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目次
グラフは文具業界の業界規模(対象企業の28計)の推移をグラフで表したものです。
文具業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の文具業界の業界規模(主要対象企業28社の売上高の合計)は2兆3,923億円となっています。
文具業界の過去8年間の業界規模の推移
文具業界の過去の推移を見ますと、2009年から2020年にかけて緩やかではありますが、増加傾向にあります。
2017年から2020年にかけて文具市場は堅調な推移を見せています。デジタル化、ペーパーレス化の流れが進む中、個人の文具需要が市場を牽引しています。また、首都圏では相次いでオフィスビルが新設、それに伴い事務用品の需要も伸びています。
一方、一部の商品で需要の落込みが見みられます。経済産業省の発表によると、2020年の文具販売額は前年比17.2%減の1,309億円。前年から2,70億円の減額、3年連続で減少しています
文具販売金額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフの対象となっている商品は「筆記具」「描画材」「修正用品」など。2019年と比較すると、全商品が前年を割り込んでおり、なかでも「修正液」が-27.8%と大きく減少、次いで「シャープペンシル」が-23.0%、「ボールペン(完成品)」が-20.4%でした。
市場は上昇傾向ですが、今後国内では人口減少やデジタル化の促進で市場が縮小する可能性があります。こうした動向を受けて大手企業は文具以外の事業にも力を入れています。デジタル商品やオフィス家具、生活用品の販売、サポート事業など文具以外での収益拡大を図っています。
文具業界では業界編成の動きも見せています。コクヨによるぺんてるの子会社化の動きやヤフーによるアスクルの事業譲渡の動きなどいずれも失敗に終わりましたが、文具業界は目まぐるしい動きを見せています。今後も業界再編の動きに目が離せないでしょう。
個人の文具需要を背景に堅調な推移を見せてきた文具業界ですが、長期的な動向を見ますと人口の減少、デジタル化の波は逆風となります。
こうした流れを受けて文具各社は海外へと活路を見出します。財務省によると2019年の筆記用具類の輸出額は前年比1.0%増の1,055億円。近年は堅調な伸びを見せるなか、2018年は一時的にマイナスとなりましたが、19年に再び増加に転じています。輸出先のアメリカや中国での需要増が目立つ結果となりました。
海外市場はアジアを始めとする新興国の中間所得層が増加。それと共に日本の高機能文具需要への高まりを見せています。今後も国内の市場が厳しい状況にある中、文具メーカー各社は海外へと活路を見出し、新たな成長領域の拡充を図ります。
業界大手のコクヨはベトナムや中国、マレーシア、インドを中心に生産体制の整備、販売チャネルの開拓に注力。アジア地域での高機能文具への需要拡大にこたえます。
ボールペン大手のパイロットコーポレーションは海外売上高が50%を超えました。消すことができるボールペン『フリクション』は、2006年にフランスで販売して以来、世界で累計4億本を超えるヒットとなりました。
三菱鉛筆も海外売上高が42%と海外事業を拡大中。水性ボールペンは北米でのシェアが高く、油性ボールペン「ジェットストリーム」、芯がとがり続ける「クルトガ」も高評価を得ています。
最近ではアイディア商品やユニークな文房具が増えたことから、従来の文具ファン以外の層への訴求も成功しており、SNSでの拡散も見られます。
こうした流れを受けて、各社はSNSを意識した商品を開拓。従来の利便性に加え、SNSで映える話題性の高い商品開発に注力しています。また、近年では『文具女子』という言葉も誕生。文具が好きな女性をターゲットにしたイベント「文具女子博」は好評で、2017年以降各地で開催されています。
マスキングテープや付箋、メモ帳やカラーペンなど、女性のモチベーションが上がるかわいいタイプのデザインを多数販売。2020年の「文具屋さん大賞2020」では、三菱鉛筆のカラーペン「EMOTT」が受賞。機能性に加え商品自体がインスタ映えするデザインで話題を呼びました。
最近では機能性を高めるため、既存の商品をさらに改良する動きも見られます。コクヨの角まで塗れる四角いスティックのり『グルー』、針を使わないホチキス『ハリナックス』、文字が透ける透明消しゴム『クリアレーダー』、好みのインクが選べる多色ペンなど、付加価値の高い商品も開発されています。
デジタル化が進む中、文具業界を中心にアナログ回帰とも取れる流れもきています。国内外ともに付加価値の高い文具の需要は高く、各社ともに新たなヒット商品の開発に注力しています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | アスクル | 4,221 | 17.6 | |
2 | 大塚商会 ※ | 3,097 | 12.9 | |
3 | コクヨ | 3,006 | 12.6 | |
4 | オカムラ | 2,444 | 10.2 | |
5 | 内田洋行 | 2,003 | 8.4 | |
6 | プラス | 1,833 | 7.7 | |
7 | イトーキ | 1,162 | 4.9 | |
8 | パイロットコーポレーション | 870 | 3.6 | |
9 | マックス | 640 | 2.7 | |
10 | ナカバヤシ | 636 | 2.7 |