印刷業界の今後と将来の展望は?

印刷業界のイメージ

「印刷業界が今後どうなるのか?」、「印刷業界の将来の展望は?」など印刷業界の今後の見通しや先行きが気になる方は多いと思います。

印刷業界の今後の展望や将来の見通しをきちんと把握しておくことは、業界に身を置く方はもちろん、これから就職や転職を考えている方にとっても非常に重要なことです。この記事を参考に、学習してみて下さい。

印刷業界の今後と展望、将来性について

これからの印刷業界はどうなる?

先の方を覗いている男性

印刷業界の今後を見通すにあたって、押さえておきたいポイントが一つあります。それは、「現在の印刷会社は事業を多角化している」という点です。

印刷業界と聞くと、通常、雑誌や本の印刷をイメージする人も多いかと思いますが、現在の大手印刷会社はこうした従来型の印刷をメインでは行ってはいません。これを踏まえたうえで印刷業界の今後の展望を考える必要があります。

経済産業省の「印刷・同関連事業の出荷額の推移」によると、既存の印刷業は長期的に減少傾向にあります。雑誌や書籍、チラシやカタログなど紙の印刷物の販売が低迷し、印刷需要の落ち込みが目立ちます。

デジタル化が進む今後もこうした「紙離れ」は続くと見られ、印刷物は大きく減少することが予測されます。純粋な印刷物のみを考えれば、印刷業界の今後は非常に厳しいものになると言えるでしょう。

一方で、冒頭でも述べたように、現在の印刷業界は事業を多角化しています。印刷各社はメインの収益を既存の印刷業から周辺事業へとシフトしています。その分野はセキュリティシステムやマーケティング、BPO、商品パッケージ、建装材、ディスプレイ、半導体フォトマスクなど多岐にわたります。

今後、印刷業界で伸びそうな分野は?

商品の価値訴求のイメージ

今後の印刷業界を見通すうえで重要なポイントは、「今後減少するであろう印刷業をいかに非印刷業でカバーするか」です。伝統的な印刷業の減少よりも非印刷業の増加が上回れば、印刷業界は安定した成長を描きます。

そこでここでは、今後、伸びる可能性が高い非印刷業の候補をご紹介します。

BPOとは、「ビジネスプロセスアウトソーシング」の略で、企業や地方自治体向けに顧客情報を預かり、通知印刷物の発送や管理などを一括で請け負うサービスです。近年、堅調に推移している分野で、BPOを手掛ける中小の印刷会社も増えています。

パッケージ・包装は食品や飲料、日用品や医薬品などのパッケージです。凸版印刷では海外展開に、大日本印刷では環境配慮包材に注力しています。情報セキュリティは、顧客情報をICカードに印刷する工程で培ったセキュリティのノウハウを活かした事業です。さらに近年ではDXやIoT、5Gに対応したサービスや製品の開発も進んでいます。

他にも高機能フィルムや住宅などの内外装建材、リチウムイオン電池バッテリーパウチなど多くの事業を展開しています。こうした非印刷業がどの程度業績を伸ばすかが、今後の印刷業界の将来を左右します。

今後の展望:印刷業界に起こりうる3つのシナリオ

矢印の上で将来に向かって進もうとしている二人

ここでは、印刷と非印刷分野が今後どのように推移してゆくのか、3つのシナリオから考察してゆきたいと思います。

現在の印刷業界の動向から分析しますと、シナリオ①か②が有力です。最近の印刷会社は非印刷分野に注力していますが、売上全体への貢献度はさほど大きくはありませんまた、増加率が低いのも問題です。

印刷大手2社のセグメント別 売上高の推移(出所:各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)

上のグラフは大手2社である凸版印刷と大日本印刷のセグメント別売上高の推移です。印刷事業は情報コミュニケーション事業に含まれています。グラフを見ますと、印刷事業を含む情報コミュニケーション事業が減少傾向にあるのに対し、非印刷事業である生活・産業、エレクトロニクスは横ばいで推移しているのが分かります。

これは、印刷分野が減少傾向にあるのに対し、非印刷分野があまり伸びていないことを意味しています。また、非印刷分野の売上全体への貢献度も低いことが分かります

今後数年の印刷業界は、印刷事業の減少を補うだけの非印刷分野の伸びが期待できず、大きな需要の増加がない限り、全体としては減少から横ばいで推移することが予想されます。今後、非印刷分野が躍進すれば、印刷業界は安定した成長軌道に乗るでしょう。いずれにせよ、非印刷分野の伸びが、印刷業界の今後を左右する大きな要因になります。

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