介護業界の動向や現状、課題などを研究

介護サービスの様子

介護業界の動向や現状、ランキング、課題などを分析しています。介護業界の過去の業界規模の推移をはじめ、近年の動向や現状、業界の抱える課題と各社の動きなどを解説しています。

介護業界(2021-2022年)

介護業界の推移と基本情報

業界規模

1.1兆円

成長率

6.2

利益率

3.1

平均年収

575万円

  • 15年
  • 16年
  • 17年
  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年

介護業界の過去の業界規模の推移を見ますと、拡大傾向にあります。

介護業界の動向と現状(2021-2022年)

介護費「11兆円」、4年連続の大台越え 要介護者も拡大傾向

高齢者は要介護認定を自治体に申請することで、介護サービスが受けられます。介護施設には民間企業や社会福祉法人などの訪問介護やデイサービス、有料老人ホームなどが存在します。

厚生労働省の調べによると、2021年度の介護保険総費用は、前年度比2.3%増の11兆0,291億円でした。前年度から2,508億円が増加したことで4年連続の上昇、ついに大台の11兆円を記録しました。サービス別では、介護サービスが同2.3%増の10兆7,494億円、介護予防サービスは3.4%増の2,797億円となり、介護サービスのみで10兆円を突破しています。

介護保険総費用の推移(出所:厚生労働省、グラフは業界動向サーチが作成)

高齢者人口の増加を背景に介護業界は拡大を続けています。2022年9月現在、要介護(要支援)認定者数は697万人にも及んでおり、2000年には218万人であった要介護者は、この20年間で3倍以上にも増加しています。

一方で、中軽度の要介護者及び認知症の方が利用する介護予防サービスの一部は市町村へ移行したこともあり、利用者数、介護保険料共に減少しています。

2025年には「団塊の世代」すべてが75歳以上となり、後期高齢者人口は2,180万人に達すると推計されています。高齢者人口の増加に伴い介護業界の拡大も見込まており、今後もさらなるニーズの増加と拡大が想定されています。

2021年の介護業界の動向を見ますと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、減少していた入居率には改善が見られました。また、2020年以降は利用を控える動きが見られたデイサービスなどの通所介護なども、徐々に利用者は増え需要は回復に向かいました。一方、一部の企業では、新規入居契約の低下が見られました。

介護業界 売上トップ5(2021-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 ニチイ学館 2,673
2 SOMPOホールディングス 1,366
3 ベネッセHD 1,273
4 ツクイHD 950
5 セコム 745

※は介護関連の部門売上高。2021年の介護業界売上高ランキングは、首位のニチイ学館が一歩リード、2位にSOMPOホールディングス、3位にベネッセHDでした。トップのニチイ学館はTOBにより2020年11月に上場廃止となりました。

2021年の介護業界の主要企業の業績は、売上高ではニチイ学館が前年比2.6%増、SOMPO HDが同1.3%減、ベネッセHDが2.8%増、ツクイHDが1.9%増、セコムが4.1%増加となりました。2021年は主要介護会社24社中21社が増収を記録しています。

介護職員の賃金上昇も人手不足は深刻 ITシステムの活用に注目

外国人の介護職員を研修している様子

高齢者人口の増加に伴い拡大傾向にある介護業界ですが、その一方で介護職員の人材不足という課題も抱えています。2025年にはすべての「団塊の世代」が後期高齢者となる中で、介護職員は37万人の不足、2040年には69万人が不足すると推計されています。

人材不足の要因の一つとして、介護職員の賃金の低さが挙げられています。加えて重労働なこともあり離職率が高く、有効求人倍率は上昇傾向にあります。

一方、賃金においては、人手不足を解消しようと処遇改善が進み、近年は上昇傾向です。介護従事者の平均給与額(月給)は2020年比で7,780円の増加、2022年2月から9月には補助金9,000円が支給されました。また、10月以降も継続して賃金の改善は行われる予定です。ただ、依然として重労働のわりに給与水準は低い傾向で、深刻化する人手不足の解消には至っていません。

こうした中で、介護業界で取り組んでいるのがIT活用です。スタッフの負担軽減やサービスの品質向上を図ります。厚生労働省においても、 介護現場でのICT化を促し、ICTの導入・普及セミナーを行っています。

SOMPO HDでは、介護現場で散在するデーターを統合し、介護DXを推進する多様なソフトウェアの開発を行っています。データの取得、分析により最適なケアプランの作成、状態悪化を予測し、自立支援につながるケアプランの作成などを行います。また、記録システムの導入でデータの集約と事務作業を効率化し、スタッフの作業負担の軽減も図ります。

その他、ツクイHDもICTの利用促進やIT基盤の強化で、業務効率化を図ります。ALSOKでは有料老人ホームにおいて、タブレット端末での介護記録の管理のほか、マットレスに設置したセンサーで寝返りや心拍数、呼吸などを測定、健康状態を把握することで早期の異変察知や医療連携を可能にしています。

異業種の参入相次ぐ 買収や新事業で活発化する介護業界

矢印と走っている人

拡大を続ける介護業界の動向を受け、業界内では活発な動きが見られます。2000年の介護保険法が施行されて以降、異業種からの参入も増え、買収や新規事業の立ち上げなど競争が激化しています。

業界首位のニチイ学館は1996年より介護事業に参入、その後も訪問介護やデイサービス企業の事業子会社化や譲受で、多様な介護事業を展開し沿線上でのサービス提供を拡大しています。直近では、2022年9月に介護事業や訪問介護事業を傘下に擁するティーアンドジーを買収、同年12月には西日本マインドのグループホーム事業を譲受しています。

SOMPO HDは2012年、シダーへの出資をきっかけに介護業界へ参入。ワタミの介護事業買収や有料ホーム大手のメッセージを子会社化、2018年には傘下である介護事業4社を合併し、事業の一本化を図りました。2022年4月には、16の介護施設を運営するネクサスケアを子会社、介護事業を収益の柱として強化し、業界での存在感が増しています。

ベネッセHDは2000年代初期に介護事業3社を統合、その後も介護付き有料老人ホームを統合しました。2021年3月現在、高齢者向け老人ホームは334ヶ所、在宅介護事業拠点も31ヶ所となり、様々な価格帯の有料老人ホームを展開しています。

その他、三菱レジデンスや野村不動産HD、三井不動産レジデンシャル、旭化成なども介護業界に参入、シニア向け賃貸住宅やサービス付き高齢者住宅といった住宅需要の獲得を図っています。さらに、外食大手のゼンショーも高齢者向住宅や介護事業を展開しています2020年12月15日には、三菱商事とALSOKが介護事業で資本・業務提携することを発表しています。

高齢化が進む日本では、介護業界の需要拡大が期待されています。今後も介護事業を取り巻く市場は継続して伸びることが想定されています。また、今後も様々な分野からの参入が見込まれる他、大手による中小零細事業者の買収も予想されています。

介護業界 ランキング&シェア

介護業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで介護市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

介護業界 売上高&シェアランキング(2021年-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 ニチイ学館 2,673
2 SOMPOホールディングス 1,366
3 ベネッセHD 1,273
4 ツクイHD 950
5 セコム 745
6 学研HD 657
7 ユニマットリタイアメント・… 549
8 ソラスト 506
9 セントケア・HD 488
10 ケア21 363

※SOMPOホールディングスは介護・シニア事業、ベネッセHDは介護・保育カンパニー事業、セコムはメディカルサービス事業、学研HDは医療福祉分野、ソラストは介護・保育事業の売上高です。シェアとは介護業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで介護市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ介護業界の詳細ランキングページにジャンプします。

その他のランキング

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介護業界 対象企業一覧

ニチイ学館、SOMPOホールディングス、ベネッセHD、ツクイ、セコム、学研HD、ユニマットリタイアメント・…、セントケア・HD、ソラスト、ケア21、メディカル・ケア・サービス、シップヘルスケアHD、チャーム・ケア・コーポレーション、日本ケアサプライ、ウチヤマHD、シダー、ロングライフHD、N・フィールド、ヒューマンHD、アンビスHD、SIホールディングス、ケアサービス、日本ホスピスHD、インターネットインフィニティー、光ハイツ・ヴェラスの計24社

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