水産業界の動向や現状、ランキングなどを分析

魚介類とサプライチェーン

水産業界の動向や現状、ランキング、シェアなどを分析しています。データは2021-2022年。水産業界の過去の市場規模の推移をはじめ、漁業・養殖業、水産加工物の生産量の推移グラフ、2021年の動向と世界の水産需要と各社の取り組みなどを解説しています。

水産業界(2021-2022年)

水産業界の推移と基本情報

業界規模

2.4兆円

成長率

-2.5

利益率

2.5

平均年収

641万円

  • 11年
  • 12年
  • 13年
  • 14年
  • 15年
  • 16年
  • 17年
  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年

水産業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2011年から2018年までは増加傾向、2019年から2020年は減少に転じ、2021年に入り小幅に増加しています。

水産業界の動向と現状(2021-2022年)

2022年の漁業・養殖業の生産量は7%減 長期的に縮小傾向

農林水産省の海面漁業生産統計調査によると、2021年の国内の漁業・養殖業(計)の生産量は前年比7.5%減の385.9万t、海面漁業の生産量は同9.3%減の289.4万t、海面養殖業は1.7%減の91.1万t、内水面漁業は3.8%増の5.4万tでした。

漁業・養殖業の生産量の推移

漁業・養殖業の生産量の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)

2022年の生産量は海面漁業が減少、内水面漁業は増加でした長期的に見ると海面・内水面漁ともに減少傾向です。ちなみに、「海面漁業」とは海で行われる漁業、「内水面漁業」とは河川や川、沼の淡水で行われる漁業のことです。

魚種別では、近年は「まいわし」や「ほたてがい」の生産量が増加傾向、一方「さんま」や「するめいか」は減少傾向にあります。2022年は「さば」、「かつお」が前年に比べ減少しています。

近年は、資源の減少や消費低迷により、国内の漁業生産量は減少傾向にあることが分かります。養殖業においても、利用可能な海面の不足もあり、国内の生産量は横ばいで推移しています。

近年の水産業界の状況を見ますと、2021年は前年から引き続き家庭用向け水産加工品が伸長し、業務用は2020年の不調から一転、需要が増加しました。家庭用冷凍食品や加工食品はスーパーやドラッグストアなど量販店向けが堅調でした。一方で缶詰は前年の反動減が見られ、業務用においては量販店惣菜や寿司種、介護食向けなどが堅調でした。

2022年の動向を見ますと、主要魚種の販売が好調となったことに加え、各魚種の価格が回復しました。外食用や介護向け、給食向けなどの業務用も堅調に推移しています。一方、値上げの影響により消費者の節約意識が高まっており、一部の加工食品では販売数量が減少しています。原材料やエネルギー価格、輸送コストの高騰によるコストアップが利益を圧迫しています。各社で値上げを行っているものの、値上げ効果が追いついていないのが現状です。

水産業界の売上高ランキングを見ていきます。以下は、2021年の水産業界の売上高ランキングのトップ5です。

水産業界 売上トップ5(2021-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 マルハニチロ 8,667
2 日本水産 6,936
3 極洋 2,535
4 マリンフーズ 835
5 横浜冷凍 824

※は水産関連の部門売上高。首位はマルハニチロ、2位は日本水産、3位は極洋となっています。ランキングを見ますと、上位3社の売上高が大きいことが分かります。これら上位3社は、魚の調達から販売、加工までを一貫に手掛ける総合水産会社です。4位以下の会社は水産加工を主としています。

2021年のランキングでは5社中3社が横ばい、2社が増加でうち1社が12%以上の増収となりました。ランキング全体としては、横ばいからやや増加の印象を受けます。

水産加工物は減少から一転、増加へ コスト高騰で利益を圧迫

下降トレンドのグラフ

続いて、水産加工物の動向を見ていきましょう。

農林水産省の「食品産業動態調査」によると、2022年のあげかまぼこの生産量は前年比3.0%増の18.5万t、ちくわは同19.7%増の7.5万t、板かまぼこは17.4%増の5.0万t、なると・はんぺんは26.6%増の3.8万tでした。

主な水産加工物の推移

主な水産加工物の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見るとあげかまぼこの生産量が多く、ちくわ、板かまぼこと続きます。あげかまぼこは、2019年から2020年に落込みましたが2021年に増加に転じて以降、高水準の横ばいで推移しています。

また、ちくわ、板かまぼこはここ数年は減少傾向でしたが2021年以降は増加しており、中長期的に横ばいです。なると・はんぺんは大幅増となり過去11年間で最も高い水準となりました。

水産加工品は2020年から2022年にかけて増加傾向にあります。「漁業・養殖業の生産量」の発表によると、水産加工品(練り物)の原料であるスケトウダラは、前年から8.5%減少しました。北海道での生産量が落ち込んだことが要因で、スケトウダラの年平均価格は前年比28%増加しています。

また、日本かまぼこ協会によると、米国産スケソウダラ・ スリミの輸入平均単価が前年から48%増加していることに加え、原材料、光熱費、輸送費、梱包非などのコスト高騰しており、これまでの価格改定幅を上回るコスト上昇が続いていることを発表しています。

世界的に魚の需要は拡大傾向 欧米、新興国で魚食ブームに

右肩上がりの棒グラフ

国内の水産業・水産加工業は減少傾向にありますが、海外では魚の需要は拡大しています。

近年、欧米諸国では健康志向による魚食がブームとなっており、新興国では経済発展による所得の向上により世界的に魚の消費量が伸びています。世界の魚需要の増加に伴い、生産量も増加しており、とくに養殖業生産量の伸びが顕著です。

世界の養殖業の生産量の推移

世界の養殖業の生産量の推移(出所:Food and Agriculture Organization、グラフは業界動向サーチが作成)

上のグラフはFAOによる世界の養殖業の生産量の推移ですが、1995年から2018年にかけてが右肩上がりになっているのが分かります。消費量が多いエリアは、アジア、欧州、アフリカ、北米で、2030年までに輸出・輸入量で9%ほどの成長が見込まれています。

こうした動向を受け、水産各社は今後を見据えた事業の強化に乗り出しています。水産最大手のマルハニチロは、2010年に民間企業として初めてクロマグロの完全養殖に成功。2019年には欧州への輸出を開始し、2021年にはベトナムの水産会社を買収しています。

水産2位の日本水産は養殖の専門研究センターを擁し、先鋭的な養殖の研究開発を行っています。2018年には養殖魚の体長測定など、養殖事業へのAI導入を開始しました。海外ではサケマス、エビ、国内ではブリ、クロマグロ、カンパチなどの養殖を手掛け、欧米を中心に事業を拡大、アジアでは事業基盤の確立を目指しています。

国内の水産業界は魚離れが進み厳しい環境にありますが、世界の水産業は今後も拡大すると見込まれます。世界的に食糧不足が叫ばれる中、タンパク質やDHAなど魚に含まれる栄養素にも注目が集まることでしょう。リスクと機会が混在する業界ですが、うまく機会を捉え、今後の成長に生かしていきたいところです。

水産業界 ランキング&シェア

水産業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで水産市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

水産業界 売上高&シェアランキング(2021年-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 マルハニチロ 8,667
2 日本水産 6,936
3 極洋 2,535
4 マリンフーズ 835
5 横浜冷凍 824
6 日本ハム 791
7 ニチモウ 725
8 はごろもフーズ 684
9 ニチレイ 676
10 宝幸 334

※横浜冷凍は食品販売事業、日本ハムは水産物事業、ニチモウは食品事業、ニチレイは水産事業の売上高です。シェアとは水産業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで水産市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ水産業界の詳細ランキングページにジャンプします。

その他のランキング

関連リンク

水産業界を見た人は他にこんなコンテンツも見ています。関連業種の現状や動向、ランキング、シェア等も併せてご覧ください。

水産業界 対象企業一覧

マルハニチロ、日本水産、極洋、横浜冷凍、マリンフーズ、はごろもフーズ、日本ハム、ニチモウ、ニチレイ、一正蒲鉾、宝幸、ヨシムラ・フード・HD、中島水産、東洋水産、大冷、焼津水産化学工業、あじかんの計17社

注意・免責事項

水産業界の動向や現状、ランキング、シェア等のコンテンツ(2021-2022年)は上記企業の有価証券報告書または公開資料に基づき掲載しております。水産業界のデータは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。掲載企業に関しましてはできる限り多くの企業を反映させるよう努めていますが、全ての企業を反映したものではありません。あらかじめご了承ください。また、情報に関しましては精査をしておりますが、当サイトの情報を元に発生した諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負うものではありません。重要な判断を伴う情報の収集に関しましては、必ず各企業の有価証券報告書や公開資料にてご確認ください。