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グラフは紳士服業界の業界規模(対象企業の4計)の推移をグラフで表したものです。
紳士服業界の規模の推移を見ることでその市場の大まかな現状や動向を把握することができます。
2020年-2021年の紳士服業界の業界規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は2,814億円となっています。
紳士服業界の過去7年間の業界規模の推移
紳士服業界の過去の業績を見ますと、2014年から2016年ごろをピークに近年では若干の減少傾向、2020年には減少幅が拡大しています。
紳士服大手4社の売上高の推移(出所:各社決算資料、グラフは業界動向サーチが作成)
2020年の紳士服業界の主要企業4社の売上高は、青山商事が前年比28.4%減の1,098億円(ビジネスウエア事業)、AOKI HD(ファッション事業)が同13.2%減の853億円、コナカが21.1%減の478億円、はるやまHDが23.8%減の385億円でした。各社そろって3年連続の減収減益を記録しています。
紳士服業界を含むアパレル市場全体の規模は縮小傾向にあります。少子高齢化や根強い節約志向、シェアリング化などを背景に、バブル期には15兆円もあったアパレル市場は2019年には10兆9千億円まで縮小。ついに11兆円を割り込む形となりました。
紳士服業界においても、少子化によるスーツ着用人口の減少や高まる低価格志向、オフィスウェアのカジュアル化に伴う『スーツ離れ』の加速で、スーツ販売着数は年々減少、紳士服市場は縮小傾向にあります。
こうした市況の中、紳士服各社は低価格のオーダースーツ市場へ相次いで参入しています。 オーダースーツは機械技術の向上によって以前よりも低価格、短納期での生産が可能になりました。1着2万円台から5万台、メーカーによっては200種類以上の生地から選択可能など、既製品スーツと大差ない価格と品質の良さで、オーダースーツ需要は増加傾向にあります。加えて店側にとっても在庫を持たずに済むメリットがあります。
業界首位の青山商事は、2016年展開の「ユニバーサルランゲージ・メジャー」に次ぐ、2つ目のブランド『クオリティーオーダースーツSHITATE』を2019年10月に立ち上げました。洋服の青山とザ・スーツカンパニーの店舗内に導入し、メジャーブランドよりも価格を1万円下げての展開で、既製スーツ着用や若者などの層をターゲットにしています。
AOKIホールディングスは、2018年10月より全国のAOKIとオリヒカの店舗にて『パーソナルオーダースーツ』を展開。2019年にはECでの受付を開始、実店舗で採寸済み後は、ネットやアプリでの購入が可能となりました。
コナカでは、2016年に実店舗とECやアプリの融合店『ディファレンス』を展開、新ブランドを立ち上げています。その他、はるやまやHDやオンワードグループ、三陽商会などがオーダースーツ市場へ参入、各社独自のサービスを展開しています。
一方、オーダースーツの相次ぐ参入で企業間の競争も激化し、撤退を余儀なくされた企業も出ています。AOKIホールディングスは、2020年2月にオーダースーツ専門店「AOKI TOKYO」の閉店を発表。2019年2月より銀座、新宿、池袋で展開していましたが、わずか1年での撤退、事業を終了することとなりました。
各社は消費者ニーズに対応し、新製品や機能性商品の開発、洗濯機で洗えるスーツの販売など、高機能商品の品揃えを強化しています。ただ、オフィスウェアのカジュアル化に伴う『スーツ』離れは深刻化しており、年を追うごとにスーツ市場は縮小傾向にあります。
また、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークの普及や外出を控える消費者が増加したため、ビジネスウェアの需要が減少。紳士服業界は厳しい状況に置かれています。
そのような環境の中、紳士服各社はスーツ事業以外の収入源を確保すべく、事業の多角化に取り組んでいます。
業界最大手である青山商事は、レンタルサービスを拡充しモーニングコートやタキシードに加え、紳士服専門店では初となる子供の受験や入学式用のレディースフォーマルスーツのレンタルも開始しました。
カジュアル事業では「リーバイスストア」を展開し、その他にもカード、印刷・メディア、雑貨、フードサービス事業などを展開しています。なかでも、近年はフードサービス事業の業績が伸びており、『焼肉きんぐ』『ゆず庵』をフランチャイズ店舗として展開しています。
紳士服業界の中でいち早く角化経営を進めたAOKIホールディングスは、ファッション事業以外の事業比率が45%を占めています。結婚式場や披露宴会場を運営するアニヴェルセル・ブライダル事業、カラオケやネットカフェ、フィットネスクラブなどの「快活CULB」や「FiIT24」などを運営のエンターテイメント事業を展開しています。
コナカにおいては、ファッション事業の売上比率が96%を占めていますが、フランチャイズ事業としてフード事業や教育事業などを展開しています。フード事業では「かつや」や「からやま」、「大衆食堂 半田屋」を、教育事業では英語で預かる学童保育「Kids Duo」、アミューズメント施設の「スペースクリエイト自遊空間」の経営を行っています。2020年5月にはサマンサタバサジャパンリミテッドの子会社化を発表しました。
大手3社が多角化経営に乗り出す中、はるやまHDはスーツ市場を強化。『健康』をテーマに他社との差別化を図っています。完全ノーアイロン「i Shirt(アイシャツ) 」は、販売開始から累計販売枚数500万枚を突破(2020年3月現在)。衣服圧を軽減した「ストレス対策スーツ」やカロリー消費サポート「スラテクノスーツ」など、タニタやファイテンなどと次々と共同開発を行い、紳士服市場に注力しています。
順位 | 企業名 | 売上高 | シェア | 単位:億円 |
1 | 青山商事 ※ | 1,098 | 39.0 | |
2 | AOKIホールディングス ※ | 853 | 30.3 | |
3 | コナカ | 478 | 17.0 | |
4 | はるやまHD | 382 | 13.7 |