損害保険業界の動向や現状、ランキング&シェアなどを研究しています。データは2022-2023年。損害保険業界の過去の市場規模の推移をはじめ、損害保険大手5社の保険料収入の推移グラフ、損害保険各社の海外進出の動向などを解説しています。
業界規模
12.7兆円
成長率
6.5%
利益率
4.3%
平均年収
1005万円
損害保険業界の過去の業界規模の推移を見ますと、直近は増加傾向にあります。
下のグラフは、損害保険大手3社(3メガ損保)の2011年から2022年の保険料収入の推移です。
3メガ損保の経常収益の推移(出所:各社有価証券報告書、グラフは業界動向サーチが作成)
2011年から2022年の3メガ損保の推移を見ますと、全体的には上昇傾向にあるのが分かります。2022年(2022年3月決算)の東京海上HDの保険料収入は、前年比15.0%増の4兆4,699億円、MS&ADは同9.0%増の3兆9,344億円、SOMPO HDは14.1%増の3兆6,707億円でした。
グラフを見ますと、東京海上HDとMS&AD HDが首位争いをしていましたが、2022年以降は両社の差が開き始めています。一方、2023年はSOMPO HDがMS&ADSを追い上げるかたちとなっています。
2022-2023年の損害保険業界は、前年に比べ業績を大きく伸ばした1年でした。各種保険の値上げ効果、円安による追い風など、主力の損害保険事業が好調に推移しました。海外では北米や欧州、中南米エリアでの売上高の上昇が顕著に見られました。一方、3メガ損保ともに減益となりました。自然災害や経済活動が正常化するとともに交通事故も増え、火災保険や自動車保険の支払いが増加したことが要因です。
順位 | 企業名 | 保険料収入(億円) | |
1 | 東京海上HD | 44,699 | |
2 | MS&ADインシュアランスG | 39,344 | |
3 | SOMPOホールディングス | 36,707 | |
4 | トーア再保険 | 3,493 | |
5 | 共栄火災海上保険 | 1,728 |
2021-2022年の損害保険業界の保険料収入ランキングでは、首位が東京海上HD、2位がMS&AD、3位がSOMPO HDとなっています。損害保険業界では、これら3社の売上高やシェアが高いことから、「3メガ損保」とも呼ばれます。
東京海上HDは損害保険に加え、生命保険も展開しており、国内の保険業で最大の会社となります。MS&ADは傘下に三井住友海上、あいおいニッセイ同和を擁します。SOMPO HDは、損害・生命保険の大手で、近年では海外の損保事業が好調に推移しています。
2021-2022年の損害保険業界のランキングを見ますと、上位5社中4社が増収を記録しており、全体でも増加で推移しています。
損害保険業界では、少子高齢化の進展や人口減少による国内市場の縮小が課題の一つに挙げられています。こうした市況により、大手各社は海外展開を進めています。
東京海上HDは欧米やアジアなど46の国と地域で展開しています。2022年(2023年3月決算)の海外の保険料収入の割合は全体の43%を占めており、なかでも海外事業を牽引しているのが北米エリアです。
東京海上HDの海外事業「Philadelphia Insurance Companies」
また同社は、インドや南アフリカの損害保険会社に出資するなど新興国にも注力しています。2021年4月には、ブラジルの住宅向け保険販売を手掛ける保険合弁会社を設立しました。
MS&ADインシュアランスグループHDは、主に欧州やASEAN地域に進出し、49の国と地域に展開しています。海外事業は全体の24%となり、その内の6割を欧州が占めています。また、ASEAN地域ではNo1の地位を築き、今後もアジア展開に力を入れていく予定です。
SOMPO HDは、北米、欧州、中東、南アフリカ、アジア、中南米など世界28ヶ国に進出し、218都市で展開しています。海外事業の割合は全体の9%です。農業保険に力を入れており9か国で提供しています。2021年9月にはイタリアの農業保険会社を買収するなど、海外の農業保険会社のM&Aを活発化に行っています。
直近の損害保険業界では、自動車の安全性能の向上に伴う事故の減少により、自動車保険料が引き下げられています。
加えて、自動運転技術の完全普及までは時間を要するものの、今後の自動車保険市場は緩やかな縮小が予想されています。自動車保険料は損害保険会社の主要収入であるため、自動車保険料の引き下げで、今後の収益にどのような影響があるのかがポイントになります。
損害保険各社は脱自動車保険に向けて自転車保険や特約、新商品の販売や開発をしています。収益減対策として、サイバー保険やネット炎上保険など、企業に向けた新種保険の開発が盛んに行われています。
また、海外展開を推し進めている各社ですが、事業拡大で進出した海外では自然災害の規模が大きく収益を圧迫しやすいため、今後のリスク管理が重要となります。
各社は国内外で起こる大規模自然災害に備え、「異常危険準備金」の取り崩し額の増加などを強化する予定です。
自然災害の増加に伴い保険金支払額は年々増加傾向にあります。このため、代替として地震保険料と火災保険料が相次いで値上げされるトレンドとなっています。2022年10月には大手損保各社が火災保険を11~13%の値上げ、最長契約期間も10年から5年へと短縮されました。
近年の損害保険業界は、自動車保険料の引き下げ、自然災害の増加など従来とは異なる環境となっています。人口減少、高齢化など国内の構造変化も逆風となるでしょう。従来の発想を捨て、いかに新たな環境に適応すべきかが新たな課題となります。
損害保険業界の保険料収入ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで損害保険市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 東京海上HD | 44,699 | ||
2 | MS&ADインシュアランスG | 39,344 | ||
3 | SOMPOホールディングス | 36,707 | ||
4 | トーア再保険 | 3,493 | ||
5 | 共栄火災海上保険 | 1,728 | ||
6 | ソニーフィナンシャルグループ ※ | 1,451 | ||
7 | セコム ※ | 555 |
※ソニーフィナンシャルグループは損害保険事業、セコムは保健事業の売上高です。シェアとは損害保険業界全体に対する各企業の保険料収入が占める割合です。シェアを比較することで損害保険市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ損害保険業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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東京海上HD、MS&ADインシュアランスG、SOMPOホールディングス、トーア再保険、共栄火災海上保険、ソニーフィナンシャルグループ、セコムの計7社
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損害保険 保険料収入ランキング(2022-23)
企業名 | 売上高 | ||
1 | 東京海上HD | 44699 | |
2 | MS&ADインシュアランスG | 39344 | |
3 | SOMPOホールディングス | 36707 | |
4 | トーア再保険 | 3493 | |
5 | 共栄火災海上保険 | 1728 |