医療機器業界の動向や現状、ランキングと業界が抱える課題、今後の見通しなどを分析しています。医療機器業界の過去の業界規模の推移をはじめ、医療機器売上高の推移グラフ、2022-2023年の動向と課題、今後の見通しなどを解説しています。
業界規模
5.9兆円
成長率
10.5%
利益率
8.6%
平均年収
732万円
医療機器業界の過去の業界規模の推移を見ますと、2020年から2022年まで増加傾向にあります。
厚生労働省の「医薬品・医療機器産業実態調査」によると、2021年度(2023年3月公開)の医療機器売上高は、前年比35.6%増の4兆4,957億円でした。
医療機器売上高の推移(出所:厚生労働省、グラフは業界動向サーチが作成)
グラフを見ますと、2020年度までは横ばいで推移していましたが、2021年度に入り大幅に増加したことが分かります。
2021年度の売上高の内訳は、国内製品が前年比45.1%増の2兆4,364億円、輸入製品が25.9%増の2兆0,592億円でした。2021年度は国内製品が大幅に増加しましたが、近年では医療機器の輸入が増加傾向にあり、そのうちの約3割が米国からとなります。
近年の医療機器業界では、コロナ禍で人工呼吸器や生体モニター、コロナ関連の検査製品などの需要が伸びました。2021年には医療機関を受診する人が増え、検査関連機器や手術関連機器、歯科用品の需要が回復。一方、人工呼吸器や生体モニターなどは昨年からの反動減となりました。製品別では、カテーテルやAI技術を活用した内視鏡システムなどの製品が大幅に伸長しました。
2022-2023年の医療機器業界の動向を見ますと、診療や手術控えからの回復が見られ、内視鏡や超音波診断、検査や治療機器、画像解析システムなどの医療IT分野が好調に推移しました。CTやMRIにおいても、半導体不足の影響から回復傾向にあります。
また、国内では感染再拡大の影響により、血液や血管関連など一部で需要減となりましたが、海外市場は医療需要の回帰が見られ好調に推移しました。
医療機器は、内視鏡やCT、MRI、血液分析装置などの高額な製品から、歯科向けの機器や材料、手袋やピンセット、ガーゼ、マスクなどの医療用品、コンタクトレンズなどの日用品まで多岐にわたります。
※は医療機器関連の部門売上高。2022-2023年の医療機器業界の売上高ランキングを見ますと、首位が富士フイルムHD、オリンパス、テルモと続きます。
富士フイルムHDは、X線画像診断、内視鏡、超音波診断装置などを幅広く展開しています。オリンパスは、消化器内視鏡で世界シェア7割を誇り、北米や欧州、アジアで展開しています。テルモは、カテーテルなどディスポーザブル(1回の使用を目的とした医療用器具)で国内首位です。
2022-2023年の医療機器業界は、大手5社中5社が増収となり、好調な1年でした。
医療機器業界の課題としては、医療機器の輸入超過、多額の研究開発費、優秀な人材の確保などが挙げられます。
日本の医療機器メーカーは、伝統的に「診断関連機器」を強みとしますが、ニーズが高いのは「治療関連機器」です。「治療関連機器」の多くは海外メーカーですので、どうしても輸入超過になりやすい構造となっています。治療関連機器で海外依存度が高いという点は、業界の大きな課題と言えるでしょう。
その他の課題につきましては、「医療機器業界の課題と問題点とは?」で詳しく解説しています。こちらもぜひ、ご覧下さい。
KPMGインターナショナルの調査によると、2030年の世界の医療機器の売上高は、20年比1.6倍の約8,000億ドルに達すると予想されてます。
今後、医療機器業界は中・長期的に緩やかに増加していくことが見込まれます。世界の医療費の約8割を占める先進国は、今後、高齢化が進み、生活習慣病が蔓延しています。また、先進国では看護師や医師など医療従事者の不足も問題となっており、業務効率化を促す製品の需要も高まるでしょう。
さらに、先進国をのぞく国や地域では、医療機器が十分に普及しておらず、健康診断や人間ドックが普及していない国が多くあります。医療サービスそのものが未熟な国も多く、インドや中国、アジアなど潜在的な市場は大きく、売上拡大の機会は大きいと言えます。
また、近年注目されているのがAIの医療機器への活用です。富士フイルムHDでは、CTや内視鏡画像からの診断などAIの「ディープラーニング」を用いた製品の開発が進んでいます。医療従事者不足が進む昨今において、業務効率化は必須であり、こうしたAIを活用した医療機器の開発がさらに進むことが予想されます。
今後、順調に市場を拡大していくと予想される医療機器業界ですが、日本をはじめとする各国の医療費はひっ迫しており、医療費削減の圧力は今後、さらに強まることが予想されます。こうした政府による圧力は医療機器への支出低下を招き、業界全体の収益性を低下させる要因となります。医療機器業界は市場全体のパイは大きく、今後も拡大する予測ですが、こうした下押し圧力があることも、憂慮しておく必要があります。
医療機器業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで医療機器市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | 富士フイルムHD ※ | 9,179 | ||
2 | オリンパス ※ | 8,700 | ||
3 | テルモ | 8,202 | ||
4 | HOYA | 7,235 | ||
5 | ニプロ | 5,451 | ||
6 | シスメックス | 4,105 | ||
7 | 日本光電工業 | 2,066 | ||
8 | オムロン ※ | 1,421 | ||
9 | コニカミノルタ ※ | 1,378 | ||
10 | フクダ電子 | 1,346 |
※富士フイルムHDはヘルスケア事業、オリンパスは内視鏡+治療機器事業、オムロンはHCB事業、コニカミノルタはヘルスケア事業の売上高です。シェアとは医療機器業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで医療機器市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ医療機器業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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富士フイルムHD、オリンパス、テルモ、HOYA、ニプロ、シスメックス、日本光電工業、オムロン、コニカミノルタ、フクダ電子、メニコン、ニコン、朝日インテック、タカラバイオ、島津製作所、日機装、カネカ、トプコン、ジェイ・エム・エス、日本ライフライン、ナカニシ、松風、シード、リオン、メディキット、マニー、日本電子、クリエートメディック、大研医器、プレシジョン・システムなどの計30社
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