乳製品業界の動向や現状、ランキング、シェアなどを分析しています。データは2022-2023年。乳製品業界の過去の市場規模の推移をはじめ、乳酸菌飲料と発酵乳の生産量の推移グラフ、売上高ランキングの分析、乳製品で近年伸びているヨーグルト分野の動向を詳しく解説します。
業界規模
1.7兆円
成長率
-1.7%
利益率
3.7%
平均年収
793万円
乳製品業界の過去の業界規模の推移を見ますと、直近は横ばい傾向となっています。
農林水産省の食品産業動態調査によると、2023年の乳酸菌飲料の生産量は前年比0.9%増の44.0万kl、発酵乳の生産量は同2.6%増の23.9万klでした。
乳酸菌飲料と発酵乳の生産量の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)
2023年は乳酸菌飲料、発酵乳ともに微増となりました。乳酸菌飲料、発酵乳ともに17年ごろから上昇、2022年には大幅な増加となり2023年も高水準で推移しています。ちなみに、発酵乳とは原料の乳に乳酸菌や酵母などを加え、発酵させて糊状または液状にしたものです。発酵乳の代表格はヨーグルトで、発酵乳を加工したものが乳酸菌飲料となります。
近年の乳製品業界を振り返りますと、外食向けやホテル、観光業やお土産等の業務用乳製品では多少の持ち直しの動きが見られた一方で、家庭用向け乳製品おいては、前年のコロナ特需の反動で需要が減少しました。また、冬以降は原材料や燃料価格の高騰で飲料などの一部商品を値上げしたことで販売数が減少しました。
2022年の乳製品業界の動向においては、相次ぐ値上げによって消費者の買い控えが起き苦戦を強いられた一年でした。円安の影響に加え、原材料やエネルギー価格、物流費などのコストが上昇、加えて同年11月には飲料・発酵乳用向けの生乳取引価格が引き上げられたことで、さらなるコストの上昇が起きました。
2022年はヨーグルト市場が伸び悩み前年を下回りました。一方で、外食需要が回復したことで、業務用バターの需要が昨年に比べ増加しています。また、各社が強化している機能性や高付加価値分野のアイスクリームやヨーグルト、チーズなどは継続的な伸びが見られています。
続いて、乳製品業界の内部の動向を見ていきます。2022年の乳製品業界の売上高ランキングを見ますと、
※乳製品関連の部門売上高。1位が森永乳業、2位が雪印メグミルク、3位がヤクルト本社、4位が明治HDでした。いずれも部門別の売上高となります。売上高の規模を見ますと、上位4社が強いのが分かります。
売上高首位の森永乳業は、食品事業が全売上高の96%を占めます。主力の一般消費者向けBtoC事業や栄養食品やサプリメント販売のウエルネス事業のほか、近年は機能性素材やビフィズス菌などの菌体販売のBtoB事業も展開しています。雪印メグミルクは、全売上高の84%を乳製品事業と飲料・デザート事業が占めます。このほか、酪農生産に関わる飼料・種苗事業も展開しています。
2022-2023年の乳製品業界の業績を見ますと、5社中3社が前年比で横ばい、増加と減少が各1社でした。特に雪印メグミルクは5,000億円を2年連続で割り込むなど、本格的な回復には至っていません。
2022年の乳製品業界は、コロナ禍の反動減やコストアップによる値上の影響もあり、ヨーグルトの需要は一時的な落ち込みを見せました。一方、健康や機能性といった高付加価値商品においては、堅調に推移しています。
下のグラフは森永乳業の分野別売上高の推移です。乳製品の内訳を見ますと、牛乳やチーズ、アイスクリームは近年減少傾向にありますが、ヨーグルトは2020年のコロナ禍を機に伸長しています。
森永乳業の乳製品分野別 売上高の推移(各行公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)
翌年には反動減が見られたものの、ヨーグルトにおいては高水準をキープしています。このように、他の乳製品が伸び悩みを見せる中、ヨーグルトが好調であることが分かります。ここでは森永乳業を取り上げましたが、他社もおおむね、同様の傾向が見られます。
ここ数年の乳製品業界は、健康意識の高まりから「機能性ヨーグルト」の需要が増加しています。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大以降、消費者の健康ニーズはさらに高いものになりました。こうした動向を受け、各社は機能性ヨーグルトの開発に力を入れています。
明治HDは、1073R-1乳酸菌を使用した「R1」を展開。約6,000種類以上から選び抜かれた乳酸菌を売りに、ドリンクヨーグルト市場で売上No1を記録しました。森永乳業は便通改善の「ビヒダス」や生活習慣病を予防する「トリプルヨーグルト」など機能性表示食品を展開。ヤクルト本社もストレス緩和や睡眠の質向上を目的とした「ヤクルト1000」を新たに展開しています。
いずれも従来のヨーグルトに加え、「健康を意識した商品」であることが特徴的です。こうした高付加価値商品は単価が高く、利益率が高いのが特徴です。利益率の向上は、業績の安定化につながります。
2022年はコロナ禍の反動減やコスト増加による値上で需要は落ち込んだものの、2023年に入り回復傾向にあります。今後、日本は高齢化が進むため、消費者の健康ニーズはますます高まるでしょう。高付加価値商品の開発は、今後の成長の柱として注力すべき分野です。
乳製品業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで乳製品市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 森永乳業 ※ | 5,020 | ||
2 | 雪印メグミルク ※ | 4,931 | ||
3 | ヤクルト本社 ※ | 4,555 | ||
4 | 明治HD ※ | 2,740 | ||
5 | 六甲バター | 419 | ||
6 | チチヤス | 119 |
※森永乳業は食品事業、雪印メグミルクは乳製品+飲料デザート類事業、ヤクルト本社は飲料・食品事業、明治HDはヨーグルト・チーズ+牛乳事業の売上高です。シェアとは乳製品業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで乳製品市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ乳製品業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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