GENERAL INSURANCE
目次
グラフは損害保険業界の業界規模(対象企業の7計)の推移をグラフで表したものです。
損害保険業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の損害保険業界の業界規模(主要対象企業7社の保険料収入の合計)は10兆6,917億円となっています。
損害保険業界の過去11年間の業界規模の推移
損害保険業界の過去の推移を見ますと、2008年から17年ごろまで順調に増加していました。一方、2018年から2020年は小幅な増加は見られたものの、近年は横ばい傾向です。
以下のグラフは、損害保険大手3社の2011年から2020年の保険料収入の推移を示したものです。
損害保険大手3社の経常収益の推移(出所:各社有価証券報告書、グラフは業界動向サーチが作成)
2011年から2020年の推移を見ますと、年によりばらつきがみられますが、全体的には上昇傾向にあるのが分かります。2020年(2021年3月決算)の東京海上HDの保険料収入は、前年比0.2%増の3兆6,065億円、MS&ADは同2.0%減の3兆5,009億円、SOMPO HDは3.5%増の2兆9,235億円でした。
2020年の損害保険業界は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、海外旅行需要や新車購入率が低下し、これらに関わる保険が苦戦を強いられています。その一方で、外出自粛による交通量の減少で自動車事故が減ったため、自動車保険金の支払額が抑制され保険料収入は前年比プラスとなりました。
2020年の損害保険業界の保険料収入ランキングでは、首位が東京海上HD、2位がMS&AD、3位がSOMPO HD、トーア再保険、共栄火災海上保険と続きます。東京海上HDとMS&ADの保険料収入は拮抗していますが、8年間順位は入れ替わっておらず、トップの東京海上HDをMS&ADが追う形です。
損害保険業界では、少子高齢化の進展や人口減少による国内市場の縮小が課題の一つに挙げられています。こうした市況により、大手各社は海外展開を進めています。
東京海上HDは欧米やアジアなど38の国と地域で展開しています。2020年(2021年3月決算)の海外の保険料収入の割合は全体の32%を占めており、なかでも海外事業を牽引しているのが北米地域です。その他、2018年5月には、英国のEU離脱後にEUでの事業継続のため、ルクセンブルクでの損害保険会社設立の認可を取得しています。
東京海上HDの海外事業「Philadelphia Insurance Companies」
また同社は、インドや南アフリカの損害保険会社に出資するなど新興国にも注力しています。2021年4月には、ブラジルの住宅向け保険販売を手掛ける保険合弁会社を設立しました。
MS&ADインシュアランスグループHDは、主に欧州やASEAN地域に進出し、46の国と地域に展開しています。海外保険料収入は全体の17.8%となり、その内66.3%を欧州が占めています。また、ASEAN地域ではNo1の地位を築き、今後もアジア展開に力を入れるほか、ロシア事業も強化する予定です。
SONPO HDは、北米、欧州、中東、南アフリカ、アジア、中南米など世界30ヶ国に進出し、218都市で展開しています。海外の保険料収入の割合は全体の24.9%です。農業保険に力を入れており9か国で提供しています。2021年9月にはイタリアの農業保険会社を買収するなど、海外の農業保険会社のM&Aを活発化に行っています。
一方、新型コロナによる海外の保険金支払いが負担となり、経常利益は前年比マイナスです。MS&ADMとSOMPO HDは270~390億円の減少、東京海上HDに至っては808億円のマイナスとなりました。
直近の損害保険業界では、自動車の安全性能の向上に伴う事故の減少により、動車保険料が引き下げられています。2018年1月から行われ、22年1月にも再び2%ほど引き下げられる予定です。
加えて、自動運転技術の完全普及までは時間を要するものの、今後の自動車保険市場は緩やかな縮小が予想されています。自動車保険料は損害保険会社の主要収入であるため、自動車保険料の引き下げで、今後の収益にどのような影響があるのかがポイントになります。
損害保険各社は脱自動車保険に向けて自転車保険や特約、新商品の販売や開発をしています。収益減対策として、サイバー保険やネット炎上保険など、企業に向けた新種保険の開発が盛んに行われています。
また、海外展開を推し進めている各社ですが、事業拡大で進出した海外では自然災害の規模が大きく収益を圧迫しやすいため、今後のリスク管理が重要となります。2018年度から2019年には、国内の自然災害だけで保険金支払額が2年連続で1兆円を超えました。
各社は国内外で起こる大規模自然災害に備え、「異常危険準備金」の取り崩し額の増加などを強化する予定です。
このように、自然災害の増加に伴い保険金支払額が増えているため、代替として地震保険料と火災保険料が相次いで値上げされます。地震保険料は17年にも値上げされていて、19年1月から2回目の値上げを実行、21年にも3回目の値上げが予定されています。また、19年10月には火災保険の値上が行われましたが、21年にも再度企業向け災害保険料を1割りほど引き上ます。
近年の損害保険業界は、自動車保険料の引き下げ、自然災害の増加など従来とは異なる環境となっています。人口減少、高齢化など国内の構造変化も逆風となるでしょう。従来の発想を捨て、いかに新たな環境に適応すべきかが新たな課題となります。
順位 | 企業名 | 保険料収入 | シェア | 単位:億円 |
1 | 東京海上HD | 36,065 | 33.7 | |
2 | MS&ADインシュアランスG | 35,009 | 32.7 | |
3 | SOMPOホールディングス | 29,235 | 27.3 | |
4 | トーア再保険 | 3,121 | 2.9 | |
5 | 共栄火災海上保険 | 1,669 | 1.6 | |
6 | ソニーフィナンシャルHD ※ | 1,324 | 1.2 | |
7 | セコム ※ | 494 | 0.5 |