食品業界の動向や現状、今後について分析しています。データは2021-2022年。食品業界の業界規模の推移をはじめ、食品製造業の売上高と利益率の推移グラフ、2021年-2022年の物価上昇などのトレンドと業界の今後の動向について解説しています。
業界規模
21.1兆円
成長率
-0.8%
利益率
3.3%
平均年収
628万円
食品業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2019年までは緩やかな上昇傾向にありましたが、2020年には減少。2021年も低い水準で推移しています。
財務省の法人企業統計調査によると、2021年度の食品製造業の売上高は、前年比1.2%減の41兆6,385億円、営業利益率は前年比26.1%増の2.9%でした。
食料品製造の売上高と利益率の推移(出所:財務省、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフによると、食品製造の売上高は2018年度から2021年度にかけて減少傾向にあります。一方で、利益率は2020年度まで減少傾向にありましたが、2021年度には増加に転じています。
2021-2022年の食品業界は、コロナ禍の巣ごもり需要は落ち着きを見せる一方、経済再開の動きにより、業務用食品の需要は増加傾向にあります。一方で、原材料価格の高騰の影響により、食品価格の値上げが相次いで実施されました。小麦や製油、畜肉、乳製品で価格の高騰がみられます。
値上げは、食品業界の長年の課題であった利益率の向上につながりますが、消費者の節約志向が強い現在において、どの程度受け入れられるのかが一つの焦点となります。
食品業界は売上高数千億~1兆円規模の企業がひしめき合う巨大市場です。業界に属する企業は、上場企業だけでも120社を超えます。食品首位の日本ハムは食肉の最大手で、食肉をはじめ、ハムやソーセージなどを中心に展開しています。2位の明治HDは、明治製菓と明治乳業が統合して発足した持ち株会社で、乳業と菓子を中心に展開しています。
3位の味の素は調味料首位で、調味料や冷凍食品などを展開しています。海外売上高比率が6割弱と高いのが特徴です。4位の山崎製パンはパン首位で、国内を中心に食パンや菓子パンを展開しています。2021-2022年はランキング上位5社中3社が増加、1社が横ばい、1社が下落でした。業界全体としては、昨年に比べて若干の増加を記録しています。
食品業界が抱える主な課題は上記のとおりです。
近年では、共働き世帯や単身世帯の増加により、家で調理をする機会が減り、食品需要が低下しています。また、販売価格を安く抑えていることで、利益率が低い傾向にあります。利益率の低下は成長を阻害する要因となるため、食品業界にとっては大きな課題となります。さらに直近では、原材料費の高騰などの問題もあります。
食品業界の課題につきましては、「食品業界の課題と問題点を徹底解説!」にて詳しく解説しています。こちらもぜひ、ご参照下さい。
食品業界の今後を占ううえで、最大の要因は人口です。一般的に、食品の総消費量は人口と比例する傾向にあります。日本の人口は長期的に減少傾向にあるため、今後、食品市場の縮小が予想されます。さらに、日本では高齢化も進んでおり、一人当たりの消費量も減少傾向にあります。
一方で、世界の人口は今後も増加傾向にあり、世界の食品市場は拡大が見込まれています。農林水産政策研究所の調査によると、世界の飲食料市場規模は、2030年に約1.5倍の1,360兆円(2015年比)に成長するとの見通しです。地域別ではアジアが1.9倍、南米・オセアニアが1.4倍、欧州が1.1倍となっています。
さらに、Panorama Data Insightsによると、世界の「調理済み食品」の市場規模は2030年までに、約2倍の3,710億ドル(2021年比)に達すると予測されています。世界の食品市場のなかでも、「調理済み食品」の市場が急速に伸びることが想定されています。
今後、企業の持続的な成長を見据えた際に、海外展開は大きなアドバンテージとなるでしょう。以下のグラフは日本の主な食品メーカーの海外売上高比率を示したものですが、海外進出の状況は企業によってバラつきがあります。
日本の食品メーカーの海外売上高比率(出所:各社決算資料より、グラフは業界動向サーチが作成)
今後、長期的にみて、これら海外展開が進んでいる企業とそうでない企業との業績差がじわじわと開くことが想定されます。
今後、人口減少や高齢化が進む国内市場において、売上や利益を出し続けることはなかなか難しいでしょう。生き残り策の一つとして、「高付加価値商品」の開発が挙げられますが、毎年、売れ筋の商品を生み出すのは難しいものです。国内市場の縮小を補完する本命はやはり、海外市場の開拓と言わざるを得ません。
今後、海外進出で出遅れた企業はそれを挽回する動きに出る可能性が考えられます。近い将来、日本の食品メーカーによる海外企業の買収が加速するかもしれません。
食品業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで食品市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 日本ハム | 11,743 | ||
2 | 味の素 | 11,493 | ||
3 | 山崎製パン | 10,529 | ||
4 | 明治HD | 10,130 | ||
5 | マルハニチロ | 8,667 | ||
6 | 伊藤ハム米久HD | 8,543 | ||
7 | 日本水産 | 6,936 | ||
8 | 日清製粉グループ本社 | 6,797 | ||
9 | ニチレイ | 6,026 | ||
10 | 日清食品HD | 5,697 |
※シェアとは食品業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで食品市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ食品業界の詳細ランキングページにジャンプします。
食品業界を見た人は他にこんなコンテンツも見ています。関連業種の現状や動向、ランキング、シェア等も併せてご覧ください。
明治HD、日本ハム、味の素、山崎製パン、マルハニチロ、伊藤ハム米久HD、日清製粉グループ本社、日本水産、雪印メグミルク、森永乳業、ニチレイ、キユーピー、日清食品HD、キッコーマン、プリマハム、東洋水産、ヤクルト本社、不二製油グループ本社、スターゼン、江崎グリコ、日清オイリオグループ、大塚HD、ニップン、エスフーズ、ハウス食品グループ本社、カルビー、フジパングループ本社、昭和産業、極洋、ミツカングループなどの計124社
食品業界の動向や現状、ランキング、シェア等のコンテンツ(2021-2022年)は上記企業の有価証券報告書または公開資料に基づき掲載しております。食品業界のデータは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。掲載企業に関しましてはできる限り多くの企業を反映させるよう努めていますが、全ての企業を反映したものではありません。あらかじめご了承ください。また、情報に関しましては精査をしておりますが、当サイトの情報を元に発生した諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負うものではありません。重要な判断を伴う情報の収集に関しましては、必ず各企業の有価証券報告書や公開資料にてご確認ください。