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目次
グラフは時計業界の業界規模(対象企業の4計)の推移をグラフで表したものです。
時計業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の時計業界の業界規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は3,671億円となっています。
時計業界の過去9年間の業界規模の推移
経済産業省の「生産動態統計」によると、2020年の時計の販売数量は前年比40.7%減の1億4,515万個、販売金額は前年比34.7%減の633億円でした。
時計の販売数量と販売金額の推移(出所:経済産業省よりグラフは業界動向サーチが作成)
時計の販売は緩やかな減少傾向にありましたが、2020年には大幅減を記録しています。2020年はコロナの影響はありましたが、注意すべき領域に突入しています。
国内の時計業界はカシオ、シチズン、セイコーの3強体制となっています。3社での国内売上高シェアは90%を超えます。
時計メーカー3社の売上高の推移(各社決算発表より業界動向サーチが作成)
2021年3月決算の時計メーカーの売上高(各社時計事業の売上高)は、カシオ計算機が前年比20.1%減の1,313億円、シチズン時計が32.5%減の956億円、セイコーHDが22.9%減の1,031億円で3社とも大幅な減収を記録しています。
2019年から20年は新型コロナウイルス感染拡大により、前期と後期で状況は大きく変化しています。カシオ計算機は第3四半期までは好調を維持、一方、20年2月以降は、外出自粛や休業の影響で需要は大きく減退しました。また、シチズン時計においては、スマートウォッチの勢いに押され苦戦が続く中、コロナウイルスが追い打ちとなり、完成品やムーブメントの販売が急激に落ち込みました。
国内時計業界を牽引してきた中国人観光客による爆買い需要は急落、一方で東南アジア系のインバウンド需要は好調でしたが、こちらも新型コロナウイルスの世界的感染拡大で状況は一変しています。今後は以前のような大きなインバウンド需要が見込めないことから、EC販売の強化や拡大を促進するものの、先行き不透明感も漂っています。
時計大手3社はこれまでに高性能・低価格路線を展開。安価で品質の高い日本の時計は、海外でも高い評価を得ています。
カシオ計算機が展開する『G-SHOCK』は北米やアジアなどの市場で好調に推移。セイコーの世界初のソーラーGPSウォッチ『アストロン』やシチズンが展開する『BULOVA』、『Q&Q』は海外市場でも好調な売れ行きとなっています。
2018年の海外市場の動向を見ますと、欧州市場に弱さがみられました。英国のEU離脱など長引く政治不安により個人消費の低迷が影響しました。一方、米中貿易摩擦の影響はあるものの、北米や中国では全体的に底堅い動きを見せています。
現在の国内市場は堅調な足取りを見せていますが、長期的な見方をすれば成熟市場です。人口減の影響も確実に出るため、この先国内での需要を伸ばすのは難しいとされています。
今後は成長が見込まれる中国やインド、東南アジアの開拓が急務とされ、販売網の開拓やブランド力の強化が課題となります。
近年、時計業界では同業他社に加え異業種企業の参入もあり、厳しい環境に置かれています。
スイスの高級時計メーカーやフランスの高級ブランド企業、中国製の普及価格帯の時計、さらにスマートフォンやスマートウォッチなどの時計代替製品など競争相手が多く存在します。
なかでも2015年の『アップルウォッチ』の登場により、スマートウォッチ市場は勢いを増しています。一時は勢いを失ったものの、ヘルスケア機能搭載や健康志向の高まりを受け再び需要が高まっています。
こうした市況により、国内時計メーカーもスマートウォッチ市場へ本格参入を始めています。カシオはすでに『PRO TREK Smart 』を販売済みですが、主力ブランド『G-SHOCK』のスポーツライン『GBD-H1000』を市場に投入、2020年4月末より発売します。
シチズン時計は2018年10月にフォッシル社と業務提携、スマートウォッチムーブメントの共同開発を発表しました。2019年11月より『Eco-Drive Riiiver』の販売を開始しています。
今後もスマートウォッチ市場はさらなる成長が見込まれており、時計業界はさらなる販路拡大や商品拡充など事業強化が課題となります。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | カシオ計算機 ※ | 1,313 | 38.8 | |
2 | セイコーHD ※ | 1,031 | 30.4 | |
3 | シチズン時計 ※ | 956 | 28.2 | |
4 | リズム ※ | 87 | 2.6 |