水産業界の動向や現状、ランキングなどを分析

魚介類とサプライチェーン

水産業界の動向や現状、ランキング、シェアなどを分析しています。データは2022-2023年。水産業界の過去の市場規模の推移をはじめ、漁業・養殖業、水産加工物の生産量の推移グラフ、2022年の動向と世界の水産需要と各社の取り組みなどを解説しています。

水産業界(2022-2023年)

水産業界の推移と基本情報

業界規模

2.6兆円

成長率

2.7

利益率

2.0

平均年収

637万円

  • 14年
  • 15年
  • 16年
  • 17年
  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年
  • 22年

水産業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年に大きく下落しましたが、直近では大きく上昇しています。

水産業界の動向と現状(2022-2023年)

2022年の漁業・養殖業の生産量は6%減 長期的に縮小傾向

農林水産省の海面漁業生産統計調査(2024年2月公表)によると、2022年の国内の漁業・養殖業(計)の生産量は前年比5.8%減の391.6万tでした。

漁業・養殖業の生産量の推移

漁業・養殖業の生産量の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)

内訳をみますと、海面漁業の生産量は前年比6.9%減の295.9万t、海面養殖業は同1.7%減の91.1万t、内水面漁業は3.8%増の5.4万tでした。2022年は海面漁業、海面養殖業がともに減少、一方で内水面漁業は増加でした長期的に見ると海面・内水面漁ともに減少傾向です

ちなみに、「海面漁業」とは海で行われる漁業、「内水面漁業」とは河川や川、沼の淡水で行われる漁業のことです。

2022年の生産量の内容は、海面漁業で「さば、かつお、ホタテ」が減少、「さけ類、かたくちいわし、まあじ」が増加。一方、海面養殖では「のり、ぶり」が減少、「かき、ホタテ、わかめ」が増加しました。また、内水面漁業では「うなぎ、あゆ」が減少、「ます類」が前年に比べ増加しています。

近年は、資源の減少や消費低迷により、国内の漁業生産量は減少傾向にあることが分かります。養殖業においても利用可能な海面不足の影響もあり、国内の生産量は横ばいで推移しています。

2022年の水産業界の動向を見ますと、主要魚種の販売が好調、加えてコロナ禍で下落した魚種の価格が回復しました。外食や介護、給食などの業務用も堅調に推移しています。一方、値上げの影響により消費者の節約意識が高まっており、一部の加工食品では販売数量が減少しました。

水産業界では、原材料やエネルギー、輸送コストなどのコストアップが利益を圧迫しており、各社で値上げを行っているものの、値上げ効果が追いついていないのが現状です。2023-2024年も各社で価格改定を実施し、利益確保に努めています。

水産業界の売上高ランキングを見ていきます。以下は、2022年の水産業界の売上高ランキングのトップ5です。

水産業界 売上トップ5(2022-2023年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 マルハニチロ 10,204
2 ニッスイ 7,681
3 極洋 2,721
4 横浜冷凍 851
5 マリンフーズ 849

※は水産関連の部門売上高。首位はマルハニチロ、2位はニッスイ、3位は極洋となっています。ランキングを見ますと、上位3社の売上高が大きいことが分かります。これら3社は、魚の調達から販売、加工までを一貫に手掛ける総合水産会社です。4位以下の会社は水産加工を主としています。

2022年のランキングでは5社中2社が横ばい、3社が増加となりうち2社が10~17%の2ケタ増収となりました。主要企業16社中8社が2ケタ増を記録、全体としては前年から大幅増となり好調な1年でした。

23年の水産加工物は増加へ コスト高騰で値上げ相次ぐ

下降トレンドのグラフ

続いて、2023年の水産加工物の生産量が公表されたので見ていきましょう。

農林水産省の「食品産業動態調査 」によると、水産加工品は2021年から2023年にかけて増加傾向にあります。2023年のあげかまぼこの生産量は前年比11.2%増の17.6万t、ちくわは同3.9%増の6.6万t、板かまぼこは10.3%増の4.7万t、なると・はんぺんは12.0%増の3.6万tでした。

主な水産加工物の推移

主な水産加工物の推移(出所:農林水産省、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見ると、あげかまぼこの生産量の割合が高く、ちくわ、板かまぼこと続きます。あげかまぼこは、2019年以降は減少傾向でしたが2023年には増加し、高水準で推移しています。

また、ちくわ、板かまぼこ、なると・はんぺんは、ここ数年は減少傾向でしたが2021年以降は緩やかに増加しています。とくになると・はんぺんは過去12年間で最も高い水準となりました。

一方、「漁業・養殖業の生産量」では、水産加工品(練り物)の原料であるスケトウダラは、2022年には8.5%減と前年から減少に転じています。北海道での生産量が落ち込んだことが要因で、スケトウダラの年平均価格は前年比28%増加しました。

また、2022年の米国産スケソウダラ・ スリミの輸入平均単価は大幅に上昇しています。2023年に入り輸入価格は徐々に下がっていますが、原材料や光熱費、梱包や輸送などの高騰、さらに円安の影響を受けており、これまでの価格改定幅を上回るコスト上昇が続いてインす。水産業では相次いで商品価格の値上げを行っています。

世界的に魚の需要は拡大傾向 欧米、新興国で魚食ブームに

右肩上がりの棒グラフ

国内の水産業・水産加工業は減少傾向にありますが、海外では魚の需要は拡大しています。

近年、欧米諸国では健康志向による魚食がブームとなっており、新興国では経済発展による所得の向上により世界的に魚の消費量が伸びています。世界の魚需要の増加に伴い、生産量も増加しており、とくに養殖業生産量の伸びが顕著です。

世界の養殖業の生産量の推移

世界の養殖業の生産量の推移(出所:Food and Agriculture Organization、グラフは業界動向サーチが作成)

上のグラフはFAOによる世界の養殖業の生産量の推移ですが、1995年から2018年にかけてが右肩上がりになっているのが分かります。消費量が多いエリアは、アジア、欧州、アフリカ、北米で、2030年までに輸出・輸入量で9%ほどの成長が見込まれています。

こうした動向を受け、水産各社は今後を見据えた事業の強化に乗り出しています。水産最大手のマルハニチロは、2010年に民間企業として初めてクロマグロの完全養殖に成功。2019年には欧州への輸出を開始し、2021年にはベトナムの水産会社を買収しています。

水産2位の日本水産は養殖の専門研究センターを擁し、先鋭的な養殖の研究開発を行っています。2018年には養殖魚の体長測定など、養殖事業へのAI導入を開始しました。海外ではサケマス、エビ、国内ではブリ、クロマグロ、カンパチなどの養殖を手掛け、欧米を中心に事業を拡大、アジアでは事業基盤の確立を目指しています。

国内の水産業界は魚離れが進み厳しい環境にありますが、世界の水産業は今後も拡大すると見込まれます。世界的に食糧不足が叫ばれる中、タンパク質やDHAなど魚に含まれる栄養素にも注目が集まることでしょう。リスクと機会が混在する業界ですが、うまく機会を捉え、今後の成長に生かしていきたいところです。

水産業界 ランキング&シェア

水産業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで水産市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

水産業界 売上高&シェアランキング(2022年-2023年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 マルハニチロ 10,204
2 ニッスイ 7,681
3 極洋 2,721
4 横浜冷凍 851
5 マリンフーズ 849
6 ニチモウ 829
7 はごろもフーズ 704
8 ニチレイ 689
9 宝幸 356
10 ヨシムラ・フード・HD 349

※横浜冷凍は食品販売事業、ニチモウは食品事業、ニチレイは水産事業の売上高です。シェアとは水産業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで水産市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ水産業界の詳細ランキングページにジャンプします。

その他のランキング

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水産業界 対象企業一覧

マルハニチロ、ニッスイ、極洋、横浜冷凍、マリンフーズ、ニチモウ、はごろもフーズ、ニチレイ、宝幸、ヨシムラ・フード・HD、一正蒲鉾、東洋水産、大冷、中島水産、焼津水産化学工業、あじかんの計16社

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