リチウムイオン電池業界の動向や現状を解説

リチウムイオンバッテリー

リチウムイオン電池業界の動向や現状などを分析しています。データは2021-2022年。国内のリチウムイオン電池の出荷数量と出荷金額の推移グラフ、売上高ランキング、世界の国別サプライチェーンランキングと中国や韓国の動向などを解説しています。

リチウムイオン電池業界(2021-2022年)

リチウムイオン電池業界の推移と基本情報

業界規模

3.0兆円

成長率

2.1

利益率

6.1

平均年収

715万円

  • 18年
  • 19年
  • 20年
  • 21年

リチウムイオン電池業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年には減少していましたが、2021年には増加に転じています。

リチウムイオン電池業界の動向と現状(2021-2022年)

リチウムイオン電池とは?

リチウムイオン電池とは正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う電池です。放電のみを「1次電池」、充放電ができるものを「2次電池」と言います。

リチウムイオン電池は、高出力・大容量が特長で、スマホやパソコン、ドローン、EVなどで使われています。形状は、おおまかに円筒形と角形に分けられ、円筒形は角形よりも安価で、テスラなど多くの電気自動車に搭載されています。一方、角形は高価ですが積載効率は優れています。

パナソニックの「円筒形リチウムイオン電池」

パナソニックの「円筒形リチウムイオン電池」

近年注目されているのが、EV用途によるリチウムイオン電池です。ちなみにEVとは、電気自動車のほかに、HV(プラグインハイブリッド車)やFCV(燃料電池車)も含まれます。EVは1台に大量のリチウムイオン電池を搭載するため、EV普及に伴うリチウムイオン電池の需要の拡大が期待されています。

「車載用」リチウムイオン電池が拡大 35%の増加

リチウムイオン電池業界の動向をご紹介します。まずは国内から解説していきます。

経済産業省の生産動態統計(2022年6月公表)によると、2021年の「車載用」リチウムイオン蓄電池の販売金額は前年比35.5%増の4,251億円、「その他」は前年比9.9%増の1,440億円でした。

リチウムイオン蓄電池の販売金額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

過去の推移グラフを見ますと、「車載用」リチウムイオン蓄電池の販売額が増加しているのが分かります。とくに直近2年間の伸びが大きく、EV向けリチウムイオン電池の需要が高まっているのが分かります。一方、「その他」のリチウムイオン電池は横ばいで推移しています。

国別ランキングと高シェアメーカーの動向

続いて海外の動向を見ていきましょう。リチウムイオン電池の主戦場は「グローバル」です。現在、世界のリチウムイオン電池業界は中国、日本、韓国の三つ巴の戦いになっています。特に最近では中国勢の追い上げが強く、日本のメーカーが連携して対抗する必要があります。

医薬品卸業界 売上高ランキング

BloombergNEFが公表した「Global Lithium-IonBattery Supply Chain Ranking」によると、2020年のリチウムイオン電池サプライチェーンランキングでは、首位が中国、2位が日本、3位が韓国、カナダ、ドイツと続きます。過去10年間、日本と韓国が独占していた市場を数年で中国が一気に抜き去りました。NEFでは2025年のランキングも掲載されており、首位が中国、2位が日本、3位は米国と予測しています。

中国のリチウムイオン電池最大手は「CATL」です。CATLは中国国内のEV用途で急成長し、世界でも首位争いをしています。中国生産のテスラ車にも供給しており、日本でも日産自動車など複数社がCATLと提携しています。

国内首位は「パナソニック」です。パナソニックは三洋電機を買収し、リチウムイオン電池部門を強化しました。主にテスラ車向けに供給しており、テスラ以外はトヨタとの合弁会社PPES(プライム プラネット エナジー&ソリューション)にて供給を行っています。

韓国首位の「LG化学」は、欧州や米国向けEVが中心で、CATLと首位争いをしています。近年では中国産のテスラ車向けも供給を開始しました。LG化学はスマホ向けでも世界2位となっています。

2022年のリチウムイオン電池業界のニュース

2022年のリチウムイオン電池業界の主なニュースを厳選してまとめました。最近のリチウムイオン電池業界の動向や現状を把握するのにお役立て下さい。

リチウムイオン電池業界ニュース 一覧

リチウムイオン電池の今後はEV次第 各国の思惑が交錯

スマホやPC向けリチウムイオン電池需要が一服した現在、今後の業界の動向を左右するのは「EV」の行方です。EVは1台で多くのリチウムイオン電池を使用するため、今後、EVの普及が世界で本格化すればリチウムイオン電池業界は大きな成長を遂げます。

EVの動向は各国の思惑が複雑に絡み合い、政治的な意味合いも含みます。ガソリン車で日本に勝ち目がないと分かった中国はEVに大きく舵を切り、米国では共和党から民主党政権に変わったのち、急激にEVにシフトする動きが見られました。

トヨタ新EVシリーズ「TOYOTA bZ」

2021年4月トヨタが中国・上海モーターショーで発表した新EV「TOYOTA bZ」

今後、EVシフトの動きが本格化すれば、リチウムイオン電池の需要は大きく増加するでしょう。電池の調達でひっ迫が起きる可能性もあります。一方で、EVには電力不足や充電時間、充電設備の整備、発火など課題や問題も多く存在し、本格的な普及には懐疑的な専門家も多くいます。

EVの普及は各国の政治的な思惑も含むため、どこまで進むかは未知数ですが、リチウムイオン電池が大きな可能性を秘めていることは間違いありません。競争の激化や局面の変化などメーカーには難しい舵取りが求められていますが、今後も業界内で様々な動きが予想されます。

リチウムイオン電池業界 ランキング&シェア

リチウムイオン電池業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することでリチウムイオン電池市場のシェアや現状、動向を知ることができます。

リチウムイオン電池業界 売上高&シェアランキング(2021年-2022年)

順位 企業名 売上高(億円)
1 パナソニックHD 10,528
2 TDK 9,653
3 村田製作所 4,604
4 プライムアースEVエナジー 2,431
5 昭和電工マテリアルズ 1,423
6 ジーエス・ユアサ… 476
7 田中化学研究所 405
8 マクセル 386
9 戸田工業 217
10 日本化学工業 174

※パナソニックHDはオートモティブ事業、TDKはエナジー応用製品事業、村田製作所はその他コンポーネント事業、昭和電工マテリアルズは蓄電デバイス・システム事業、ジーエス・ユアサは車載用リチウムイオン電池事業、マクセルはエネルギー事業、戸田工業は電子素材事業、日本化学工業は機能品事業の売上高です。シェアとはリチウムイオン電池業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することでリチウムイオン電池市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれリチウムイオン電池業界の詳細ランキングページにジャンプします。

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リチウムイオン電池業界 対象企業一覧

パナソニック、TDK、村田製作所、プライムアースEVエナジー、昭和電工マテリアルズ、マクセルHD、ジーエス・ユアサ…、田中化学研究所、戸田工業、日本化学工業、ステラケミファの計11社

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