住宅業界の今後と将来の展望について解説していきます。住宅業界は今後どうなるのか、将来の先行きに不安を抱いている方も多いのではないかと思います。
未来は不確かですが、ある程度想定や推測をすることができます。先行きを見通すことは、関係者はもちろん、住宅業界に携わるすべての人が知っておくべき重要な事ですので、これを機に学んでみて下さい。
結論から言いますと、今後の住宅業界は非常に厳しい状況が予想されます。
野村総合研究所の2021年6月のレポートによると、2030年度の新設住宅着工戸数は65万戸、2040年度は46万戸まで減少する見込みです。2020年度の81万戸と比較しますと、2030年度は-19%、2040年度は-43%の大幅な減少となります。
移動世帯数の減少に加え、平均築年数の伸長、持家志向の低下、名目GDPの成長減速が響くとしています。以前から人口減少に伴う住宅戸数の減少は懸念されていましたが、40%の減少は驚くべき数字です。このままでは住宅市場の大幅な縮小が予想されます。
市場の縮小に伴い、これから再編の動きの活発化も予想されます。2020年1月にはトヨタとパナソニック、ミサワが統合する大型再編が行われました。今後もこうした企業間の合併・買収、再編の動きが加速しそうです。
今後、国内の住宅着工戸数が減少してゆくことは確実視されています。こうした厳しい状況の中、住宅業界が今後、活路を見出してゆくにはどうしたら良いでしょうか?
住宅業界で今後伸びる可能性が高い分野を考察します。
日本は今後、人口減少を迎えますが、海外の多くの国では人口が増加します。住宅市場は人口の増加と相関がありますので、人口が増えてゆく海外の市場はチャンスが多いと言えます。
すでに多くの日本企業が展開している米国では、人口の増加に伴い住宅需要が旺盛です。オーストラリアでも人口増加が見られ、日本企業の参入余地があります。英国では現在、400万戸の住宅が不足しており、いまだに在来工法が主流です。日本のパネル工法の強みを活かすことができます。
さらに、アジアでは2030年ごろまでに所得の増加が予想されていることから、より質の高い住宅を求める声が高まり、日本企業にも勝機があります。日本は厳しい状況ですが、世界に目を向ければ、市場拡大のチャンスは多くあります。
日本の人口は今後、減少傾向にありますが、東京23区、横浜市、川崎市、さいたま市、福岡市、名古屋市などいくつかの都市は2030年-2040年まで増加傾向にあります。こうした人口が増加しているエリアに事業を集中することで、継続的に業績を上げることができます。
日本国内では、今後、高齢者に快適な住環境を求める声が高まる可能性があります。積水ハウスが「住宅内での急性疾患を早期に発見する」開発を行うなど、各社、高齢者向け住宅の開発に乗り出しました。従来の住宅に「健康」や「安心」といった付加価値をつけることで、新たな購入層を開拓します。
今後の住宅業界に起こりうるシナリオをご紹介します。未来は誰にも分りませんが、複数の見通しをあらかじめ想定しておくことで、未来に対しての備えをすることができます。
住宅着工件数の減少に歯止めがかからず、2025年以降に市場が大きく縮小します。海外や介護向け住宅など新規事業もふるわず、売上は年々減少してゆきます。市場では生き残りをかけた再編やM&Aが相次ぎ、業界内での淘汰も進みます。
近年、都心部のマンション価格が上昇傾向にあり、戸建住宅へのシフトが見られます。テレワークやおうち時間の増加などコロナ後の「新しい生活様式」の下、ファミリー層による需要の高まりも見られます。今後もこうした潮流が続けば、住宅業界にとっては追い風となります。
可能性の高いシナリオです。国内の市場は縮小するものの、海外事業や都市部の需要の取り込みなどでカバーするシナリオです。ただし、国内の住宅市場の縮小は今後、かなりの規模になることが予想されますので、すべてをカバーできるかは未知数です。
今後の住宅業界のポイントは、「縮小する国内の住宅市場を、いかに他の分野でカバーするか」です。現在、大手をはじめ多くの企業が新規事業に取り組んでいますが、既存事業を支えるほどの規模には育っておらず、成長にはまだまだ時間がかかりそうです。
住宅市場の縮小は2025年以降から加速することが予測されます。将来起こりえるリスクに対していかに準備ができるか、各社の対応の差が今後の明暗を大きく分けます。