マンション管理業界の動向や課題などを分析

複数のマンション

マンション管理業界の管理戸数ランキングや動向と現状、抱えている課題や今後の展望などを研究しています。過去の管理戸数の推移をはじめ、分譲マンションのストック数と新規供給戸数の推移、老朽化や人手不足の課題や海外事業展開など今後の展望を詳しくレポートしています。

マンション管理業界の動向と現状(2021-2022年)

マンション管理戸数は緩やかな上昇基調 管理員不足が深刻化

マンション管理業界の管理戸数の推移をみますと、1970年代から急速に増加したマンション供給は2008年のリーマンショックをきっかけにピークダウンしましたが、近年の管理戸数は緩やかな上昇基調となっています。

分譲マンションのストック数と新規供給戸数の推移(国土交通省、グラフは業界動向サーチが作成)

上のグラフは分譲マンションのストック数と新規供給戸数の推移です。ストック数は緩やかな上昇基調となっていますが、新規供給戸数は2010年ごろから停滞しています。供給戸数の減少は管理戸数の伸び鈍化に直結するため、注意すべき動きです。こうした動向を受け、業界では買収によって管理戸数を増やす動きが見られています。

マンション管理会社の多くはグルーブ会社が販売したマンションを管理しており、大手不動産会社の寡占化が進んでいる状況です。マンション管理上位5社の内、独立系は日本ハウズイング一社のみで、残りは大手グループの系列会社です。

人手不足問題はマンション管理業界でも深刻化しています。元々、マンション管理員はシニア層により支えられていましたが、近年 は他の企業の再雇用などの影響で人材確保が難しくなっています。全体的に管理員のなり手が不足しており、企業は賃金や採用開始年齢の引き上げ、業務効率化を図るなど様々な対策を進めています。

近年、老朽化するマンションは増加していますが、人手不足に伴う人件費の増加、管理費や修繕費の上昇による住民の反発、滞納など課題も多くみられ、企業収益の圧迫も懸念されています。こうしたことから、省人化のため管理業務をIT化するほか、損害保険の手数料や大規模修繕などで、コスト削減や利益の確保を図っています。

マンション管理業界 管理戸数トップ5(2021-2022年)

順位 企業名 管理戸数(戸)
1 東急コミュニティー 504,334
2 日本ハウズイング 478,240
3 大京アステージ 429,786
4 長谷工コミュニティ 382,174
5 三菱地所コミュニティ 328,529

2021年のマンション管理業界の管理戸数ランキングを見ますと、トップが東急コミュニティー、2位が日本ハウズイング、3位が大京アステージ、長谷工コミュニティ、三菱地所コミュニティと続きます。

首位の東急コミュニティーは2021年10月、他社の分譲マンション管理を担うコミュニティワンを買収しました。

2027年には9,000億円規模 長期的には人口減少による縮小も

高齢者と増加していくグラフ

マンション管理業界は新築の供給減少で市場の伸びは緩やかですが、矢野経済研究所によると、2027年には9,053億円規模の市場になると予想しています。ただ、長期的には少子高齢化や人口減少などにより新築の供給は減り、市場の伸びは減速すると見られています。

人材の確保や最低賃金の値上げなどで労務費は高騰し、資材費も年々増えているため、今後も管理料が上昇すると見られます。AIやオペレーター等による業務効率化や無人化を始めている企業もありますが、ゴミ出しや清掃、保守点検など人の手を必要とする業務も多く、人員の確保や管理委託費の見直しが課題となります。

また、今後の日本では築年数が経過したマンションが大幅に増加する見込みです。築年数が増加したマンションは修繕費がかかるばかりではなく、老朽化による事故の発生など安全面での考慮も課題となります。いずれ社会的に深刻な問題になるでしょう。

築30、40、50年の分譲マンション戸数の推移

築30、40、50年の分譲マンション戸数の推移(国土交通省、グラフは業界動向サーチが作成)

マンション管理業界は「ストックビジネス」の典型的な例で、管理戸数を伸ばすことで収益を積み上げていきます。一方で、管理戸数を伸ばすにはある程度の資本力も必要となるため、中小企業の淘汰や大手による買収が増えるのではないかと予測されます。

国内事業と並行してマンション管理各社は近年、海外事業も強化しています。大手では日本ハウズイングが90年代年から中国、台湾に進出、2016年にはベトナムやシンガポールで清掃会社や建築設備企業を買収し、ASEAN地域の進出に先駆けています。東急コミュニティーも2017年にインドネシアに現地法人を設立、東急不動産開発の分譲マンションの管理を開始、2019年にはベトナムでもマンション管理を展開しています。

大手管理会社は経済成長が著しいアジアでの展開を進めています。大手では親会社が建設した物件の管理を受け持つことができるので、管理戸数のストックを積み上げやすい構図にあります。

マンション管理業界 ランキング&シェア

マンション管理業界の管理戸数ランキング&シェアをまとめました。ランキングを比較することでマンション管理市場のシェアや現状を知ることができます。

マンション管理業界 管理戸数&シェアランキング(2021年-2022年)

順位 企業名 管理戸数(戸)
1 東急コミュニティー 504,334
2 日本ハウズイング 478,240
3 大京アステージ 429,786
4 長谷工コミュニティ 382,174
5 三菱地所コミュニティ 328,529
6 大和ライフネクスト 275,846
7 合人社計画研究所 229,708
8 三井不動産レジデンシャル… 205,226
9 住友不動産建物サービス 174,838
10 野村不動産パートナーズ 170,493

※シェアとはマンション管理業界全体に対する管理戸数の各企業の管理戸数が占める割合です。シェアを比較することでマンション管理市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。

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マンション管理業界 対象企業一覧

日本ハウズイング、大京アステージ、東急コミュニティー、三菱地所コミュニティ、長谷工コミュニティ、大和ライフネクスト、三井不動産レジデンシャルサービス、合人社計画研究所、住友不動産建物サービス、コミュニティワン、日本総合住生活、野村不動産パートナーズ、穴吹コミュニティの計13社

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