調剤薬局業界の動向や現状、ランキング、シェアなどを研究しています。調剤薬局業界の過去の市場規模の推移をはじめ、調剤医療費と処方箋数の推移、直近の調剤薬局業界の動向とM&Aの状況などを解説しています。
業界規模
0.9兆円
成長率
4.6%
利益率
1.9%
平均年収
607万円
調剤薬局業界の過去の業界規模の推移を見ますと、増加傾向にあります。
厚生労働省(2023年9月公表)によると、2022年度の調剤医療費(電算処理分)は、前年度比1.7%増の7兆8,821億円でした。処方箋枚数は8億3,762万枚となり、前年度から3,557万枚が増加しています。また、処方箋一枚当たりの調剤医療費は9,392円と、前年から256円減少し2年連続で前年割れとなりました。
調剤医療費と処方箋数の推移(出所:厚生労働省、グラフは業界動向サーチが作成)
内訳を見ると、技術料が同5.8%増の2兆1,264億円、特定保険医療材料料が2.8%増の161億円。薬剤料は0.2%増の5兆6,908億円で、うち後発医薬品は1.2%減の1兆1,256億円でした。
近年の調剤薬局業界の動向を見ますと、2020年は新型コロナによる感染拡大の影響を受け患者の来院数が減り処方箋枚数が減少、一方で2021年はコロナの影響を受けつつも、処方箋枚数は増加に転じました。
2022年の大手調剤チェーンでは、処方箋枚数が前年から増加し、コロナ前の水準を上回りました。また、報酬改定によるマイナスの影響は受けたものの、既存店や新店舗、前年に新規出店した店舗の売上げが寄与し業績を押し上げました。
今や調剤薬局はコンビニエンスストアを上回る店舗数となり、61,791店舗にまで拡大しています(2021年度末時点)。調剤薬局には、病院やクリニックの向かいに展開する門前薬局やドラッグストア併設型、パパママ薬局と呼ばれる家族経営を中心とした小規模薬局が存在します。
大手チェーンが店舗数を拡大する一方で、業界を取り巻く環境は厳しい状況に置かれています。高齢化による医療費拡大を抑制するため、診療報酬や薬価の改定が行われています。2022年4月には、処方率の高い門前薬局(300店舗以上を展開する大手チェーン薬局)に対し、調剤基本料が見直されました。調剤基本料と薬価の引き下げは、大手調剤の業績に影響しており多くの企業が苦戦する状況にあります。
最新の調剤医療費(2024年3月公表)を年齢別階級で見ますと、調剤医療費と処方箋数の占める割合が高いのが70歳以上85歳未満の年齢層で全体の約3割に達します。こうしたことからも高齢化による医療費の拡大が問題となっているのが分かります。
調剤薬局では在宅医療への支援などの業務も任されています。「かかりつけ薬剤師・薬局」としての業務を強化し、地域に密着したサービスで健康サポートに備えるほか、医療費削減にも取り組み各社でジェネリック医薬品の使用促進を図っています。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | |
1 | アインHD ※ | 3,215 | |
2 | 日本調剤 ※ | 2,801 | |
3 | クオールHD ※ | 1,553 | |
4 | メディカルシステムネット… | 1,095 | |
5 | ファーマライズHD | 520 |
※は調剤薬局関連の部門売上高。首位がアインHD、2位が日本調剤、クオールHDと続きます。1位のアインHDと2位の日本調剤の売上高の差は近年は拮抗していましたが、2022年はアインHDが業績を伸ばし差を広げました。
2022-2023年の調剤薬局業界の業績を見ますと、5社中2社が増加、3社が横ばいで推移しました。全体では前年から伸長し、業界の規模は拡大しています。
少子高齢化が進む国内では、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる超高齢化社会を迎えます。医療費が財政を圧迫することから、調剤報酬や薬価の引き下さげは今後も行われることが予想されます。
また、ドラッグストアも調剤併設店を増やしており、競争は激化しています。こうした状況から調剤薬局業界ではM&Aを加速させ規模拡大に取り組んでいます。大手チェーンでは、店舗拡大や処方箋枚数の獲得、人材確保のため、後継者不足に陥っている個人経営薬局や小規模薬局の買収を相次いで行うほか、事業多角化で収益の柱を増やしています。
調剤薬局業界で最大手のアインHDは、積極的なM&Aでシェア拡大を図っています。直近では2022年5月に調剤薬局のファーマシィHDを子会社化、これにより調剤薬局の店舗数は1,200店舗を超えました。また、女性向けドラッグストア「アインズ&トルペ」を国内の都市部で出店を拡大。さらに海外展開に向け丸紅と合弁会社を設立、2022年5月にマレーシアで1号店をオープンさせました。
業界2位の日本調剤は門前薬局を中心に展開、19年には首都圏展開の中小規模の薬局3社を買収、2022年8月には子会社の仁生堂を吸収合併しています。また、医療費抑制にともない市場の拡大を期待しジェネリック医薬品製造会社を設立。その他、ICTの積極投資で調剤システムを導入、電子版お薬手帳『お薬手帳プラス』、オンライン服薬指導「NiCOMS」の運営を行っています。
クオールは、門前薬局中心から集客性のある立地へとシフト。異業種のローソンやビックカメラ、JR西日本と提携し街中や駅ナカなどでの展開を進めています。2019年には製薬会社の前永製薬を買収し医薬品の製造事業に参入、2023年5月には第一三共の後発医薬品製造企業を買収しています。
調剤薬局業界の売上高ランキング&シェアをはじめ、純利益、利益率、総資産、従業員数、勤続年数、平均年収などをランキング形式でまとめました。各種ランキングを比較することで調剤薬局市場のシェアや現状、動向を知ることができます。
順位 | 企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1 | アインHD ※ | 3,215 | ||
2 | 日本調剤 ※ | 2,801 | ||
3 | クオールHD ※ | 1,553 | ||
4 | メディカルシステムネット… | 1,095 | ||
5 | ファーマライズHD | 520 |
※アインHDはファーマシー事業、日本調剤は調剤薬局事業、クオールHDは保険薬局事業の売上高です。シェアとは調剤薬局業界全体に対する各企業の売上高が占める割合です。シェアを比較することで調剤薬局市場における各企業の占有率を知ることができます。矢印は対前年比の増減を表しています。下記のランキングをクリックするとそれぞれ調剤薬局業界の詳細ランキングページにジャンプします。
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アインHD、日本調剤、クオールHD、メディカルシステムネット…、ファーマライズHDの計5社
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調剤薬局 売上高ランキング(2022-23)
企業名 | 売上高 | ||
1 | アインHD | 3,215 | |
2 | 日本調剤 | 2,801 | |
3 | クオールHD | 1,553 | |
4 | メディカルシステムネット… | 1,095 | |
5 | ファーマライズHD | 520 |