がりで推移、2022年には10周年を迎えました。「ロイヤルブレッド」は”品質とおいしさ”にこだわり、良質な上級小麦粉とバターを使用、ヤマザキ独自の技術と製法で焼き上げた食パンで、ロールパンやレーズンロール、イングリッシュマフィンなど豊富なラインアップを展開しています。
さらに、山崎製パンでは、節約志向が高まるなか菓子パンの売上が伸びています。「まるごとソーセージ」や「ずっしりデニッシュ」、「コッペパン」、近年人気の「生シリーズ」やドーナッツ、「薄皮」などが前年を上回っています。
上記の商品はいずれもボリューム感があり、さらに中価格帯や低価格帯と物価高でも手に取りやすい価格で展開している菓子パンです。人気の「薄皮シリーズ」では、内容量を5個から4個に変更しましたが、1個当たりの重量をアップさせています。また、高付加価値のある食パンは、ハーフサイズを展開するなど消費者のニーズを上手くとらえ、売上拡大を図っています。
パン業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することでパン市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 山崎製パン ※ | 10,021 | ||
2 | フジパングループ本社 | 2,881 | ||
3 | 敷島製パン | 1,484 | ||
4 | 第一屋製パン | 243 | ||
5 | 日糧製パン | 173 | ||
6 | コモ | 70 |
※山崎製パンは食品事業の売上高です。シェアとはパン業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することでパン市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれパン業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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