ビール業界の動向や現状、ランキングなどを研究しています。データは2021-2022年。ビール業界の過去の市場規模の推移をはじめ、ビールと発泡酒の課税数量の年次推移、ビール大手3社の月次売上高グラフ、2021年から2022年の状況と今後の動向を解説していきます。
業界規模
2.9兆円
成長率
-3.8%
利益率
4.4%
平均年収
990万円
ビール業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2016年までは増加傾向にありましたが、2017年から2021年にかけて減少傾向にあります。
国税庁の「酒のしおり(令和4年3月)」によると、2020年度のビール課税数量は前年比22.5%減の179万3千klでした。前年度から52万klと大幅に減少し、ビールの出荷量は近年、減少傾向にあります。発泡酒は同1.5%増の60万1klで、微増ではありますが前年から反発しています。
ビールと発泡酒の酒類課税数量の推移(出所:国税庁、グラフは業界動向サーチが作成)
ビール市場は消費者の嗜好の多様化やライフスタイルの変化、節約志向などを背景に、中長期的に消費量が減少しています。若者や女性の間では近年はハイボールやチューハイ、アルコール度数の高いストロング系を中心に飲まれており、30~40代の間では買い控えが進み、発泡酒や新ジャンルなどの低価格帯が好まれるようになっています。
さらに、数年前に人気を呈してきた『ノンアルコールビール』の伸び率も鈍化しており、国内ビール類総市場自体の縮小が見られています。
ビール業界の売上高ランキングを見ますと、サントリー、キリン、アサヒの売上高が高いことが分かります。2021-2022年はサントリーが増加、キリンが下落、アサヒとサッポロが横ばいと各社まちまちの売上高となりました。純利益はキリンを除く3社が増益となっています。
続いて、2021年から2024年9月の直近のビール業界の動向を見ていきます。
以下のグラフは主なビールメーカー3社の月次売上高の推移です。売上高はいずれも酒類事業の売上高です(サントリーはビールの月次情報を開示していなかったため、省略しています。)
大手ビール3社の月次売上高の推移(出所:各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフによると、2021年は基準値である100を下回る場面が多かったですが、その後は回復基調にあることが分かります。2022年10月は価格改定前の駆け込み需要の反動減によるもので、以降は回復傾向にあります。
直近では2023年9月は昨年9月の価格改定前の駆け込み需要の反動減の影響を受けています。また、翌月10月には昨年9月の駆け込み需要の影響で落ち込んだ反動増、加えて酒税改正による減税でビールの出荷量が増加しました。
2021年のビール業界は昨年からに引き続き、外出自粛や営業時間の短縮など新型コロナウイルスの影響により、飲食店向けビールの落ち込みが見られました。一方で、家庭用ビールの販売は昨年に続き堅調で、「新ジャンル」や「発泡酒」はビールほどの落ち込みは見られませんでした。
2022年に入ると経済再開の流れを受け、飲食店向けが回復基調になります。今後もこうした傾向は続くと見られ、厳しい状況にあったビール業界にとっては追い風となります。
国内のビールは3つに大別され、「ビール」は麦芽の比率が50%以上、「発泡酒」は50%未満、「新ジャンル」は麦芽比率の規定がないものです。それぞれ税率が異なっており、ビール、発泡酒、新ジャンルの順に高くなります。
2023年のビール業界の主なニュースを厳選してまとめました。最近のビール業界の動向や現状を把握するのにご参考下さい。
ビール業界の今後の大きな動向として、2026年の「酒税一本化」が挙げられます。
2020年10月から「ビール」の税率は段階的に引き下げられ、「発泡酒」や「新ジャンル」は引き上げられました。最終的には2026年に酒税が同一となり、一本化されます。
2020年10月の最初の酒税改正では、ビールは350mlあたり7円の減税、発泡酒は据え置き、新ジャンルは350mlあたり9.8円の増税となりました。改正直後の10月は減税されたビールが増え、新ジャンルが減る結果となりましたが、その後数か月の動向を見ますと、元の需要動向に戻っています。
増税後も依然として「新ジャンル(第3のビール)」の強さが目立ちます。ビールと新ジャンルの価格差が縮まったとはいえ、まだまだビールの方が、1缶(350ml)あたり60~80円ほど高いのが現状です。消費者の低価格志向はしばらく続きそうです。
10年でキリンビール最速の10億本を突破した新ジャンル『本麒麟』
新ジャンルでは、キリンの『本麒麟』がリニューアル後3ヶ月で1億本、累計11億本(2020年5月現在)を突破しました。サントリーは『金麦』、アサヒビールは『クリアアサヒ』、サッポロは『ゴールドスター』を主力ブランドに挙げており、各社の競争が激化しています。
新ジャンルはビールに比べ、好みの銘柄を固定化しない消費者が多いのが特徴です。投入する商品によっては、現在のシェアをひっくり返す可能性も秘めています。今後は、減税傾向にあるビールが人気の新ジャンルにどれだけ食い込めるかが焦点となります。
ビール業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することでビール市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
※サントリーHDは酒類事業、キリンHDはキリンビール+ライオン+ミャンマー・ブルワリー事業、アサヒグループHD、サッポロHDは酒類事業の売上高です。シェアとはビール業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することでビール市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれビール業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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