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目次
グラフは製缶業界の業界規模(対象企業の4計)の推移をグラフで表したものです。
製缶業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の製缶業界の業界規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は1兆1,636億円となっています。
製缶業界の過去7年間の業界規模の推移
製缶とは、アルミやステンレスなどの金属板を加工して容器などを作ることです。飲料用缶に代表されますが、ヘアスプレーや日用品など多岐にわたります。
以前の日本は製錬まで行っていましたが、電力料金の高い日本ではアルミ製錬は衰退してしまいました。現在では地金を海外から購入し、圧延などの加工のみを行っています。
アルミ延圧製品と飲料用缶の販売金額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)
経済産業省の「生産動態統計」によると、2020年のアルミニウム延圧製品の販売金額は、前年比11.0%減の5,578億円、飲料用缶の販売金額は前年比3.6%減の3,085億円でした。グラフを見ますと飲料用缶は横ばいで推移していますが、アルミ圧延製品は、ここ2年間で減少傾向にあることが分かります。
2020年の製缶業界は新型コロナウイルスの影響により、巣ごもりによるチューハイ向け飲料用缶などの需要増も見られましたが、外食、レジャー、オフィス周辺等の屋外消費の低迷を受け、全体の需要は落ち込みました。
2020年は、昨今のチューハイブームの影響を受け、チューハイ向けのアルコール飲料用缶は増加しましたが、飲料用缶やビール向けキャップの需要は減少しました。海外では好調だったエナジードリンク向けの飲料用缶も減少を記録しています。
製缶業界の2020年の売上高ランキングを見ますと、東洋製罐とUACJの売上高が高いことが分かります。
東洋製罐グループHDは飲料用やペットボトルなど包装容器で国内首位の会社です。包装容器関連が8割を超え、紙コップやガラス瓶などの製造も手掛けています。UACJは古河スカイと住友軽金属工業が合併して発足した会社で、アルミ圧延分野で国内首位、世界3位のシェアを誇ります。
昨年からの推移を見ますと、東洋製罐とホッカンHDは減収、UACJは横ばい、日本製罐は上昇でした。
プラスチックごみなど環境問題に関心が高まる中で、リサイクル性の高さから金属缶が見直されつつあります。今後、脱プラスチックの動きが本格的になれば、金属缶の需要は増えることが予想されます。
こうした大きな潮流をとらえ、製缶各社は環境問題を意識した取組みを強化しています。
製缶大手の東洋製罐グループHDは、石岡工場にアルミ缶の製造設備を増強しました。環境に配慮した成形技術をはじめ、IoTによる自動化・省人化も進めています。さらに、東洋製罐は新日鉄住金とともに「世界最軽量の飲料用スチール缶」の開発に成功。
従来の陰圧缶より4割軽量化した東洋製罐の「世界最軽量スチール缶」
東洋製罐の持つ加工や充填の技術と新日鉄住金の銅板技術を組み合わせ、従来の陰圧缶よりも4割ほど軽くしました。材料の使用量を減らすことで、環境負荷を低減し、低酸素社会の実現にも貢献します。
アルミ圧延首位のUACJは、リサイクルしやすいアルミニウム合金の開発など「アルミニウムのリサイクル」に取り組んでいます。日本のアルミニウム延圧メーカーとして初めて「ASI」に加盟するなど、サスティナビリティの向上にも力を入れています。
脱プラスチックなど環境意識が高まる中、リサイクルしやすい金属缶が注目を浴びています。金属を効率的にリサイクルすることで、ごみの削減や資源の枯渇を避けることができます。近年、環境に対する政府や投資家の声が高まっています。収益性を確保しつつ、環境問題への真摯な取り組みも求められています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 東洋製罐グループHD ※ | 6,230 | 53.5 | |
2 | UACJ ※ | 4,204 | 36.1 | |
3 | ホッカンHD | 1,093 | 9.4 | |
4 | 日本製罐 | 109 | 0.9 |