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グラフは殺虫剤業界の業界規模(対象企業の4計)の推移をグラフで表したものです。
殺虫剤業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の殺虫剤業界の業界規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は1,063億円となっています。
殺虫剤業界の過去6年間の業界規模の推移
家庭向け殺虫剤業界はアース製薬、フマキラー、大日本除虫菊の3社で市場のほとんどのシェアを占めます。大日本除虫菊については業績の開示がありませんので、この記事では主にアースとフマキラーの2社について詳しく分析していきます。
なお、農業向けの殺虫剤については農薬業界で解説しています。
下のグラフは、殺虫剤大手のアース製薬とフマキラーの売上高の推移です。売上高はいずれも部門売上高となります。各社の決算によると、2020年のアース製薬の売上高は前年比11.1%増の659億円、フマキラーは前年比5.5%増の344億円でした。
殺虫剤大手2社の売上高の推移(出所:有価証券報告書、グラフは業界動向サーチが作成)
2020年は2社とも好調で、前年比で増加を記録しています。過去6年間の推移を見ますと、緩やかな増加で推移しています。なお、殺虫剤業界の業績は景気よりも天候に大きく左右される傾向にあります。
殺虫剤や虫ケア用品が最も売れるのが6~8月の夏場ですが、その年の夏場の天候が売上に大きく影響します。2018年は各社が減収を記録しましたが、この年の夏は気温低下や曇天など天候不順に見舞われました。
2020年の殺虫剤業界は、各社が増収を記録しています。他の業界が苦戦する中、殺虫剤業界にとってコロナ禍の環境は追い風となりました。
新型コロナウイルスの影響により、消費者の在宅時間が増加。家での食事や掃除、家庭園芸の機会が増えることにより、殺虫剤や虫よけ品需要は増加しました。また、換気の実施による虫の侵入なども需要増の一因と考えられています。
殺虫剤業界は景気の影響を受けにくく、コロナ禍でも堅調な推移を見せています。毎年、一定の需要が見込まれる業界ですので、今後も底堅い業績が予想されます。
アース製薬は、ハエ、蚊、ゴキブリ、ダニなど害虫ごとに40種類以上の殺虫剤や虫よけ商品を展開しています。非常に多くの商品を展開していますが、とくに「アースノーマット」は1984年の販売以来、消費者に支持されてきたロングセラー商品です。
除虫菊によく似た成分を使用する「アースノーマット」
安定した殺虫効果と長い効き目で、液体蚊取り市場で8割を超えるシェアを誇ります。スイッチ一つで部屋のすみずみまで行きわたり、赤ちゃんやペットのいる家庭でも使用できます。「アースノーマット」のように、アース製薬は国内シェアが高い商品が多いのが特徴で、国内の売上高比率は9割を超えます。
一方、フマキラーは東南アジアの「蚊取り線香」市場で高シェアを誇ります。蚊取り線香は線香に除虫菊(シロバナムシヨケギク)の成分を練りこませたもので、昔の日本では蚊対策としてメインに使われてきました。しかし、煙が出る、壁や物に臭いがつくなどの理由から、現在の日本ではヒート式がメインに使われています。
一方、価格が安価なことからインドネシアなどの東南アジアでは蚊取り線香が今でもメインで使われています。この点に目を付けたフマキラーは、東南アジアでのシェア拡大にシフトしました。現在では、売上の約40%が東南アジア市場によるものです(2020年3月現在)。
高いシェアを誇る2社ですが、国内、海外と取りうる戦略が大きく異なるのが特徴的です。今後も国内、海外ともに底堅い成長が予想されますが、2社の業績がどのように変遷するのか、今後も動向を注視してゆきたいと思います。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | アース製薬 ※ | 659 | 62.0 | |
2 | フマキラー ※ | 344 | 32.4 | |
3 | 保土谷化学工業 ※ | 55 | 5.2 | |
4 | エス・ディー・エス バイオテック ※ | 5.0 | 0.5 |