出版業界が抱えている課題や問題点についてお話します。この記事では、出版業界に大きな影響を与えている課題や問題点について、数ある中から重要な3つをご紹介していきます。
2021年現在、出版業界が抱えている課題は以下のとおりです。
出版業界が抱えている課題の1つが、出版物の販売低迷です。雑誌や書籍などの出版物の販売部数は年々減少しており、出版市場は縮小傾向にあります。
インターネットの普及に伴い、若者を中心に『活字離れ』が進んでいます。あらゆる情報が出回り、中には無料で質が良く鮮度の高い情報も入手可能となりました。その結果、本の購入を控える消費者が増加し、『出版不況』に陥っています。
さらに、雑誌の販売低迷は、広告収入の減少につながります。雑誌の収益構造は大半が広告収入です。各出版社は販売部数を伸ばそうと、話題性の高い付録を付けるなど対応を図っていますが、その一方で、休刊や隔月となる雑誌も増えています。
出版業界が抱えている課題の2つ目が、再販売価格維持制度(再販制度)による「デメリット」の問題です。再販売価格維持制度とは、「出版社が決めた価格で書店やコンビニ(一次流通)が本を販売」する制度です。
こうした制度によって、本の販売価格は全国で統一され、出版社は一定の利益を確保できます。しかしながら、再販制度にもデメリットがあります。書店は定価販売のみのため、高額な書籍や発行から日が経ったものは、売れ残る確率が高くなります。
また、再販制度は二次流通市場では適用外となります。そのため、リユース市場やメルカリなどのフリマアプリが台頭し中古本が出回ると、新書の需要はさらに低迷していきます。
書籍と雑誌の平均返品率の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
出版業界の3つ目の課題が、平均「40%」の高い返品率です。2019年の経済産業省の経済構造実態調査によると、書籍の平均返品率は32%、雑誌の平均返品率は40%と高水準で推移しています。
出版業界では、出版社が価格を決定する「再販制度」がある一方で、書店は売れ残った本を出版社に返品できる「委託販売制度」が設けられています。
そして、返品された分は出版社の赤字になります。「委託販売制度」は低い返品率で成り立つ制度のため、40%にも及ぶ返品率は出版社の大きな負担となっています。
現在、Amazonや蔦屋書店などの一部企業が、出版社から直接仕入れる『買い切り方式』を導入し、一定割合の「返品枠」を設け、代わりに通常より良い条件で本を購入しています。一方、書店側は在庫を抱えるリスクがあるため、依然として委託販売が主流になっています