アニメ業界の業界地図や現状と動向、課題についてご紹介します。今話題のアニメ業界を構造から現状、課題などを詳しく解説しています。
アニメ業界の業界地図と最近の現状や動向について解説していきます。
この記事では便宜上、アニメ業界を「漫画」と「アニメ」の両方の市場に分けて考えていきます。漫画とアニメの違いは、漫画は静止画で絵と文字で表現する物語、一方のアニメは動画で主に声や音、音楽がつくなどの違いがあります。
『漫画市場』は主に、出版、印刷、取次、書店(電子書店・アプリ)で構成され、『アニメ市場』は、出版、制作、配給、配信、商品化で構成されています。
上の図はアニメ業界の業界地図です。漫画市場は「出版」が大手3社、準大手や中堅が展開。「印刷」は大手から中堅が企業の出版を手掛け、個人制作の同人誌などは中小零細企業が請け負います。「漫画アプリ」は大手出版が複数展開し、「出版、取次、書店」は実店舗と電子に分かれます。
アニメ市場では、原作となる「出版」をはじめ、「制作」はアニメーション制作専門と、映画やテレビアニメ配信の企業が展開。「商品化」はアニメキャラクターの商品化計画や制作を請け負います。「配給」は映画会社、「配信」はテレビ局や動画配信企業が主流で、とくに動画配信においては、米国企業が強い傾向にあります。
まずは2021年の漫画市場の動向です。公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の調査によると、2021年の日本のコミック(紙と電子の合計)の推定売上高は、前年比10.3%増の6,759億円でした。2018年から2021年までの4年間で53%のプラスとなり急成長しています。
媒体別では、紙市場(単行本とコミック誌)は前年比0.4%増の2,087億円、電子市場は前年比20.3%増の4,114億円でした。電子版がコミック市場全体の約6割を占め、市場をけん引しています。
2021年は前年の新型コロナによる巣ごもり特需からの反動減が見込まれていましたが、単行本の『呪術回戦』や『東京卍リベンジャーズ』は映像化によりヒットし、『鬼滅の刃』も前年から引き続き好調でした。一方、コミック誌は休刊もあり3年連続で縮小傾向です。
電子版市場においては、前年の新規利用者が定着したことで、人気作品が購入されました。また、無料で漫画が読めるアプリや、最近は「タテコミ」と呼ばれる縦スクロール漫画の需要が高まっています。
続いて2021年のアニメ市場の動向を分析します。
日本動画協会によると、2021年の日本アニメ市場(関連市場含む)は、前年比13.3%増の2兆7,422億円でした。なかでも配信や商品化、海外の3つの分野が市場をけん引しました。コロナ前である2019年の記録を超え、2021年は過去最高額を更新しました。
2021年のアニメ市場規模を国内と海外別で見ますと、国内が前年比21.0%増の1兆4,288円、海外が同6.0%増の1兆3,134億円でした。前年の2020年はコロナ禍の影響で一時的に海外が国内市場を上回りましたが、2021年は再び国内が市場を支えています。
また、定額制動画配信サービス市場では、視聴者数上位11位を日本アニメが独占しました。1位「鬼滅の刃」、2位「呪術廻戦」、3位「東京リベンジャーズ」の3作品は、映画館での上映をきっかけに視聴者数を伸ばしています。とくに興行収入歴代トップを獲得した「鬼滅の刃」は、地上波テレビのアニメと映画枠においても視聴率トップの座に就きました。
アニメ業界にも当然、課題や問題点があります。ここでは近年、アニメ業界が抱える課題や問題点の中から特に重要なポイントをピックアップします。
アニメ業界の課題や問題点の1つに、海賊版サイトが挙げられます。海賊版サイトは漫画を違法でアップロードしたサイトです。
ABJ(出版社などの業界団体)の報告によると、海賊版サイトによる2021年の被害額は、1兆19億円にまで達しています。被害額はアクセス数上位サイトに限った数字ですが、すでに国内の漫画市場規模を上回っています。さらに、新型コロナ以降も海賊版サイトは増加し、アクセス数も伸びており、被害額は2020年から5倍へと拡大しました。
業界団体の働きで代表的な海賊版サイトの閉鎖は進んでいますが、その一方で閉鎖してもあらたな海賊版サイトが次々と誕生しています。対策として海賊版サイトへの広告抑制を行っており、今後もあらたな取り組みを検討しています。
アニメ業界でも人材不足が課題に挙げられています。少子高齢化による労働人口の減少に加え、アニメの作品数の多さが挙げられています。放送時期が重なるアニメの本数が多ければ、同時期に多くのアニメ制作スタッフ必要が必要となります。
さらに、アニメーターの離職率も高いと言われています。年々作画のクオリティーが上がり作業量が増える一方で、単価は上がらず納期も変わらない状況です。加えて近年は、制作費も高騰しており賃金も上がりにくい構造になっています。人手が足りないことで技術力が追いついていないスタッフも制作に携わることになり、アニメのクオリティーが下がる要因につながります。