航空業界の今後の展望と見通しについて解説します。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた航空業界は現在、未曾有の危機に直面しています。こうした航空業界の今後や将来について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、今後の航空業界の見通しと展望をいくつかのシナリオや事例をまじえて解説してゆきたいと思います。未来は確実ではありませんが、この記事がお役に立てれば幸いです。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、航空業界は2020年から2021年にかけて大きく落ち込みました。
新型コロナウイルの感染状況は、今後の航空業界を大きく左右する重要なファクターとなります。ところがウイルスの行く末は誰にも予測できません。そこでこの記事では、今後数年で起こりえる航空業界の状況をシナリオに基づいて解説してゆきたいと思います。
国際航空運送協会(IATA)によると、世界の旅客数がコロナ前の水準に戻るのは2023年と予測しています。業界首位のANA HDも、ワクチン接種の進展に伴い、徐々に旅行や帰省の需要回復が顕著になり、2021年度の第2四半期から需要が徐々に回復していくとの前提を立てています。
顧客別では、国内の旅行・レジャー、帰省需要がまず先に動き出し、国内線ビジネス、国際線の旅行・レジャー、ビジネスと広がってゆくことが予測できます。
とくに、国内の旅行・レジャー需要の回復は最も早い可能性が高く、2020年の『GoToトラベル』時にはわずか4~5か月でコロナ前の半分の水準にまで回復しました。自由に移動することに制限が課されている現在において、消費者の旅行やレジャーへの渇望は高いと見られています。
航空旅客数(国内・国際線)の月次推移(出所:国土交通省、グラフは業界動向サーチが作成)
一方、ビジネスの航空需要に関しては、国内線・国際線ともに今後、戻りが鈍いことが想定されます。リモートワークの普及に伴い、従来のように人の頻繁な行き来がなくても仕事が成り立つことが分かりました。コロナ禍の厳しい状況のなかで、コスト削減の圧力も強く、今後、ビジネスの航空利用は抑えられる傾向にあると考えられています。
これは航空業界にとって非常に厳しい未来となります。現在、航空業界内ではシナリオ①をメインに想定しており、シナリオ②の将来はあまり考えられていません。
現在の航空会社は、国際貨物が収益の柱となっています。業界首位のANAはフレーター便(貨物機を用いた貨物便)を約9,000便、旅客機による貨物専用便を約9,000便運航しています。貨物便は好調に増加しており、2020年には過去最高の売上高を記録しました。
現在、半導体や電子部品、自動車や医薬品、医療機器など、世界的に貨物需要は高まっています。コロナが収束しない状況においては、航空各社は旅客輸送の穴埋めとして、貨物輸送のさらなる強化に乗り出すでしょう。旅客機の貨物転用など、旅客から貨物へのシフトがより鮮明になる可能性があります。
航空各社の動きから今後、航空業界で伸びそうな分野をご紹介します。将来伸びる可能性のある分野を研究することで、航空業界の新しい姿や未来を垣間見ることができます。
今後、航空各社が急ピッチで進めていくのが非航空事業の強化です。
新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた航空業界ですが、その要因の一つが航空事業に依存した収益モデルでした。今回のパンデミックでは航空事業の依存度が高く、業績を大きく悪化させる原因となりました。こうした反省から、航空各社は非航空事業をこれから急ピッチで強化していきます。
業界首位のANAホールディングスは、非航空事業の一環として、顧客データ資産を活用したプラットフォーム事業を構築しています。将来的には航空や旅行、カード、物販、地域情報や商材などを連携・プラットフォーム化し、新たな収益機会を模索します。
「ANA X」が手掛けるプラットフォームのイメージ
アフターコロナでは、ビジネス需要の戻りが鈍いことが予想されています。こうした流れから、航空各社は観光需要を見込んだLCCや割安航空の強化を手掛けています。今後、2021年から2022年にかけてLCCの新規就航や路線の増便が予定されており、ポストコロナを見据えた動きが活発化しています。
ソラシドエアは「東京-沖縄便」を2021年3月に新規就航
将来的な航空需要で期待されているのがアジア・太平洋地域の経済成長です。今後、アジアを中心に人口増や所得の増加が見込まれ、日本への観光ニーズも高まっていきます。こうした機運をふまえ、ANAはアジア・オセアニア等の成長市場をカバーするために、訪日需要を対象とした「第3のブランド」を立ち上げ、2022年後半から2023年前半に運航を開始する予定です。
今後の航空業界は、短期-中期的には新型コロナウイルスの感染状況に大きく左右されることでしょう。業界のシナリオとしては、2021年末から2022年にかけて次第に渡航制限が緩和され、2023年にはコロナ前の水準に戻るだろうという見方が一般的です。
アフターコロナでは、国内の旅行・レジャー需要がけん引し、海外へと段階的に波及してゆくことでしょう。今は厳しい状況にある航空業界ですが、アジアの成長など、中・長期的な視点を持てば様々なチャンスが見えてきます。