INTERNET STOCK
目次
グラフはネット証券業界の業界規模(対象企業の5計)の推移をグラフで表したものです。
ネット証券業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年のネット証券業界の業界規模(主要対象企業5社の営業収益の合計)は5,278億円となっています。
ネット証券業界の過去7年間の業界規模の推移
ネット証券業界の過去の推移をみますと、2014年から2019年までは段階的に増加傾向にありましたが、2020年には急上昇しています。
以下のグラフはネット証券大手3社の2020年の営業収益を比較したものです。
ネット証券大手3社の営業収益の推移(出所:各社有価証券報告書、グラフは業界動向サーチが作成)
楽天証券やマネックスグループは若干の増加傾向、SBIホールディングスは大幅な増加傾向にあることが分かります。収益的にもSBIが大きくリードしていることが分かります。
ネット証券業界は、自由な取引時間や低価格な手数料などが人気でシェアを拡大中。ビジネスマンや個人投資家の多くはネット証券に移行しており、現在はネットが中心となっています。
しかし、2018年には2月の相場急落や米中貿易戦争など先行きの不透明感などが原因となり、個人投資家の売買は低調。収益性を高めるため投資家の囲い込みを狙い、取引サービスのテコ入れや、法人向けの営業強化などに動きます。
2019年は米中貿易摩擦による先行き不透明感が影響し、個人投資家の売買は減少傾向にありました。ただ、2020年3月には新型コロナウイルスによる感染拡大で株価が急落。このことをきっかけに売買は活発化し、新規の口座開設数も増加しています。
近年のネット証券業界の流れとしては、スマホのアプリで株の売買が行える新興のネット企業も進出し始めています。ソフトバンクが出資を行う「ワンタップバイ」やLINEが出資する「フォリオ」、大和証券グループ出資の「スマートプラス」などが挙げられます。いずれもスタートアップの段階であり、どこまで認知度が高まるかがカギとなります。
そして、対面型とネット型ともに収益柱である手数料の値下げ競争が過熱しています。今後、手数料の完全無料化が予定されている中、SBI証券がいち早く無料化の範囲を拡大しています。
2020年-2021年のネット証券5社の業績を見ますと、営業収益でSBI HD(金融サービス事業)が前年比31.7%増、マネックスグループは同46.4%増、楽天証券は29.1%増、GMOフィナンシャルHDは10.5%増、松井証券は24.5%の増加でした。2020年-2021年は5社中5社が二桁の大幅増収を記録しています。
ネット証券業界の口座数は、野村HDや大和証券グループ本社などの大手と肩を並べるほどと言われています。ただし、ネット証券は大手証券会社に比べ、富裕層の顧客が少ないため、現状として預かり資産が少ないのが課題。
また、国内では少子高齢化や人口減少によって今後は投資人口が減る懸念があります。今後のネット証券存続のため、ビジネスモデルの転換が必要になっています。
こうした動向を受け、SBI証券は地方に活路を求めて約30の地銀と提携し、顧客基盤の拡大を図るとともに、若年層向に向けたTポイントでの投資サービスを開始しました。また、楽天証券でも複数の企業との業務提携で、対面で顧客の資産形成サポートの体制を整えるなど、地銀や他企業との提携でビジネスの拡大を強化しています。
また、ネット証券では、システム障害やセキュリティーの向上が課題。アクセスの集中によって繋がりにくくなるシステム障害対策、不正アクセスによるセキュリティーの強化は、利用者の信頼を築くうえで欠かせない要素です。新規顧客の獲得が「攻め」と考えれば、システムの強化は「守り」です。「守り」を強化する一方で、いかに「攻める」かが今後のネット証券の腕の見せ所です。
順位 | 企業名 | 営業収益 | シェア | 単位:億円 |
1 | SBIホールディングス ※ | 3,117 | 59.1 | |
2 | マネックスグループ | 779 | 14.8 | |
3 | 楽天証券 | 723 | 13.7 | |
4 | GMOフィナンシャルHD | 359 | 6.8 | |
5 | 松井証券 | 300 | 5.7 |